J2-第21節 愛媛FC 対 アルビレックス新潟 2020.09.23(水)感想

01_スタメン

 5連戦第3ラウンド2戦め。相手はアルビレックス新潟。ギラヴァンツ北九州、徳島ヴォルティスとの上位対決に敗れてしまい、順位を9位に下げてしまっている。夏の移籍で加入した鄭大世選手がベンチにひかえる。
 愛媛は前節から7人変更。吉田眞紀人選手が今季初先発。森谷賢太郎選手がベンチスタートとなった。西岡兄弟がそろって出場したほか、小暮大器選手も5試合ぶりの先発出場となった。代わりに前野貴徳選手と茂木力也選手が先発をはずれた。茂木選手は前節までフル出場していたが、ここでようやくおやすみ。
 キックオフ前には藤本佳希選手が表彰されている。19節のジャフユナイテッド千葉との試合でJ2通算100試合出場を記録していた。おめでとうございます。
 J2第21節、愛媛FC対アルビレックス新潟との試合をざっくりとふりかえっていく。

 愛媛は立ち上がり高い位置からプレッシングをかけにいった。虚をつかれてうまくつなげない新潟からボールを奪ってショートカウンターを打つ場面もみられた。
 3バックも4バックもできる組みあわせだった愛媛。蓋をあけてみれば[4―4―2]だった。新潟も[4―4―2]のため2センターバックには2トップ、サイドバックにはサイドハーフとボールを奪いにいくときの相手がはっきりとする。さらに藤本選手が二度追いをおこなうことでより新潟のビルドアップを苦しめていた。
 マークがはっきりするのは相手も同じ。なのでビルドアップのときにはずれをつくる必要がでてくる。愛媛は両サイドバックを前へだし、最終ラインを2センターバックとボランチの田中裕人選手の3人に変化させる。もうひとりのボランチ横谷繁選手が相手2トップの背後に位置する[3―1]の形で4対2の数的優位をつくった。このとき両サイドハーフが相手の2ライン間へはいっていく。左の長沼洋一選手は2ライン間にいることでロメロ・フランク選手を引きつけ、小暮選手をサイドでフリーにするのにひと役買う。右の忽那喬司選手は1―2列めへ下がってきてビルドアップを助ける役割を担っているようだった。なので[3―1―4―2]にもみえれば、いつもの[3―4―2―1]にもみえていた。

02_愛媛のビルドアップ

 対する新潟。キックオフ直後はバタついたものの、すぐに体勢をたてなおした。
 新潟のビルドアップはすこし変則的な形をしていた。左サイドでは本間至恩選手が2ライン間(ほとんどトップ下)へはいり、荻原拓也選手が前へでていく。だが、右サイドのロメロ・フランク選手は内側に位置するのものの、新井直人選手は最終ラインに残ってビルドアップにくわわっていた。つまり、サイドバックの片側を上げて4バックから3バックへ変化してのビルドアップだった。ということで新潟の攻撃陣形は左右で非対称になっていた。左はタッチライン際まで幅をとるが右側は空けておく。なぜ空けておくのかといえば、そこでファビオ選手が小暮選手と1対1の勝負にもちこめるようにするためであろう。新潟は左サイドでボールを動かしてからマウロ選手のロングボールで小暮選手の背後を狙う場面をつくっていた。そして、ファビオ選手が孤立しないように、ロメロ・フランク選手が近くでプレーするようにもしていた。

03_新潟のビルドアップ

 新潟の狙いは右サイドへのロングボールだけではもちろんない。2列めの選手たちのおおくが2ライン間へはいっていくうえ、各選手たちがしきりとライン間を前後したり、愛媛2列めの隙間に位置したりして縦パスを引きだそうとしていた。とくにトップ下の位置にまではいっていく本間選手はのびのびとプレーしていた。

 立ち上がり15分を過ぎたあたりで新潟はビルドアップの形を変化させた。新井選手が前へでていくようになり、最終ラインはセンターバックふたりないし島田選手が下がってきての3人になった。序盤15分を過ぎてからのことなので、もしかしたら新潟は本来この形でのビルドアップがやりたいのかもしれない。ただ、島田選手が下がってくるならまだしも、2センターバックでスタートするとなると、それはキックオフ直後と同じくマークがはっきりする状況にもどるということでもある。愛媛陣内でボールを保持していれば問題ないが、自陣からビルドアップする場面ではプレッシングを嵌めこまれて困っていた。
 とはいえ、リスタートから空いている逆サイドへ展開したり、こぼれ球のひろいあいから崩れた2ライン間に縦パスをいれたりすることで愛媛をおしこんでいた。
 愛媛はなかなか攻勢にでられない時間がつづいたものの、積極的なプレッシングとシュートを打たせない守備をみせ、むしろ危なげない戦い方をしていた(もっとも、44分には久しぶりで2ライン間を突かれてしまい、ロメロ・フランク選手のクロスがバーをたたく危険な場面もあったが)。
 新潟は島田選手が最終ラインに下がったことで2ライン間の選手が減り、愛媛2列めの背後を脅かすことがすくなくなった。そのうえ、守から攻へ転じたときもいまひとつ攻撃を加速できないようだった。

