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「牧師夫人の徒然なるままに」(八二四)「天国の鍵は目に見えない」

 今年の教団の壮年会の定例集会は元裁判官で、今は弁護士兼法科大学教授の谷有恒さんの講演とその作品「ペテロのように」の上演会でした。「ペテロのように」は「語りと音楽で表現する朗読劇」で、谷氏の自作の賛美歌も加えた作品です。ペテロ役は劇団つぶしおの服部智彦さんが実に見事に演じてくださいました。

 その最後で、ペテロがイエスさまから「天国の鍵」を託されているという場面がありました。そこで、視覚教材に大きな鍵を作って、それを降りかざしてもらう事になりました。そして、鍵が準備されました。我らがペテロさんは衣の内側にその鍵を隠して、いざ、その場面で鍵を会衆の前に提示する予定でした。ところがなんとしたことでしょうか。あるはずの鍵が見つかりません。もぞもぞと何度か懐をまさぐった後、見つからなかったので、彼は手を高く掲げて「見えますか?」と見えない鍵を提示したのです。

 準備通りに事が運ばなかったので、一瞬は息をのみました。どうしよう?という当惑の瞬間でした。しかし、彼は見事にその場を切り抜けました。そして、素晴らしいことを教えてもくれたのです。「天国の鍵」は、現実に肉眼では見えないけれども、確実に存在するということを。この時に鍵が見えなかったのは、決して偶然のなせる業ではなかったのではないでしょうか。

安食道子

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