J2-第3節 レノファ山口FC対愛媛FC 2020.07.05(日)感想

画像1

 四国ダービーのつぎはオレンジダービー。愛媛FCはレノファ山口FCのホーム維新みらいふスタジアムへのりこんだ。ところで「みらいふ」って「未来府」であって明治政府とか新選組といった歴史や野心を感じさせる時間的幅のあるネーミングだったりするのでしょうか? そんなことはない?
 ということで、J2第3節、レノファ山口FC対愛媛FCの試合をざっくりとふりかえっていく。

 両チームとも中盤の構成がつかみにくかった。ゴールキック時の様子からだと、山口は[4-2-1-3]で高宇洋選手がトップ下にはいっているようだった。愛媛は[4-2-3-1]で田中裕人選手と渡邊一仁選手のドイスボランチ。田中選手はふだんとは異なる左サイドにはいった。サイドハーフは左が清川流石選手、右が長沼洋一選手だった。
 山口は守備のときに高選手が最前線へでていくことがおおかった。その動きに佐藤健太郎選手やヘニキ選手が連動し、愛媛陣内でボールを奪おうとしていた。[4-4-2]のようにも、ヘニキ選手がアンカーの[4-1-4-1]のようにもみえた。ヘニキ選手は2ライン間にいる森谷賢太郎選手をマークしているようでもあった。
 ところで山口は愛媛が3バックと4バックのどちらでくると予想していたのだろう? もし3バックでくる予想だったとなると、中盤での人のつかまえ方で混乱しそうだ。ともあれ、中盤は3対3の数的同数になるためマークがはっきりするようにもみえた。
 ならばと愛媛は長沼選手が右サイドから中央へはいりこむ。この試合で長沼選手はタッチライン際に張ってウインガー然としているよりも、中央へ移動してきて中盤で数的優位をつくっていた。これまでにもサイドでボールを受けてから中央へはいってくる動きはみられていたが、この試合ではそれが顕著だったように感じる。
 空いた右サイドには西岡大志選手が上がってきて横幅をとっていた。

画像2

 一方の左サイドで幅をとっていたのは清川選手だった。J初出場初スタメンの清川選手。おもいかえしてみると昨季彼がはじめてベンチ入りしたのもアウェーの山口戦だった。待ちに待ったデビュー戦、あなたはどんな選手ですかとみつめる僕たちに、しっかりと自分が何者であるのかしめしてくれた。
 まずはしかけていく姿勢をみせてくれた。相手のペナルティーエリア近くでボールをもてば、かならず縦にしかけてクロスを入れていた。川井歩選手にとめられることがおおかったものの、しっかりコーナーキックをえている。利き足と逆の左足でも積極的にクロスを入れていく姿は下川陽太選手のようだった。ちなみに、清川選手にとって仲のいい選手と昨年いちばんすごいとおもった選手はともに下川選手だそうな(『Jリーグ選手名鑑2020 J1・J2・J3 エル・ゴラッソ特別編集』より)。また、藤本佳希選手がサイドへ流れてくれば入れ替わりにペナルティーエリア内へはいっていったり、裏へ抜けだして深さをつくったりしてチームの前進を助けていた。
 つぎに足もとの技術。彼がタッチライン際でボールをおさめることで、中盤の選手たちがフリーになる場面がみられた。サイドの清川選手に視線がむけられることで、山口の選手の背後で田中選手があいているとか。ボールを失わないのは、ポジショニングのよさもあるのかもしれない。マークを外してボールを受けているような場面がみられた。
 いちばんおどろかされたのは空中戦のつよさ。後方からのロングボールに競り勝ってマイボールにする、できなくとも前線からのプレッシングのきっかけにしていた。ヘニキ選手にも勝っていて目が点になった。落下点へのはいり方がうまいのかしらん? 清川選手がいれば、後方でのビルドアップも安心しておこなえそうだ。

 さて、長沼選手の闖入によって山口のボランチは前へでていきにくそうだった。高井選手が下がってくればマークをはっきりさせられるかもしれないが、そうしなかったのはボール奪取後に速攻をしかけるためであろう。高選手のボール奪取から、高井選手がエリア内まで攻めこむ場面もあった。
 高井選手は左サイドの高い位置へ張っていることがおおかった。対して右サイドで幅をとるのは右サイドバックの川井選手だった。この試合の山口で特徴的だったのが、攻撃時のヘニキ選手のポジショニング。中央に留まるのではなく、右サイドへ流れてサイドバックのような位置でプレーしていた。この動きによって川井選手が高い位置へでていき、右ウイングの池上丈二選手が内側へ絞ってプレーするようになっていた。

 飲水タイムは試合の流れをとめる。どの試合だったか失念したが、とある試合で実況の方が、飲水タイムがあることで前後半という区切りのなかに、さらに前後半があるようだとおっしゃっていた。同意。
 飲水タイムが明けたところでイウリ選手に変化があった。それまでは中央で山﨑浩介選手と対峙していたが、右サイドへ流れて茂木力也選手と競りあうようになっていく。これにはハラハラさせられた。かわりにサイドからクロスを入れたいのにイウリ選手が中央にいない、なぜならボールホルダーがイウリ選手だからという場面もあった。
 前半終了間際、清川選手の縦のしかけでえたコーナーキックを、西岡大志選手が肩でおしこみ愛媛が先制。そのまま前半が終わった。今季から、脇の下のいちばん奥より上が肩、下が腕と競技規則に明記された気がする。つまり肩なのでセーフ、セーフ!

 ハーフタイムで両チームとも選手交代をおこなった。
 山口はヘニキ選手に代わって森晃太選手が出場。右ウイングへはいり、池上選手がトップ下、高選手と佐藤選手のドイスボランチとなった。
 愛媛は清川選手に代わって山瀬功治選手。システムも[3-4-2-1]へかえ、長沼選手が左ウイングバックにうつった。
 前半の山口はヘニキ選手がサイドへひらくかたちでビルドアップしていたが、高選手と佐藤選手のコンビは中央にとどまるようにしていた。そうすることで愛媛の中盤をも中央にひきつけ、センターバックからサイドの選手へのパスコースをつくりだしていた。

画像3

 後半になって山口は左サイドからボールを前進させていくことがおおくなった。サイドへのパスコースが確保されたほか、トップ下へうつった池上選手がビルドアップにくわわることで愛媛の守備対応をむずかしくしていた。
 池上選手が左サイドへ流れると三角形ができあがる。高井選手と安在和樹選手とのトライアングルだ。さらに愛媛が1トップになったため、センターバックの眞鍋旭輝選手やボランチの選手もくわわって複数のパスコースをつくりやすくなる。愛媛の選手たちの背後を突くこともおおくなり、サイドの突破からチャンスをつくっていた。

画像4

 ビルドアップに苦しんでいた山口だが、ボールをハーフウェイラインや愛媛陣内まで運べられれば持ち前の連動した攻撃をくりだせる。これは愛媛にとってむずかしい展開となった。ということで58分に、それまで裏抜けやチェイシングで奮闘していた藤本選手に代わって丹羽詩温選手が出場する。松本山雅FC戦でもおもったのだけれど、丹羽選手のポストプレーがすごく安定している。ボールをおさめて味方にパスをつないでくれると安心できる。前線での起点、そして藤本選手にひきつづき積極的なチェイシングで攻守に流れをつかみたいところ。
 だが、たしかにボールをもてば安定して前進できていたものの、失ったあとの山口の守から攻への切り替えの速さに苦しむことになった。

 山口は73分に選手交代をおこなう。高井選手に代わって浮田健誠選手が、佐藤選手に代わって吉濱遼平選手が出場する。浮田選手はさっそく裏抜けからエリア内でシュートをはなっている。しかも利き足ではない右足でためらいもなく。ちなみに吉濱選手のロングパスからだった。83分には川井選手と安在選手に代わって武岡優斗選手と小松蓮選手が出場してさらに圧力を高めた。
 流れをつかみきれない愛媛は81分に川村拓夢選手、86分には有田光希選手が交代出場して中盤と前線の強度をあげた。それでもイウリ選手に最終ラインを突破されたり、エリア内でシュートを打たれたりと苦しむ。しかしゴール前で身体を張ったり、ボールホルダーを外へ追いやる寄せ方をしたりして防いでいた。
 すると88分、前野貴徳選手のスローインを有田選手が落とし、ワンタッチで田中選手がロブパスを裏へ。抜けだした長沼選手がGK吉満大介選手をループシュートでかわしてJ初得点。さらに89分にはGK岡本昌弘選手からのロングボールを有田選手がそらし、山瀬選手がひろう。武岡選手に奪われるも、すぐさま川村選手、丹羽選手と連続してボールホルダーへ寄せていき、相手のパスが短くなったところで有田選手が奪取。丹羽選手の動きに山口ディフェンダーがつられる間にループシュートを蹴り上げてゴールを決める。
 たえぬいた愛媛が山口を0-3でくだして2連勝とした。

 前節の徳島ヴォルティス戦でみせた勢いが四国ダービー限定ではないんだよとしめしてくれた愛媛FC。前線から連動したプレッシングができていてうれしい。[4-4-2]でブロックを組むときのサイドハーフの動きも1週間で整理されているように感じて、川井健太監督あらためてすごいとおもう。前半あまり中央をつかわれたイメージがなかった。気になるのは終了間際に足を痛めていた田中選手。怪我をしたのか、攣っただけなのか。
 試行錯誤中で本来の力を発揮できなかったようにみえるレノファ山口FC。前半終了間際の失点がなければどうなっていただろう。後半は、ボール保持に重きをおくチームがその力を相手陣内で発揮しつづけると手がつけられなくなる様をみせてくれた。今回は逃げ切ったが、つぎに対戦するときはよりハードな対戦相手になっているのだろう。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

 試合結果
 レノファ山口FC 0-3 愛媛FC @維新みらいふスタジアム

 得点者
  山口:
  愛媛:西岡大志、45+2分 長沼洋一、88分 有田光希、89分