J2-第39節 愛媛FC対FC町田ゼルビア 2019.11.03(日)感想

 ボール保持を志向する愛媛FCにとっての天敵、FC町田ゼルビア。昨季川井健太監督が就任してからの戦績は3戦3敗。前回対戦ではシュート0本に抑えられて悔しいおもいをした。しかし、愛媛が苦手とする町田ゼルビアも今季は苦しんでおり、再戦はおもいもしない残留争いとなった。
 J2第39節、愛媛FC対FC町田ゼルビアの試合をざっくりとふりかえっていく。

 キックオフから仕掛けてくる町田ゼルビア。中央から左サイドに人をあつめたかとおもうと、ボールは右サイドへ展開。相手の配置によって左サイドを空けていた愛媛のブロックがスライドするあいだに、土居柊太選手とのコンビネーションから突破した佐野海舟選手がクロスをあげ、開始早々コーナーキックを得る。スローインを挟んだ2回のコーナーから愛媛のゴールに迫った。
 しかし、2度めのコーナーキックのこぼれ球をひろって愛媛が反撃。野澤英之選手と下川陽太選手で相手陣内まで攻めあがる。下川選手のアーリークロスはしかし相手にクリアーされてしまう。
 こうした、町田ゼルビアがサイド攻撃とセットプレーでゴールに迫り、それをカウンターではねかえす愛媛のたちあがりとなった。そんななか10分に得たフリーキックで町田ゼルビアが大チャンスを迎える。キーパーとディフェンダーのあいだに平戸太貴選手がクロスを入れれば、抜けだした中島裕希選手がふれたこぼれ球に、土居選手が反応してシュート。しかしGK岡本昌弘選手がビッグセーブで防ぐ。さらにこぼれ球をひろった森村昴太選手のシュートをしっかりキャッチする。ようやく愛媛はひと息つくことができた。

 自陣からすこしずつ前進していこうとする愛媛に、町田ゼルビアは高い位置からアプローチをかけていった。2トップ+サイドハーフで愛媛の3バックに人数をあわせることで、中央ではなくウイングバックへパスを誘導する。狙いどおりパスがでればサイドバックがでていってボールを奪おうとする。これがはまって町田ゼルビアは高い位置でスローインやフリーキックを得られていた。
 だが、15分あたりから愛媛の狙いとする攻撃がではじめる。
 きっかけはおそらく、茂木力也選手から西田剛選手にでたロングパス。西田選手がボールをおさめているあいだに、味方がミドルゾーンまであがっていくことができた。フィールドの4分の1ほどの範囲に陣形を縮める町田ゼルビア。選手間の距離が近くなるため、プレッシングの連動とこぼれ球の回収がしやすくなり、相手陣内でのプレーが連続しやすい。なので愛媛は横幅が制限される自陣のサイドエリアから、中盤中央までボールを前進させたい。そこまでボールが運べれば一転、狙われていたウイングバックが攻撃のキーポイントへとかわる。
 町田ゼルビアの[4-4-2]に愛媛の[3-4-2-1]をかみ合わせると、ウイングバックが空きやすくなる。狭いエリアにおしこまれるとサイドバックに寄せられて球ぎわをつくられてしまうが、フィールドを広くつかえれば寄せられるまでに時間が生まれるため、よゆうをもってプレーができるようになる。愛媛は飛びだしてくるサイドバックの背後を突くことでボールを前進させていた。そのさい、下川選手がだしていた、タッチラインに並行するパスが効果的だった。シャドーの禹相皓選手が外へ流れてパスを受けるため、センターバックの深津康太選手も中央から外へでていくことになるのだ。するともうひとりのセンターバック小林友希選手との距離がひらく。小林選手のそばに西田選手が位置どれば、より小林選手は深津選手のサポートをしにくくなる。そして空いたセンターバック間に近藤貴司選手が走りこんで裏へ抜けだす/抜けだそうとする形がなんどもくり返された。この形は逆サイドでもみられ、そのさいにも裏へ走っていくのは近藤選手だった。近藤選手、ほんとうによく走ってくれる。

 24分に愛媛が先制する。
 町田ゼルビア陣内深くで得たスローイン。まずはボールを後方までもどす。ハーフウェイライン付近でボールをもった山﨑浩介選手が鋭い縦パスを入れれば、野澤選手はワンタッチで中央へ斜めのパス。西田選手と禹選手が反応。深津選手を背負いながらも西田選手がワンタッチで下げると、手前にまわりこんでいた禹選手もワンタッチでサイドへはたく。フリーで受けた下川選手はワンフェイントで相手をかわす。縦へ突破して入れたグラウンダーのクロスに、ゴールエリアへ飛びこむ近藤選手があわせた。窄狭なポストとキーパーの指先のあいだへボールは吸いこまれていった。
 ニアゾーンあたりからゴールエリアへのクロスで得点する――愛媛が挑みつづけている形で奪ったゴールだった。

