J2-第33節 柏レイソル対愛媛FC 2019.09.22(日)感想

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 愛媛FCが33節で対するは柏レイソル。文句なしに首位をひた走っている。だがここのところ3試合勝利がないという。勝利に飢えているチームのホームで、しかも日立台(とはもう呼ばない?)で対戦するというのはなかなかスリリングだ。
 J2第33節、柏レイソル対愛媛FCの試合をざっくりとふりかえっていく。

 キックオフから愛媛は右サイド深くへロングボールを蹴りこみ、あなたたちの陣地でプレーしますよと柏に宣言する。なので柏がゴールキックからつないでくると、さっそくフォアチェックをかけにいっていた。だが柏は愛媛のプレッシングをかいくぐり、オルンガ選手の抜けだしでゴールキーパーとの1対1をあっさりつくる。ここはGK岡本昌弘選手が防いでみせた。
 愛媛のフォアチェックの仕方は、センターバックには藤本佳希選手がいき、サイドバックにはインサイドハーフ(神谷優太選手と近藤貴司選手)がでていくというものだった。セントラルハーフにはディフェンシブハーフがついていくのだけれど、そうすると中盤が空くことになってしまう。なのでついていったセントラルハーフにパスがでないとわかれば、藤本選手にマークを受けわたして中盤へ下がることにしていた。藤本選手とマークの受けわたしができるところまで出ていっていた、ともいえる。
 サイドバックまでパスがでたら、寄せていくのはウイングバック。ということで早々の3分、マテウス・サヴィオ選手がパスを受けたところを長沼洋一選手ががつんと寄せにいった。この接触でサヴィオ選手は負傷し、7分に交代を余儀なくされる。
 代わって出場したのがジュニオール・サントス選手。どちらで呼んでも日本で名を馳せた名プレーヤーをおもいださせる。サントス選手は前線にはいったようにみえ、代わりに江坂任選手が左サイドへ移ったようにみえる。しかも陣形が[4-4-2]から[3-4-3]になっているようにもみえた。
 どうやら柏は、愛媛が自分たちの陣内深くからボールをつなごうとするとき、マンツーマンぎみにしてビルドアップを防ごうとするつもりのようだった。選手の質で間違いなく優位にたてるので、球ぎわで勝負! ということなのかもしれない。陣形は右サイドの選手(クリスティアーノ選手と瀬川祐輔選手)が1列ずつ上がることで変化させていた。ただ、前線3人での規制がかからないとみると、すぐに瀬川選手は最終ラインへ戻ることになっていた。
 そう。愛媛の最終ラインにはボールを運べる技術のある選手たちがそろっているので、柏相手でもあたりまえのようにビルドアップができていた。
 8分には運ぶドリブルをまじえた最終ラインでのパス回しから、システムの噛みあわせ上フリーになりやすいウイングバックの下川陽太選手までボールをとどけてみせる。まさか放置するわけにもいかない柏は、瀬川選手が最終ラインから飛びだして寄せにいく。となると彼の背後、柏の右サイドにおおきな空間ができるようになる。神谷選手がすかさずそこを突いて下川選手からのパスを引きだし、シュートまでもっていった。愛媛は前半、ウイングバックへ寄せにくるサイドバックの裏を突く形でなんどもチャンスをつくっていた。

02_愛媛のチャンネル攻略

 愛媛がミドルゾーンまでボールを運べば、柏も[4-4-2]のブロックをつくるようになる。となれば最後方で3対2の状態でビルドアップすることができるので、柏の1-2列めのあいだにディフェンシブハーフふたり(野澤英之選手と田中裕人選手)が位置どれる。このふたりが2トップを中央にひきつけることで、柏のサイドハーフに過多な労を強いらせていた。
 2トップでの規制が効かないと、愛媛の左右のセンターバックがボールをもったときにサイドハーフが寄せにいかなければならない。すると飛びだすサイドハーフにあわせてブロックもスライドするため、逆サイドのウイングバックがよりフリーになりやすい。愛媛は柏のいびつな1-2列めを経由してサイドチェンジを繰りだせていた。ただシュートまではいけないことがおおかった。サイドを突破するけれどクロスは防がれてしまうみたいな。そして柏がボールをもつと、愛媛はちょっと奪えそうになかった。

