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トレードにおけるヒューリスティック (1) - 価格は常に正しい

トレードを勉強する中で読んだ本や記事から学んだ、即戦力で使えると思うヒューリスティックをまとめていきます。

ヒューリスティック: heuristic、: Heuristik)または発見的(手法)とは、必ずしも正しい答えを導けるとは限らないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法である。発見的手法では、答えの精度が保証されない代わりに、解答に至るまでの時間が短いという特徴がある。

Wikipedia

往年の大物先物トレーダーであるブルース・コフナーの言葉です(前段は単なる例示です)。

ソ連や他の政府はときどき優れた情報を持っていることがあるからね。使わない手はないはずだよ。彼らの諜報能力をもってすれば、商業通信なんかを盗み聞きするのはわけないことだと思う。だから大手の穀物商社が秘密の電話をかけるときは、盗聴防止装置を使っているんだよ。
つまり、普通では理解に苦しむような出来事が多く隠されていて、それが相場を動かしている。だから、平凡なトレーダーのところへその情報が届くころには、もう既に相場は動き始めてしまっているんだ。そして一つ言えることは、その相場が動かされるのは、バカでかい買いや売りがあって初めて可能になるということなんだ。

マーケットの魔術師

ヒューリスティックというには少しハイレベルかもしれません。ただ、複雑な非対称情報ゲームであるトレードにおいて、信仰できるかはべつとしても一旦信じるしかない唯一の作法として価格変動とテクニカル分析を重視するべきだ、というヒューリスティックとして僕は学びとしました。事実、この後には以下の発言が続いています。

テクニカル分析には多くの真実が含まれていると同様に呪文のようなものでもあるね。


ちょうど、金相場の急上昇が注目されていて、上記を読んだ後だったので気になっていました。

金価格は通常、株価やドルと逆相関にあります。現在のように準相関している、つまり、歴史とは異なり株・ドルと相関する上昇をしているということは、おそらく世界のどこかで何か危険なことが起きそうになっていて、誰かが自分の財産を守るために金を買い進めている可能性を真剣に考慮すべきだということです。

明白と思われる事実から確認していくと、まず第一に、相場は常に正しいということでしょう。金をドブに捨てるのが流行しているのでない限り、誰もが利益を上げるために何らかの思惑を持って相場に参加し、地球上で最上レベルのコンピューティングリソースと知性をフルに使って、価格を上げたり下げたりすることに加わっています。だから、相場の大きな変動には常に何らかの大きな動きが根底にあるのを疑うことはできない。

第二に、金相場の事実上唯一のレバーは不安の増加(あるいは安心、慢心の増加)であるということです。金は常に製品需要を遥かに超える供給があるので、実需で動くことはなく、いつの時代もリスクヘッジのためだけの金融資産です。一方で、最近の世界には、史上最高値を付けてまでヘッジすべきと思えるリスクはぱっと見では見当たらないでしょう。確実に言えることは、巨大な資産を持つ何処かの誰かが、自分の資産価値が暴落するかもしれないと激しく怯えている、ということです。

第三に、ブルース・コフナーが正しいならば、世界では我々のような一般人が知り得ないことが起きていて、それが自分の耳に届くのはだいぶ後になってからであり、大抵はその間に相場に織り込まれているということです。他の例で言えば、第二次世界大戦でノルマンディー上陸作戦が始まる前に原油先物が上昇していたため、何らかの重要な作戦決行が事前に予想されていたという話を聞いたことがあります。

まとめると、価格変動は常に正しく、それは何らかの情勢変化を反映している。金価格は不安に突き動かされて変動する傾向がある。一方、いまはそのようなリスクは見当たらないが、近い将来に発生するリスクを知り得る誰かが「バカでかい買い」を入れているのは確かである。

当然、トレーダーとしてはどのようなリスクが隠されているのか気になります。金相場が明確な上昇トレンドに入ったのは3月第1週です。イスラエルがイランに報復攻撃を行いS&P500が -4.5% 下落した4月第3週の動きを事前に知っていた者(恐らくはイスラエルやイラン、パレスチナの政府高官・富裕層?)が買い手であった可能性があると我々は事後に知りました。また、中国中央銀行が金の買入を進めているという情報も出ました。中国中銀(と政府)がどのようなリスクに怯えているのかは現時点で分かりません、ただ、彼らが何らかの思惑を持って相場に参加していることは疑うのが難しい事実であり、間違いなく何らかの裏付けを持っているものと考えるのが自然なロジックだと思います。

以上を確認した上で、個人トレーダーとしては、この誰かの何らかの確信に裏付けられた金上昇のトレンドに乗るべきかどうかを判断しなければならない。トレンドフォローをしてもいいし、ジム・ロジャースのように「恐怖を空売り」するべきかもしれない。あるいは、FOMO:取り残される恐怖 を無視してじっとしておくべきかもしれない。

いずれにせよトレンドに対して何らかの判断を下し、トレードを執行するのか、何もしないかを選ばなければならない。いまの僕としては、ブルース・コフナーのヒューリスティックに基づき、自分には知り得ないなにか重大なリスクが世界で生じていると仮に信じることにして、金ETFを押し目で買い増していこうと考えています。


一方で、ジョージ・ソロスと共同でファンドを運営していたジム・ロジャースはこう言っている。

Q. 相場に関して、大衆の最大の誤りは何ですか。
A. 相場は常に正しいと思うこと。相場はほとんど間違っている。君も納得すると思う。
Q. 他には。
A. 古くから言われている相場の知恵などには決して従ってはいけない。相場の逆を行くことを学ばなければならない。裸の王様を見つけられるように、自分自身で考える方法を学ばなければならない。ほとんどの人はそれができない。みんなトレンドに乗りたがる。「トレンドはフレンド」だという。それはシカゴにおいて数分間だけ有効なだけだ。大体は他人に追従していては大金持ちにはなれない。しばらくはそれで稼げるけれど、勝ち続けるのは難しい。

マーケットの魔術師

Q. 政府が流れを食い止めようと何か手段を講じたときは、それによって生じた急騰の後に売るべきだというのが一般的な原則ですか。
A. まったくその通り。常に中央銀行に逆らって投資すべしというのを格言として書いておくべきだね。中央銀行が通貨の買い支えをしたら、逆バリしなさい。

マーケットの魔術師

Q. 平均的な投資家にどんなアドバイスをしますか。
A. 自分がしようとしていることに確信が持てるまで何もしてはいけない。2年連続で50パーセント稼いでも、3年目に50パーセントやられたら、単に預金しておいたよりも成績は悪くなってしまう。自分で正しいとわかるものが現れるまで待つんだ。そして、利益を確保し、預金しておいて次のチャンスを待つんだ。そうすれば、誰よりもずっと良い成果が得られるだろう。

マーケットの魔術師

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