「防衛力強化を支持する世論」は、どのような方法で「防衛力」を強化できるかについての情報を政府やメディアから十分に与えられているだろうか。
「(拡大する)防衛力強化を支持する世論」(読売新聞世論調査部、深谷浩隆氏)という表現に出会ったが、どのような方法で「防衛力」を強化できるかについての情報を私たちは、政府やメディアから十分に与えられているだろうか。
「防衛費」を増やし、長距離ミサイルを配備すれば、国民の生命と財産を守ることができると政府やメディアによって信じさせられていないだろうか。
専門家や政党関係者は、防衛省や軍事産業関係者の思惑に左右されないで政策を議論することができるだろうか。
戦争となって、長距離ミサイルを相互に発射し合う状況になれば、たとえ首相官邸や軍事基地を守ることはできても、住民の生命や財産に甚大な被害が生じる。
各地の原子力発電所は、ミサイルで守ることができるだろうか。メルトダウンした原子炉はいまだに廃炉のめどもたっていない。廃炉できない可能性も指摘されている。
「今までに実施された弾道ミサイルを想定した住民避難訓練における様々な場面での避難行動の例」というのが「内閣官房国民保護ポータルサイト」というところにあった。これでいいということなのだろうか、それとも、これではダメだということなのだろうか。
「保守政党の自民や維新との対立軸として『防衛力強化反対』を掲げれば、リベラル層の支持固めの効果が期待できる反面、無党派層に支持を広げることは難しくなる」(読売新聞世論調査部、深谷浩隆氏)というが、「保守」と「リベラル」という2分法は理念的にも、現実的にも曖昧であり、軍事力増強についての考え方とどの程度の関係があるのだろうか。
理念的な面で言えば、自民党の党名の英訳に含まれる「リベラル」という言葉はそもそも何を意味しているのだろうか。石橋湛山首相のことも調べてみてほしい。
敗戦までの戦前の、明治憲法を含む国家体制を肯定し賛美する人ばかりではなかったはずだ。
また、深谷氏が、もしも、軍事力増強を強調する政治的立場を「保守」と定義しているのであればそれは不十分である。
深谷氏は、読売新聞社で世論調査に携わる人として、世論を客観的に見つめているという立場を示すようにしていることがわかるが、このような2分法は、世論を誘導し、「保守政党」のイメージ戦略に寄与している。
本当に「防衛」ということであれば、「政治的イデオロギー」(?)とは無関係のはずである。(経済的イデオロギーや文化的イデオロギーとも。)
政府やマスメディアは、軍備拡張競争が国家間の緊張を高め、戦争勃発のリスクを高めるという可能性についてはとりあげないのだろうか。
長距離ミサイルの配備については、それで「防衛力」が強化できると思う国民が多数派であるというわけではないようだ。「読売世論調査」でも、「外国からミサイル攻撃を受ける前に、相手国のミサイル発射基地などを破壊する『敵基地攻撃能力』を日本が持つことについては、『賛成』『反対』が各46%と二分した」と説明されている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?