 ハーフタイムで愛媛が選手交代。吉田眞紀人選手に代わって丹羽詩温選手が出場した。
 後半からも新潟は島田選手が最終ラインに下がった3バックでビルドアップをおこなうことにした。
 対する愛媛は自陣でのビルドアップにはこだわらず、むしろ新潟陣内でのプレーの頻度をたかめようと、GK岡本昌弘選手もロングボールを選択するようになった。
 後半最初の決定機は53分の新潟。リスタートで左から右へ展開すると、フリーの新井選手がディフェンスラインの裏へロングパス。矢村健選手が抜けだしてペナルティーエリア内で時間をつくると、福田晃斗選手上がってきてクロス。ファーサイドでファビオ選手が折り返し、中央でロメロ・フランク選手がシュート。しかし、味方と被ってしまって枠をとらえることはできなかった。
 この直後のゴールキックから愛媛は自陣でのビルドアップを再開した。実況の江刺柏洋さんが指摘されていたように、この時間帯はオープンな展開になってきており、それはつまり、愛媛が自陣からボールをつないで相手を動かしやすい状況でもあった。
 そんななかで愛媛が決定機をつくる。56分、田中裕人選手がさすがの予測から相手の前線へのパスをカットすると、横谷選手へ斜めのパス。横谷選手はワンタッチで丹羽選手へ。丹羽選手は裏へ走りだす藤本選手へスルーパスをだそうとするが、飛びだしてきたマウロ選手に防がれる。しかし横谷選手がこぼれ球を回収。舞行龍ジェームス選手の手前に位置どっていた忽那選手へ縦パスを刺すと、これを忽那選手がワンタッチで中央へ。新潟の最終ラインは先のマウロ選手の前へでての守備と、忽那選手の位置どりによる舞行龍選手への影響によってそろっておらず、そのギャップで藤本選手がパスを受けることができた。あとはもうGK小島亨介選手との1対1を残すだけとなった。だが、さすがはU-23代表のゴールキーパー、新潟最大のピンチを救うビッグセーブをみせた。
 プレーは途切れることなく、愛媛が再度ボールを保持して新潟をおしこむと、58分に藤本選手が左サイドからカットインしてシュートをはなった。これはわずかにはずれてしまった。また、直後の59分にはバックパスの処理をGK小島選手が誤ったところを丹羽選手がつめてチャンスになりかけもした。

 たてつづけのピンチをのがれた新潟。65分にふたり選手を交代する。ロメロ・フランク選手に代わって中島元彦選手、島田選手に代わって堀米悠斗選手が出場した。連続ピンチ後の新潟はじょじょに前半同様愛媛の2ライン間をつかえるようになってきていた。
 70分には愛媛も選手交代。西岡大志選手に代わって前野貴徳選手、藤本選手に代わって有田光希選手が出場した。奇しくも古巣対戦となるふたりの同時出場となった。
 新潟は中島選手と堀米選手が出場してからフォーメーションをかえている。おそらく[4―3―1―2]。福田選手の両脇に中島選手と堀米選手がたつ3ボランチ。トップ下は本間選手で、ファビオ選手と鄭大世選手の2トップ。
 ビルドアップは2センターバックと3ボランチでおこなうようになったのだが、これに愛媛は手こずることになった。まず、最終ラインでは数的同数をつくれるが、その背後に3人が控えているためパスを規制するのがむずかしくなった。さらに1―2列めで前をむかれてしまうため、トップ下の本間選手へのケアにボランチふたりがついてしまうようにもなる。そうなるとボランチとサイドハーフとの距離がひらくので、そこからやすやすと縦パスをとおされるようになってしまった。

04_[4―3―1―2]の新潟

 これに対して愛媛は2トップの位置を下げることで応じた。センターバックへアプローチをかけてもはずされてしまうのなら、はじめからいかなければいい。それよりも3ボランチのそばにいることで中央をつかわせない――はずだったが、中島選手の位置どりがうまくて中央からボールを運ばれてしまっていた。
 しかし愛媛も攻勢にでれば決定機までもっていく。85分には小暮選手が右サイドを抜けだしてクロスをあげて決定機をつくる。直後には相手陣内深くでボールを奪い、有田選手がおしいシュートをはなった。
 90+1分にはロングパスのこぼれ球を丹羽選手が相手陣内で回収。右サイドを駆けあがる長沼選手へたくしてゴール前へ走りこむ。長沼選手から良質なクロスが上がると、ダイビングヘッドでゴールネットをゆらした。しかしその直前、ペナルティーエリアへはいる前にマウロ選手の肩に手をかけて倒したとしてファウルをとられ、ゴールとはならなかった。
 ちなみにこの場面は新潟のコーナーキックの流れが途切れ、GK岡本選手がリスタートしようとしたところからはじまる。このとき、声の主はわからないが、愛媛の選手のだれかが、有田選手の裏へのパスを指示している。GK岡本選手がそれにすぐ応えることでつくったチャンスだった。あの声はだれのものだったのだろう?
 というところで試合は0―0で終了した。

 連敗を3でとめた愛媛FC。試合後に川井健太監督が述べていたように手応えのある試合だった。また、4バックでも守れるところをみせた試合でもあった。前に人数をかけられるなら、高い位置でのプレッシングがより効果的になっていくかもしれない。順位表に目をむけると、最下位だったレノファ山口FCが千葉に勝利したことで19位にジャンプアップ。代わりに愛媛は最下位へ転落してしまった。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

 試合結果
 愛媛FC 0―0 アルビレックス新潟 @ニンジニアスタジアム

 得点者
  愛媛:
  新潟: