第2回「リーダーシップとマネジメント」
人間力はあるか?
医療組織のリーダーには、細部に配慮しつつも全体を把握する力と、将来まで見通せる広い視野が必要です。危機察知能力とデリケートな気質を持ちながらも、スタッフに安心して業務に集中してもらうため、自らの繊細さを前面に出さない技術も大切。医療は感情のある人間相手の仕事ですから、ストレスが非常に高い。本来の仕事以外でスタッフに余計な負荷をかけないよう、リーダーは注意しなくてはなりません。感情コントロールも当然。命にかかわる現場で、すぐ冷静さを失う人はリーダーにも医療にも向いていないですね。
リーダーシップは本来、医療組織の全員が持つべきもの。自分の仕事に責任を持つ「個」のレベルから、部署などグループのリーダー、やがては組織のトップレベルまでと段階はいろいろですが、真のリーダーに必要なのは人間力。見定めたゴールに向かって問題解決をすべく考え抜いて実行し、事実を事実として認め、結果の責任を取る。要は「人のせいにしない」ってことです。そして部下の何倍も働ける心身の資質。組織内の誰よりも働くことができないならトップの資格はありません。
医師はもともと優秀な人たちですから、リーダーシップを潜在能力として持っている。ただ既存の医療組織内で発揮できることはほとんどないし、仕事はトップと上司で決まるので、そこに恵まれなければ力を発揮することなどできません。僕は基本的に、信頼しているスタッフのリーダーシップに任せるタイプ。スタッフが忙しくとも楽しく仕事をしていれば自然に医療の質が上がり経営は黒字になる。地方であっても自然と人が集まるんですよ。今までのMBVを見ていただければ分かることです。
マネジメントの根幹は一生懸命働く人の雇用を守ること、そしてハッピーにすること。医師や医療スタッフが幸せでなくて、どうやって患者さんを幸せにできるんですか? 公私共に安定しているからこそ心身に余裕や余白が生まれ、好奇心を持って新しいことにチャレンジしようという気持ちになれる。挑戦の結果で得た気付きや学びが仕事に生きて、ますます幸せになり余裕と余白が新たに生まれ、次の興味が湧く。プラスのスパイラルで少しずつ人も組織も成長できるんです。
社風に合ったメンバーをリクルートすることも肝心です。うちは全員がオープンマインドで明るく、スピード感を持って物事に対処できる。機動力が高く変化に強いメンバーばかりです。そういう人に入職してもらっていますし、社風に合わない人は自然淘汰されていく。創業当初から、問題は小さなうちに見つけ出し、現場ですぐ対応するよう教えてきたので、今では「カイゼン文化」が根付いています。また、組織が大きくなってもむやみに人を増やさない。少数精鋭を徹底しています。
リーダーシップとマネジメントの力は、若いうちから身に付けた方がいい。MBVの概念を若いうちに理解できた医師は大成功しますよ。旧来の伝統通りの決められたレールに乗って10年、20年と過ごすうちに柔軟さや行動力、向上心もなくなってしまうので、MBVの存在に先見性のある若い医師が気付くことを願っています。現在も研修や見学に来てくれる若い医師たちがいますが、数年常勤してMBVの医療と経営の全体像を学んでほしいですね。
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