J2-第17節 愛媛FC対柏レイソル 2019.06.09(日)感想

 愛媛FCが17節でホームにむかえるのは柏レイソル。足踏みがつづくホーム100勝めをかけた記念の試合には望外の相手だ。武者震いと涙がでてくる。
 ということで、J2第17節、愛媛FC対柏レイソルの試合をざっくりとふりかえっていく。

・柏のボール保持での狙い

 アンカーをおいた【3-5-2】で臨んだ柏。ボール保持で狙うはディフェンスライン裏へのロングボール。両ストッパーの田上大地選手と杉井颯選手がロングボールをだして、快速アタッカー同士で組む2トップを活かそうとしていた。
 愛媛は柏の最終ラインがボールをもっているときは1トップ2シャドーの3人で柏の3バックにあわせる。これまで愛媛の前線はパスコースをけす守備をすることがおおかったが、この試合ではボールを奪いにいくプレッシングをしていた。1トップの藤本佳希選手がアンカーの小林祐介選手へのパスコースを切り、3バック中央の中川創選手からストッパーのどちらかへパスがでるとシャドーがプレッシングにいく。先述のとおり田上選手と杉井選手はロングボールを蹴ることがおおかったためボールを奪うまでにはいたらなかったが、柏2トップにボールがおさまったり裏抜けしたりするより、愛媛のディフェンス陣がはねかえすことのほうがおおかった。
 柏はグラウンダーのパスをつないで攻めあがろうともしていたが、パスの出どころがプレッシングを受けている最終ラインであることがおおかったため、なかなか正確なパスをだせないでいた。手塚康平選手が1列おりてきたときは安定してビルドアップできていたようにもみえたが、愛媛も縦パスを2トップにとおさせなかった。

・愛媛が活用した柏【2-2】ブロックの脇

 愛媛は中盤でパスカットしてカウンターに打ってでたり、最終ライン間でのサイドチェンジからチャンスをつくっていた。
 柏はボール非保持のときに【5-1-2-2】ぎみになる。前線の【2-2】は近い距離をたもつことがおおかったので四角形のようになっていた。
 となると愛媛は4人のブロックの左右に広大な空間をえることができていた。サイドチェンジを受けた前野選手がフリーの状態で相手陣内へボールを運んでいく場面がなんどかみられている。
 また柏の前線4人と後方6人とが分断されていたので、愛媛がロングボールをいれてくるとこぼれ球をひろう人が柏にいない状況にもなっていた。アンカーの小林選手も山瀬選手をマークする役割があるためか、最終ラインに吸収されて柏に2列めというものがなくなっている場面も散見された。

・ネルシーニョ監督の修正

 前半のうちにネルシーニョ監督が手を打つ。29分に手塚選手に代わって江坂任選手が出場する。すると柏のウイングバックが効果的な守備をみせるようになる。
 それまでは愛媛のウイングバックが高い位置をとるため最終ラインに吸収されていたが、前へでていく守備がでるようになって中盤でボールを奪えるようになっていた。
 31分にGK岡本昌弘選手から前野選手にでたロングパスに対して、高橋俊希選手がとびだしていってクリスティアーノ選手にヘッドでつないだ。江坂選手がパスコースを切りながらアプローチすることで、愛媛はボールをまえに運べていなかった。愛媛が全体的におしさげられていたので、相対的に高く位置取りできた高橋選手が飛びだしていくことができたのだろう。
 また江坂選手が愛媛の最終ラインまでプレッシングへでることで、彼がトップの【5-2-3】ぎみになって守ることもあった。このときクリスティアーノ選手とガブリエル選手がボールサイドとは逆側に残って空間をケアすることができるようになり、愛媛はサイドチェンジを封じられることになった。
 なおかつヒシャルジソン選手が1列さがって小林選手と2ディフェンシブハーフになったことで、野澤選手と田中選手のマークにつくこともできる。さらにいえば、前線から規制をかける人数が増えたので、愛媛の最終ラインからのパスが苦しまぎれなものになり、中盤でボールを奪えるるようにもなった。ブロックのラインが4列(【5-1-2-2】)から3列(【5-2-3】)になったことで前線と後方との分断がおこらないようにもなっていてあざやか。