02.1_愛媛のビルドアップ

 この試合、愛媛はインターセプトしたり球ぎわで勝利したりという能動的な形でボールを奪う場面がほとんどみられなかった。そこはやはり柏レイソル、おそるべし。両チームともボールをもてばチャンス、ボールをもたなければおしこまれるという試合展開は、ちょっとテレビゲームみたいだった。
 21分あたりから柏はふたたび変化をみせはじめる。サントス選手が左サイドハーフへ移り、江坂選手がトップ下のような位置へ。以降、サントス選手は長沼選手の近くでプレーするようになる。時間とともに最終ラインまで下がって5バックになることもあった。同じことを江坂選手がこなしてもよさそうな気もするが、彼のほうが2ライン間を動きまわってパスを引きだしたり、中央で味方をサポートしたりすることがうまいのかもしれない。
 サントス選手が下がることで茂木選手が高い位置へでていけるようになっていた。さらにはGK岡本選手もビルドアップに参加できた。とはいえなかなか決定機をつくれない。そうこうしていると、43分にはサントス選手からのスルーパスでオルンガ選手があっさりと裏へ抜けだしてゴールキーパーとの1対1をつくった。ここもGK岡本選手が防いでみせた。書いたおぼえのある文章だ。
 攻めあぐねていた愛媛だが、ロスタイムに先制点を奪う。柏陣内深くでのスローインからだった。近藤選手が裏抜けの動きで相手ディフェンダーをひとり引きつけて中央を空けてみせると、スローインを受けた長沼選手がすぐにそのコースへドリブルで進入。さらにディフェンダーひとりが飛びだした瞬間に藤本選手へスルーパスをだしてみせる。藤本選手がすべりこみながらのシュートを決めて0-1とする。
 前回対戦のいやな記憶がよみがえりかねない柏。そんなことはなかったのだろう。40分すぎあたりから愛媛をおしこみはじめ、冷徹に崩そうとしていた。柏は噛みあわせ上フリーになりやすいサイドバックを活かせるようになっていた。愛媛陣内で瀬川選手と古賀太陽選手のしかけていく姿がしきりと目撃されている。大外で空いている選手を活かせるようになれば、サイドチェンジを繰り返して相手のブロックをゆさぶれるようにもなる。終了間際には瀬川選手のサイドで崩してから上がったクロスにオルンガ選手のヘディングが炸裂。GK岡本選手が再三の好セーブをみせるもこぼれ球を江坂選手が詰めてシュート。枠をとらえることなく0-1のまま前半を終えるも、柏サポーターには嬉々とした歯がゆさを、愛媛サポーターには薄ら寒い安堵をおぼえさせる折り返しとなった。

 後半から柏は小林祐介選手をアンカーにした[4-1-2-3]にシステムを変更する。これによって前半手にしていた優位をがっちりと掴んだようす。
 攻撃では内へ絞るサイドハーフとライン間を出入りするインサイドハーフによって、愛媛のインサイドハーフとウイングバックが困ることになっていた。すなわちサイドバックへ寄せにいきづらいという困難だ。神谷選手や近藤選手にすれば、すぐ近くにいる江坂選手や三原雅俊選手を無視することができないし、長沼選手や下川選手は目のまえをちらつくサントス選手やクリスティアーノ選手を放ってはおけない。
 また柏が2センターバックとアンカーの三角形でビルドアップするとき、愛媛のファーストディフェンダーは藤本選手ひとりである。そのため彼らは規制を受けることなくボールを運ぶこともできていた。彼らが中央でボールを運んだり前をむいたりすることで、愛媛の2列めの選手たちも中央をしめるほかなく、よりいっそう柏のサイドバックには時間と空間があたえられることになっていた。

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 とはいえ、こういった優位さは前半からみられていた。となると、良くなったのは攻撃よりも守備だったのだろう。試合後のコメントで小林選手が、「シャドーがボランチを2人で見ようとなって、マークがハッキリすると積極的に守備に行けるので、そこで前半との違いが出たと思います」と述べている。Jリーグ公式サイトの小林選手と染谷悠太選手のコメントを熟読玩味すればこの試合の肝は充分理解できそうだった。
 小林選手曰くの「マークがハッキリ」して「積極的に守備に行け」たゆえなのか、愛媛はボールをもっても前方にフリーの味方をみつけられなくなり、苦しまぎれに藤本選手へロングボールをだしても、センターバックのつよい寄せにあって収めることがむずかしくマイボールにできない。おしこまれているのだからこぼれ球の回収もままならず、柏の攻撃ばかり継起していく感じだった。
 そんなこんなで60分にコーナーキックから柏が同点に追いつく。染谷選手が気迫でおしこんだ同点弾だった。彼には京都サンガF.C.所属時にも決められた気がするけれど、記憶違いだろうか?

 ついに追いつかれてしまった愛媛。すぐさま手をうつ。63分に野澤選手に代わって山瀬功治選手が、68分には藤本選手に代わって有田光希選手が出場する。中盤で時間をつくったり前をむいたりパスコースに顔をだしたりできる山瀬選手で落ち着きをとりもどそうという狙いと、前線でボールを収めて前進していく起点を有田選手につくってもらおうという狙いだったと想像する。とても理に適っているとおもう。だがうまくいかない。なんでですか⁉
 やはりおしこまれてる時間が長いため、流れのなかでボールをもててもビルドアップの準備ができておらず、柏のフォアチェックのまえにロングボールを蹴らされてしまう状態にかわりはなく、ということはとうぜん有田選手も2センターバックとアンカーの選手と競りあわなければならない状況にもかわりなかった。ちなみに59分に小林選手に代わって大谷秀和選手が出場してからは、ふたたび三原選手が1列下がった[4-4-2]ぎみになっていたようにもみえたけれど、だからどうなのかというのはわからなかった。
 さて、にっちもさっちも行かないときは相手のちょっとしたミス(それもミスとも呼べない些細な出来事)を味方につけなければならない。76分のゴールキックで柏陣内でのスローインを得ると、久しぶりに愛媛の躍動する姿がみえた。相手をおしこんだことで、自分たちの求める位置と距離感を得られるため、球ぎわをつくらせないパス回しが可能となり、右サイドから左サイドへボールを展開することに成功。下川選手がボックス内へ進入し、いちばん深いところからクロスをあげるが、残念ながら有田選手にはあわず。そして柏ボールになるとやはりおしこまれてしまう。
 そうしたチャンスとは呼べないきっかけをつかんで柏陣内へ攻めこむようになりはじめる愛媛だったが、決勝点をとったのは柏のほうだった。江坂選手のゴールはすばらしかった。ファーストタッチのコントロールも、バックステップも、極めつけのゴール隅へのシュートも。GK岡本選手でもさすがにとめられない。なんというか、みたかこれがJ2だといいたくなるようなゴールだった。
 逆転された愛媛。83分には田中選手に代わって禹相皓選手が出場する。彼が気の利いた場所に顔をだしてボールを前進させる啓示をあたえ、ゴールに迫る場面がふえていったものの力およばず。2-1で柏は4試合ぶりの勝利、愛媛はめまいをおぼえる4連敗となってしまった。

 ハイライトは柏レイソル最終ラインでのパスミスを近藤選手が奪い、GK中村航輔選手と1対1になった場面。GK中村選手がアビスパ福岡に在籍していたときも、近藤選手との1対1があったのをおもいだす。そのときはGK中村選手が勝利していた。今回もGK中村選手に軍配が上がったので、近藤選手にはいずれ3度めの正直で彼からゴールを奪ってほしい。
 4連敗はつらいけれど、どの試合も接戦で結果は紙一重だった。チームの調子がわるいわけでもなし。期待は次節へ持ち越しだ。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

 試合結果
 柏レイソル 2-1 愛媛FC @三協フロンティア柏スタジアム

 得点者
  柏 :染谷悠太、60分 江坂任、80分
  愛媛:藤本佳希、45+2分