離婚請負人(笑)

相方「親友も心配だけど、せっかくのお祝いもあるしどうしよう?」
ハナー「それは迷わず親友を優先すべきだ。行っておいで。」

相方が相方の親友Mちゃんから「離婚するかも」と相談されたのは、私が相方の誕生祝をする前日のことであった。相方はハナーからのお祝いを無碍にするのが悪いと遠慮して冒頭の発言になったわけだ。

優先順位は存在するし重要な判断軸となる。たとえばパートナーや親子兄弟、親友と一般的な友人では明らかに前者を優先すべきだろう。だが、その抱えている問題の緊急性や重要性によって補正がかかる。当該案件は「パートナーにしてもらう誕生祝」よりも「親友の人生の危機」を優先すべきだと、優先順位を下げられるパートナーの私自身が説いたわけだ。「迷わず行けよ行けばわかるさ」である。

ハナー「そういうときは『親友を助けたいんだけど』と遠慮せずにはっきり言いたまえよ。親友を助けに行くキミの方が『素薔薇しい』じゃないか。」
ハナー「とりあえず情報もらっておいで。その親友が望むなら俺もヘルプに入るから。お祝いは夕方からゆっくりやろう」

相方が聞いてきた話は直接聞いた中ではかなりひどい部類だった。「家事能力皆無」「経済DV」「バクチ中毒」「浮気」「モラハラ」の旦那である。かろうじて「直接暴力だけは一切ない」のだけが救いだった。

親友は公務員の保母さん、ダメ旦那は高校の教師。高校時代から付き合い結婚して8年目、子供は居ないとのこと。

①家事能力皆無
相方「結婚してみて分かったらしいんだけど。服は脱ぎっぱなし、部屋はチラかしっぱなしで物を捨てられない。なぜか小学生時代の服まで新居にもって来たって。選択も炊事も洗濯も買い物も掃除もゴミ捨てすらやらないからMちゃんが全部面倒見てるって」
私「整理整頓ができないってのは私も少しだけ耳が痛いが(笑)。奥さんじゃなくて家政婦とかお母さんを求めてるのかねぇ。まあ証拠になる写真を撮るように言っておくといい。社会戦はフィギュアスケートだから、要は第三者への説得力が戦力になるからね」

②経済DV
相方「共働きだから毎月一定額を入れることになってたんだけど5年ほど前から入金を渋ったり、勝手に減額したりしてる。催促もしにくいし、
催促したらしたで機嫌が悪くなるって」
ハナー「振込記録のあった口座通帳とその後、記録がないこと自体が証拠になる。」
相方「洗濯機が壊れたことがあって、洗濯機を買い換える相談をしたら『無駄遣いするな!』って」
ハナー「Mちゃんに洗濯してもらっていながらひどい言い草だな(笑)」

③バクチ中毒
相方「麻雀が好きで、夜遅くまで麻雀してきて。帰ってくるたびに全身がタバコ臭くなってるって」
ハナー「バクチか・・・もしかして借金したりしてるわけ?それが経済DVの理由とか?」
相方「いいえ、一応小遣いの範囲で済ませてるみたい。問題なのは家に寄り付かないことみたい」
ハナー「まあ、そんな旦那は家に寄り付かないほうがよさそうだけどな。ちゃんとカネさえいれてくれればいいんだが」

④浮気
相方「ある日、麻雀から戻ってきてもタバコ臭くなかったんだって。で、スマホを見てみたら女の子を口説いてるメールが残ってて。」
ハナー「内容は?」
相方「口説いてる相手は元教え子で今は女子大生。その女子大生は付き合ってる彼氏が居るんだけど、その馬鹿旦那の今の教え子の高校3年生。遠距離恋愛になって相談してきた女子大生を口説いてホテル誘うメールを送ってるみたい。Mちゃんはそれ見てどうしようかってなってるみたい」
ハナー「まずはメールを転送して確保するように。また今後のバカ旦那との話し合いは全部ICレコーダーで記録して。刑事ならともかく民事なら相手の許可なんてなくても証拠として十分に機能するから。」
相方「わかった。」
ハナー「頼れる仲間は?ご両親とか付近に居ないのか?」
相方「ご両親は健在で関西在住。義両親も同じ。義父はまだ理解があるけど、義母はかなり息子寄りみたい。」
ハナー「男兄弟は?」
相方「弟君がいるって」
ハナー「社会人?自動車は持ってる?兄弟仲は?」
相方「そこまでは分からないけど、聞いてみる」
ハナー「あと直接暴力はないんだね?」
相方「うん、言葉のモラハラはかなりあるみたいだけど」
ハナー「まだバカ旦那には言わないで水面下で準備を進めたほうがいい。伝えると警戒されるからね」
相方「それがもうバカ旦那にバレてるみたいで」
ハナー「マジか!?」
相方「Mちゃん、相手の女子大生に会いに行ったんだって。それで相手の女子大生の子はバカ旦那にキスされたって。」
ハナー「はぁ、ホントにあきれたケダモノっぷりだな。」
相方「相手の女子大生も言い寄られて迷惑してたところで『もう連絡とりません』ってやってくれたんだけど。それで旦那が激怒してMちゃんに言葉攻めはじめたって」
ハナー「それも全部録音だな」

後日、メールは写真撮影で記録済み、別居開始、弁護士も見つけて周囲のほとんどを味方につけて話し合いに粛々と臨む状態とのこと。
相方「そういうわけだから、ハナさんの出番はないみたいよ」
ハナー「離婚優先で弁護士が決まってるならたぶん大丈夫とは思うけど。相手をとっちめたい方針なら、弁護士が居ると使いにくい手段もあるのよ。弁護士さんだと立場上オススメできない方法が必要になったら助けると伝えてあげて。」
相方「ハナーさん、ホントそういうの好きだもんね。勝つために手段を選ばないっていうか(呆)」
ハナー「人聞きが悪いな(笑)。『勝つために最善を尽くしてる』と言ってくれたまえ(笑)。・・・まあまじめな話、相対的にでも自分のほうに正義があるなら、くだらない悪に絶対に負けちゃダメなんだよ。悪がはびこることになるからね。一切の妥協も譲歩もせずに手段を選ばず相手を徹底的に叩き潰して結果が確定してから慈悲をかけてあげたらいい。全然自分は俗物だし、正義の味方とは程遠いけれど、『相対的正義の味方』くらいは名乗っていいのかもしれん」

CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。