古典的エリミネーター 2
俺は人混みが嫌いだ。他人が嫌いだからだ。
そいつのバックグラウンドなんかに興味はないし、関係を深めたいなんて思ったことはない。友人なんてものも、いない。時代の流行りなんかにも興味はない。好きなものに囲まれて、好きなものを食えていれば、それで俺は満足だ。
そんな俺が、こんな見知らぬガキを自分の部屋に招くことになるとは、考えたこともなかった。
「おじさんはさぁー、なんでそんな昔の道具ばっか使ってるのさ?重いし可愛くないし、トレンドじゃないよ?」
「俺はこれが好きなんだ。ほっといてくれ。」
「ふーん、まああたしのじゃないから別にいいけどさ。でもほんと変わってんね、コネクテッドも使わないみたいだし。」
コネクテッド。最近の流行技術らしい。なんだかよく分からないが、俺はこいつのせいで、あの日このガキに背後を取られたようだ。
「その、コネクテッドってのは、一体何なんだ。」
「うーわ!まじでおじさん何も知らないんだ!昭和生まれってガチでこんな感じなんだね〜ウケるんだけど」
「…悪かったな」
「あーごめんごめん。うーんと、あたしも仕組みとかよくわかってないんだけど、要するに『相手の思考を共有』できちゃう仕組みなのよ。あの人何考えてるんだろうなぁとか、あたしのこと好きなのかなぁとか、そういうこと知りたいって思ったことあるでしょ?そんなみんなの願望を叶えてしまう超技術が誕生しましたー!ジャジャン!!って感じかな。」
Internet of Things、いわゆるIoTの時代が到来し、世の中のあらゆるものがネット上で繋がり、人々の生活がより便利で快適なものに変化してきた。らしい。所詮一般社会に馴染めない俺には無縁な話だと思っていたが、まさかこんな業界にまで影響が出てくるとは。
「それで、俺の思考を読み取って、動きを先読みしたってことか。」
「ピンポーン!と言いたいところだけど、正確にいうとそうじゃないんだよね。」
「?」
「まあまあそんなことより、ご飯食べ行こうよ!あたし『も』インドカレー食べたい!」
どうやら思考を読まれているのは事実のようだ。正確には、ビリヤニだが。
【続く】
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