 先制されてから、町田ゼルビアはウイングバックへの対応の仕方をかえたようだった。愛媛ウイングバックへパスがでたとき、球ぎわをつくれなさそうであればサイドバックは寄せにいかない。最終ラインに残って、シャドーの選手が走りこめる空間を生ませないようにした。愛媛がサイドから裏を狙うときの選択肢が、西田選手対2センターバックのところしかなくなり、決定機をつくるまでの場面は減っていった。
 代わりに愛媛の攻撃で効果的だったのが、山﨑選手や茂木選手からでる、サイドの高い位置へ張っている長沼洋一選手へのロングパス。左サイドで攻撃が詰まっても、右で長沼選手がドリブル突破しチャンスをつくる場面がみられるようになっていった。
 ところで、前々からおもっていたのだけれど、長沼選手のボールをもったときの姿勢がとてもいい。あれだけ上体が起きていれば視野を確保できそうだし、対峙する相手も仕掛ける方向がわかりにくそうでもある。
 閑話休題。
 いったんは高い位置からのアプローチを控えた町田ゼルビアだったが、30分過ぎからふたたび仕掛けていく。愛媛陣内でボール奪取に成功するようになり、中島選手がロングシュートを狙う場面もあった。
 また町田ゼルビアが後方でボールをもつ時間もふえていった。が、愛媛1トップ2シャドーが走りまわってアプローチへいき、ロングボールを蹴らせることもおおかった。愛媛はハイボールへの対応が安定していたほか、2ライン間へ縦パスを入れられても、受け手のところで潰せていたので、無失点のまま前半を終えられた。

 ハーフタイムに町田ゼルビアは選手交代をおこなう。山内寛史選手に代わって岡田優希選手が出場。岡田選手には前回対戦でアシストを決められているほか、サイドの突破で存在感をみせつけられていた。町田ゼルビアはより前(またはディフェンスの裏)への意識をたかめる。しかしそれは愛媛も同じだった。後半たちあがりはロングボールを蹴りあい、たがいのコートをいったりきたりする展開になった。
 60分を過ぎたあたりから、愛媛が自陣でパスをつなぐようになる。町田ゼルビアを前がかりにさせて、味方にフリーマンを生みだしたい。しかしなんどかビルドアップにミスがでてピンチを迎えることになった。
 しだいに球ぎわの場面がふえ、ファウルで時間がとまるようになっていった。すると68分、町田ゼルビアは森村選手に代わってドリアン・バブンスキー選手を送りだした。
 セットプレーがふえるなか、ゴール前でバブンスキー選手の高さを活かされつづけたら、ホームチームの雰囲気は怪しくなりかねない。が、しかし、セットプレーから得点を奪ったのは愛媛だった。
 73分。コーナーキックの流れから、茂木選手がペナルティーアーク付近でボールをもつ。すぐに下川選手がニアゾーンを指さしてペナルティエリア内へ進入。これによって彼のマークにつく奥山政幸選手を下げさせ、茂木選手が前進できる空間をつくりだす。茂木選手がニアゾーンへむかってドリブルすることで、奥山選手も下川選手だけをみるわけにいかなくなる。なにしろボールをもった相手がむかってくるのだから。寄せきれないため、下川選手へパスがでても球ぎわをつくるまでにはいたらず。下川選手がボールの勢いを抑えるようなワンタッチパスを披露すれば、パス&ゴーでニアゾーンに進入した茂木選手もワンタッチでクロスをあげて見事。田中裕人選手がニア側へ飛びこんだことでゴール前中央が空き、そこへはいってきたのは山﨑選手。ファーサイドにヘディングで流しこみ2-0とした。

 2点差となったことで愛媛は自陣に引いてかまえるようになる。攻撃にかける人数を減らして町田ゼルビアのカウンターにそなえるので、ロングボールの対応も前半同様おちついておこなえていた。おしこまれたさいに、2ライン間を突かれてヒヤリとする場面もあったが、からだをはって決定機をつくらせない。スコアは動かず、愛媛は5試合ぶりの勝利、そして26節以来となるクリーンシートを達成した。

 FC町田ゼルビアの、サイドを着実に前進し、高い位置からボールを奪っていくスタイルはかわらず脅威だった。前半たちあがりの大チャンスをものにされていたら、いったいどうなっていたことか。
 愛媛FCとしては、久しぶりの先発出場となった西田選手と禹選手、そして復帰戦となった下川選手が存在感を示してくれてなによりだった。ここ数試合にくらべて決定機の数がふえているのも好材料。町田ゼルビアに勝った勢いに乗って、次節も同じく苦手とする水戸ホーリーホックに勝利するところがみたい。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
 

 試合結果
 愛媛FC 2-0 FC町田ゼルビア @ニンジニアスタジアム

 得点者
  愛媛:近藤貴司、24分 山﨑浩介、73分
  町田: