J2-第14節 愛媛FC 対 大宮アルディージャ 2020.08.22(土)感想

 5連戦第1ラウンド最終戦は大宮アルディージャ。ベリーハードモード。
 愛媛FCのスタメンは、GK岡本昌弘、DF茂木力也、山﨑浩介、前野貴徳、MF清川流石、渡邊一仁、川村拓夢、三原秀真、森谷賢太郎、忽那喬司、FW丹羽詩温の[3―4―2―1]。三原選手が左ウイングバックにはいり、清川選手が右にはいった。
 大宮アルディージャのスタメンは、GKフィリップ・クリャイッチ、DF渡部大輔、西村慧祐、河本裕之、河面旺成、MF近藤貴司、大山啓輔、小島幹敏、奥抜侃志、FW戸島章、黒川淳史。まさかのJ2、2年めの大宮。序盤はさすがの強さをみせていていたが、ここ4試合勝利がなく調子がわるい。いちはやく勝ちなしの状況を抜けたいところ。前節ギラヴァンツ北九州戦の後半から[4―4―2]へ変更したもようで、今節はそのフォーメーションを引き継ぐ。
 J2第14節、愛媛FC対大宮アルディージャの試合をざっくりとふりかえっていく。

 大宮は立ち上がりから攻撃的なプレッシングをみせ、対する愛媛も高い位置からプレッシングをかけていった。両チームとも前へでていく意識がつよく、見ていてせわしなかった。
 そんななか7分に愛媛がしれっと大宮のプレッシングをかいくぐってゴール前に迫った。キーパーからつないで大宮の1―2列めを間延びさせると、しっかりそこをつかってからサイドへ展開。このときボランチをひとり引きずりだすことに成功している。左サイドを三原選手がドリブルであがっていき、ボランチ不在でがら空きとなったセンターバックの前へパス。森谷選手がフリーでミドルシュートを打った。森谷選手がフリーになっていたのは三原選手が山瀬選手のサポートを受けつつドリブルで前進したことによる。これで近藤選手だけでなくもうひとりのボランチも引きつけたので中央が空くことになった。大宮の高い位置からのプレッシングをかいくぐるすばらしい攻撃だった。
 直後の8分に愛媛が先制。連動したプレッシングでえたスローインから森谷選手が1―2列めでパスを受けると、相手選手同士のあいだを抜くロブパスを丹羽選手へ供給。丹羽選手が胸トラップからハーフボレーで無回転ミドルシュートをきめた。
 スコアが動いたあとの挙動があやしい直近の愛媛。得点後の5分間は集中しなければならないというが6分後に追いつかれてしまう。この間に近藤選手が負傷して小野雅史選手と交代している。愛媛ファンとしては近藤選手の負傷につづいての失点と泣きっ面に蜂だった。
 愛媛としてやるせないのは、先制して守備の仕方をかえたところが失点につながってしまったこと。
 丹羽選手が中央にかまえ、森谷選手が河本選手へよせにいく形を愛媛はとっていた。中央は丹羽選手とボランチでふさいでいるので、自然と大宮のパスはサイドバックへむかう。そこをウイングバックの清川選手が勢いよくよせていく。奪えればめっけものだか、狙いはバックパスさせること。このバックパスにあわせて前から人をつかまえにいってボールを奪いきってしまおうとしていた。先制点はこのプレッシングでえたスローインからだった。だが、このやりかたを先制後はやめている。センターバックへ規制をかけにいくのをやめ、相手陣内のセンターサークル頂点付近から[5―4―1]のブロックを敷いた。そのためボールをもてるようになった河本選手にドリブルで運ばれてからロングパスをだされてしまう。このとき戸島選手の裏抜けの動きによって愛媛最終ラインが下げさせられ、2列めとの距離がじゃっかんひらいてしまう。愛媛は10メートル間隔の3ライン(全体が20メートルていど)でブロックを敷いていたが、このとき2列めと3列めのあいだは15メートルほどになっていた。その5メートル広がったなかで、ライン間にはいりこんでいた小島選手に遅れをとることになってしまった。おまけに戸島選手の狭いなかでもシュートまでもっていける技術もすばらしすぎた。
 相手のロングボールのこぼれ球をひろえなかったのがつらい。これはこの場面だけにかぎらずこれまでの試合でも再三みられている光景だった。京都サンガF.C.戦のピーター・ウタカ選手の1点めなんかがそう。前線の規制がかからないから最終ラインを下げることになるのか、それともたんに最終ラインだけが下がりすぎてしまうからなのか。もしくは単純に、一歩めの反応が遅いのか。

 同点に追いついてから大宮も守備のやりかたをかえている。それまでは2トップ+ボールサイドのサイドハーフの3人で前から規制をかけていたが、[4―4―2]のブロックを敷くようになる。1―2列めは2トップが縦関係になって使わせない形にした。これによってボランチが飛びだしていかなくてすむようになった。
 また攻撃でも変化がみられた。小野選手の出場で右サイドハーフにうつっていた小島選手がセントラルハーフのように中央へ位置するようになり、空いた右サイドを渡部選手が高くでていくようになる。また、大山選手が2センターバックのあいだにおりるようにもなり、丹羽選手の周辺で圧倒的な数的優位をつくっていた。なのであたりまえのようにハーフウェイライン付近までボールを運び、そこから戸島選手の裏抜けを狙ったロングボールを入れていった。
 これはたまらないということで、ふたたび森谷選手が河本選手へよせるようになる。そうして河面選手へパスをださせて清川選手がアプローチへいく。この形でふたたび大宮のビルドアップを苦しめ、ゴール前に迫られる回数がぐっと減った。あわよくばカウンターで追加点をとりたかったが、かえってカウンターを返される場面もあった。とはいえ決定的なチャンスを両チームともそれ以上つくることなく前半を終えた。

 ハーフタイムで愛媛は選手交代をおこなう。三原選手に代わって長沼洋一選手が出場。そのまま左ウイングバックにはいった。
 後半立ち上がりの愛媛はいつもの愛媛だった。つまり、キーパーからのビルドアップと高い位置でのプレッシング。大宮は黒川選手をトップ下ぎみに位置させて愛媛ボランチを見させ、戸島選手と両サイドハーフの3人で3バックに同数のプレッシングをかけた。ウイングバックにはサイドバックがでていくので一見すると愛媛にはパスの出しどころがない。だが、インサイドハーフの選手、おもに忽那選手が相手ボランチの脇におりてくることで手詰まりを回避していた。このボランチの脇にインサイドハーフがおりてくる動きは、忽那選手と代わって出場することになる山瀬功治選手もおこなっていた。
 なかなか主導権を握れない大宮。しかし51分に清川選手が負傷してピッチ外へでると、その時間帯でしっかりとボールを握るようになる。愛媛は[5―3―1]のブロックでしのごうとするが、どうしても2列めの脇が空いてしまうし、前線が規制をかけにいくこともできない。愛媛としては茂木選手が「慌てるな、持たせろ」と声を張っていたように、ブロックの外でボールを回させるようにしたかった。だがしたたかに大宮は隙をついて決定機をつくった。黒川選手の裏へ抜ける動きで前野選手を引っ張って山﨑選手との距離をあけさせると、そこへ戸島選手も裏抜け。大山選手から戸島選手へ縦パスがはいり、落としたボールを黒川選手がひろってペナルティーエリア内へ。前野選手に対応されるも、こぼれ球を中央でひろった小野選手がフリーでシュート。愛媛絶体絶命だったが茂木選手がはじきだして難を逃れた。

 56分に愛媛が動く。渡邊一仁選手に代わって横谷繁選手、忽那選手に代わって山瀬選手が出場する。61分には足をつった丹羽選手に代わって有田光希選手が出場する。このあたりの時間帯、大宮がふたたび高い位置からのプレッシングをおこない、愛媛は中盤の数的優位を使っての前進を試みる攻防が展開され、すわ中盤を突破するか防ぐかの鍔迫りあいとなった。
 68分に大宮が選手交代をおこなう。戸島選手に代わって富山貴光選手が、奥抜選手に代わって髙田颯也選手が出場する。
 飲水タイム後、大宮は愛媛ゴール前に迫るチャンスをつくるようになる。ただ、自陣からビルドアップしなければならないときはハーフウェイライン付近までしか前進できていなかった。大宮は愛媛の1―2列めを使えていなかったようにみえる。使いなさいよとばかりに黒川選手が1―2列めにおりてきたのが78分。やはりロングボールを蹴ることになるのだが、1列下がった効果が守備面であらわれることになる。愛媛がボールを回収し、ゆっくり自陣からビルドアップを開始するが、そこへ後方から猛然と黒川選手が戻ってきて不意を突き、キーパーまでパスを戻させる。さらに黒川選手はキーパーまで追っていくと、GK岡本選手がうっかりボールを失ってしまう。黒川選手からパスを受けた髙田選手がミドルシュートを打ちこむが、山﨑選手がヘディングでクリアーして間一髪防いだ。大宮はこのあとたてつづけにチャンスをつくった。しかし得点は生まれなかった。

 山﨑選手のファインプレーで命拾いした愛媛。78分、清川選手に代わって田中裕人選手が出場。右センターバックにはいり、茂木選手がウイングバックへ1列上がった。
 なにがなんでも勝利がほしい愛媛。右サイドではなくやはり左サイドから前進をつづける。山瀬選手がしっかり相手選手たちの中間に顔をだしてボールの前進を助けていた。ラスト10分は大宮陣内深くまで進入できていることもあって、ボールロスト後すぐさまプレッシングへいく姿勢もみせていた。
 84分には大宮が選手交代。西村選手に代わって畑尾大翔選手、大山選手に代わって翁長聖選手が出場する。愛媛がサイドへボールを誘導させる気ならそのサイドをぶち抜いてやろうという大宮。翁長選手が右サイドハーフにはいれば、左サイドバックの河面選手も最前線まで上がっての猛攻。86分には髙田選手のクロス炸裂。富山選手が触れていれば1点だった。
 結末は意外な形でつく。山瀬選手のボール奪取から長沼選手がサイドをドリブル突破。さらにゴールラインぎわを中央へ切りこみペナルティーエリア内へはいると、倒されてPKを獲得した。キッカーは横谷選手。左上に蹴りこんだボールはGKクリャイッチ選手に触れられながらもゴールイン。直後に試合終了となった。

 まさかの5戦勝ちなしとなってしまった大宮アルディージャ。順位をふたつ落として9位になってしまった。終了間際に横谷選手にPKを決められるのは、昨季のヴァンフォーレ甲府戦でもあったことだとか。
 大宮は夏の移籍で横浜FCからイバ選手を仲間にくわえた。ただ、その後も怪我人のおおさに悩まされ、完全復調とはいかずに苦しんでいる。近藤選手は8月末に全治6~8週間の怪我だと発表された。しっかり治してもらって、12月にある38節での再戦でも対戦したい。
 11試合ぶりの勝利となった愛媛FC。からくもベリーハードモードをクリアー。順位をひとつ上げて20位とした。ひとまず勝利することができてほっとし、やはり勝つってすばらしいと万感胸に迫る試合となった。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。またね。

 試合結果
 愛媛FC 2―1 大宮アルディージャ @ニンジニアスタジアム

 得点者
  愛媛:丹羽詩温、8分 横谷繁、90+7分
  大宮:戸島章、14分