 しかし愛媛は臆さない。自陣でのプレーよりも柏陣内にボールがある時間をふやしてチャンスをつくっていた。柏がグラウンダーでパスをつなぐときは中央を閉めて縦パスをとおさせず、ロングボールを入れてくればユトリッチ選手がはねかえしつづけていた。
 41分の野澤選手の抜けだしはすばらしかった。この試合、野澤選手は最終ラインと前線とをつなぐだけでなく、みずからもあがっていって攻撃にくわわることがおおかった。愛媛は野澤選手のプレーからえたコーナーキックから2回つづけて決定機をつくった。決めておいてもバチはあたらなかったとおもう。

・試合のテンポ

 柏は後半からはっきりと【3-4-2-1】にする。ガブリエル選手が1トップでクリスティアーノ選手と江坂選手の2シャドー。
 愛媛はGK岡本選手のゴールキックが藤本選手におさまったり、外から中央を狙って近藤貴司選手が裏抜けしたりと、自陣でのビルドアップを省略して柏陣内でのプレー時間をふやしていくことに成功する。そうして柏をおしこんでえた49分のコーナーキックで山﨑選手がヘディングを決めて先制する。
 60分をすぎたあたりから愛媛は自陣でのビルドアップをおこなうようになる。ハイテンポの時間がつづいていたため、試合を落ち着ける意図があったのかもしれない。
 70分にガブリエル選手に代わって瀬川祐輔選手が出場する。直後の71分に田上選手が中盤でボール奪取すると、こぼれ球を瀬川選手がひろい、陣形の整っていない愛媛ディフェンスの背後をつくロブパスをクリスティアーノ選手へだした。クリスティアーノ選手はゴールキーパーとの1対1をかわして同点ゴールを決めた。
 攻から守への切り替えのところで間にあわずに失点というのは、今季愛媛がかかえるおおきな課題。その形から失点してしまったのはメンタル的にも厳しかっただろう。その後、勢いづいた柏の猛攻をはねかえすだけという時間がつづいた。解説の大西貴さんが述べていたとおり、同点に追いついたことで柏は試合のテンポをあげたが、愛媛はさげていたテンポをふたたび柏にあわせて戻すことができずにいた。
 とはいえ、愛媛がブロックを形成した状態から崩されて失点というのはレアケースだったりする。柏のハイテンポな攻撃をはねかえしつづけてふたたびの好機を待つ。すると柏も前線を走らせるロングボールではなくショートパスでボールを前進させるようになる。試合のテンポは落ち着きはじめた。
 柏のテンポを遅らせる時間帯、そして遅らせたあとのタイミングで川井健太監督は選手交代をおこなう。76分に山瀬功治選手に代わって丹羽詩温選手が、78分に藤本選手に代わって有田光希選手が出場する。
 さて81分だ。有田選手のおさめたボールがなんの因果か丹羽選手のもとへ転がっていく。丹羽選手はファーストタッチで柏の選手をふりきってボックス内へ進入すると勝ち越し点を決めた。
 さらに84分のフリーキックでユトリッチ選手のロングパスをディフェンス裏で下川陽太選手が受ける。グラウンダーのクロスに対して有田選手が的確に走りこんで3-1に。
 90分にはキャプテン西田剛選手が吉田選手に代わって出場。前線3人が総代わりすることで、愛媛は試合をとおして前線からのプレッシングができていた。柏に追加点をゆるさず3-1で試合を終え、記念すべきホーム100勝めを挙げた。100勝だけれど気分はミレニアムだった。いえい。

・終わり

 試合のはいり方を柏レイソルが誤ったのか、それとも愛媛FCが彼らの狙いを凌駕したのかはわからない。どちらにせよ前半のうちにあっさりと修正するあたり、さすがはネルシーニョ監督だった。
 シーズン緒戦の好調さをおもいださせる愛媛FC。ターンの技術と対人での頭脳的な強さをみせる山瀬選手、脳震盪からの復帰後調子をあげている野澤選手の活躍がめざましかった。吉田選手とユトリッチ選手の空中戦の頼もしさはなんなんでしょう? 愛媛は本領を発揮しはじめているのかもしれない。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

 試合結果
 愛媛FC 3-1 柏レイソル

 得点者
 愛媛FC  :山﨑浩介、49分 丹羽詩温、81分 有田光希、84分
 柏レイソル:クリスティアーノ、71分