トレードにおけるヒューリスティック (1) - 価格は常に正しい
トレードを勉強する中で読んだ本や記事から学んだ、即戦力で使えると思うヒューリスティックをまとめていきます。
往年の大物先物トレーダーであるブルース・コフナーの言葉です(前段は単なる例示です)。
ヒューリスティックというには少しハイレベルかもしれません。ただ、複雑な非対称情報ゲームであるトレードにおいて、信仰できるかはべつとしても一旦信じるしかない唯一の作法として価格変動とテクニカル分析を重視するべきだ、というヒューリスティックとして僕は学びとしました。事実、この後には以下の発言が続いています。
ちょうど、金相場の急上昇が注目されていて、上記を読んだ後だったので気になっていました。
金価格は通常、株価やドルと逆相関にあります。現在のように準相関している、つまり、歴史とは異なり株・ドルと相関する上昇をしているということは、おそらく世界のどこかで何か危険なことが起きそうになっていて、誰かが自分の財産を守るために金を買い進めている可能性を真剣に考慮すべきだということです。
明白と思われる事実から確認していくと、まず第一に、相場は常に正しいということでしょう。金をドブに捨てるのが流行しているのでない限り、誰もが利益を上げるために何らかの思惑を持って相場に参加し、地球上で最上レベルのコンピューティングリソースと知性をフルに使って、価格を上げたり下げたりすることに加わっています。だから、相場の大きな変動には常に何らかの大きな動きが根底にあるのを疑うことはできない。
第二に、金相場の事実上唯一のレバーは不安の増加(あるいは安心、慢心の増加)であるということです。金は常に製品需要を遥かに超える供給があるので、実需で動くことはなく、いつの時代もリスクヘッジのためだけの金融資産です。一方で、最近の世界には、史上最高値を付けてまでヘッジすべきと思えるリスクはぱっと見では見当たらないでしょう。確実に言えることは、巨大な資産を持つ何処かの誰かが、自分の資産価値が暴落するかもしれないと激しく怯えている、ということです。
第三に、ブルース・コフナーが正しいならば、世界では我々のような一般人が知り得ないことが起きていて、それが自分の耳に届くのはだいぶ後になってからであり、大抵はその間に相場に織り込まれているということです。他の例で言えば、第二次世界大戦でノルマンディー上陸作戦が始まる前に原油先物が上昇していたため、何らかの重要な作戦決行が事前に予想されていたという話を聞いたことがあります。
まとめると、価格変動は常に正しく、それは何らかの情勢変化を反映している。金価格は不安に突き動かされて変動する傾向がある。一方、いまはそのようなリスクは見当たらないが、近い将来に発生するリスクを知り得る誰かが「バカでかい買い」を入れているのは確かである。
当然、トレーダーとしてはどのようなリスクが隠されているのか気になります。金相場が明確な上昇トレンドに入ったのは3月第1週です。イスラエルがイランに報復攻撃を行いS&P500が -4.5% 下落した4月第3週の動きを事前に知っていた者(恐らくはイスラエルやイラン、パレスチナの政府高官・富裕層?)が買い手であった可能性があると我々は事後に知りました。また、中国中央銀行が金の買入を進めているという情報も出ました。中国中銀(と政府)がどのようなリスクに怯えているのかは現時点で分かりません、ただ、彼らが何らかの思惑を持って相場に参加していることは疑うのが難しい事実であり、間違いなく何らかの裏付けを持っているものと考えるのが自然なロジックだと思います。
以上を確認した上で、個人トレーダーとしては、この誰かの何らかの確信に裏付けられた金上昇のトレンドに乗るべきかどうかを判断しなければならない。トレンドフォローをしてもいいし、ジム・ロジャースのように「恐怖を空売り」するべきかもしれない。あるいは、FOMO:取り残される恐怖 を無視してじっとしておくべきかもしれない。
いずれにせよトレンドに対して何らかの判断を下し、トレードを執行するのか、何もしないかを選ばなければならない。いまの僕としては、ブルース・コフナーのヒューリスティックに基づき、自分には知り得ないなにか重大なリスクが世界で生じていると仮に信じることにして、金ETFを押し目で買い増していこうと考えています。
一方で、ジョージ・ソロスと共同でファンドを運営していたジム・ロジャースはこう言っている。
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