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牧師夫人の徒然なるままに(六五六) 安食道子 「あなたは私を信頼しますか」(その1)

 一年半待ちましたが、ついに骨折部位のチタンのスクリューとプレートを除去する抜釘術を受けました。火葬場まで付けたまま持っていくという手もありましたが、私は除去する方を選択しました。
 術後は骨折手術の時よりもずっと楽だと聞いていました。入院も二泊三日で、しかも自力歩行で退院できると言われました。骨折時に手術をしてくださったH医師を深く信頼していた私は、是非とも抜釘術もH医師に担当してくださいとお願いしました。
手術当日は午前九時から、腰椎麻酔と膝下のブロック注射で始まり、一時間もかからずに、無事にすべての装具は除去できました。翌日は退院の予定でした。
 夜通し足の麻痺は続きました。腰椎麻酔の方は早くに切れて膝上の感覚はほどなく戻りました。しかし、脛から足先の感覚は翌朝になっても全く戻りませんでした。脳からの指令など、完全に寸断された状態でした。とっくに醒めていてもよい時間でした。三時間後には夫が迎えに来ることになっているのに。
 私は、必死で足指を動かそうと努めますが、全く反応しません。突然脳裏に恐ろしい疑いが芽生えました。何かの手違いがあったのではないかと。それは信頼しつくしていたはずの執刀医に対して心をかすめた不信感でもありました。 (続く)

安食道子

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