「牧師夫人の徒然なるままに」(八一〇)「かわいい嘘?」

 孫との会話は楽しいです。幼子の心に宿った奇抜な想像の世界があたかも現実であるかのように語られるのを耳にする時、この想像力の芽を摘まないであげたいと思います。「僕ね、恐竜を飼っているよ。だいぶん大きくなってきたけど」などという話に「何を言ってるの!嘘つくのはお止め!」などと叱りつけることしかできない大人にはなりたくないと思います。

 先日、マンションの上下の階に息子さんご家族と別れて住むおばあさんと幼いお孫さんにエレベーターで会いました。祖母の家でひとしきり楽しい時を過ごした後らしい小学生の孫娘を送り届けがてらに祖母は言いました。「〇〇ちゃん、早くその飴をなめてしまって!エレベーターが着くまでに。飴を舐めていると判ったら、ママに叱られるからね。早くね。」

 思わず笑いがこみ上げてきました。どこのバアバ族も同じだと思いました。要するに与えてはいけないと嫁さんから禁止令の出ているものを与えてしまったけれど、その証拠を消せと孫に要求しているのです。嘘をつくことがいけないとわかっている私ですが、何故だかほほえましくて、笑いがこみ上げてきてしまいました。これくらいの、かわいい違反?があるからこそ、人生は愉快になるのだと思ってはいけませんか。お陰で私はエレベーターの降りる階を間違えました。

安食道子

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