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わたしの介護の仕事の話

夕食前のリビング。

テレビでは殺人事件のニュースが流れている。

それを見た90歳の入居者が「誰が、だれがこんなひどいことを、、、」としくしくと泣いている。

それは現実に溶け込んでいく。

そして隣に座っている100歳の入居者に「あなた、あなたが殺してしまったの、、、?」と涙目で訴えている。100歳の入居者は前を見ながら、「うんうん、そうそう。」と適当に相槌をうつ。

90歳の入居者は「やっぱりあなたが、、、」とざあざあと泣き出してしまった。100歳の入居者は「もしもし、かめよ~」と口ずさんでいる。

私はその様子を横目に夕食の支度をしながら思わず笑ってしまう。「殺人犯ここにおったんかい!!のんきに歌ってますけど!!」と心の中でツッコミながら、泣いている入居者のフォローに行く。

介護の仕事を始めて、半年が過ぎました。夜勤が始まりました。

大変なことが多いけど、給料もめちゃくちゃ下がったけど、できないこともたくさんたくさんあるけど、でも不思議なことにずっと楽しい。

介護って給料低くて大変そう、若いうちから介護なんて偉いねえ、早稲田出たのに介護の仕事なんてもったいないよ、なーんてね。親切に言ってくれるんですよ。

そんな私がどうしたらこの介護の仕事の楽しさを伝えられるか考えてたんですよ。でも私の楽しさって、介護の楽しさっていうか、入居者が素敵すぎておもしろすぎるっていう感じ。

「すがすがしい顔で歩いているといじめたくなる」と言っていた入居者が今じゃ「今日は一段と美人だな!」「できることは手伝うからね」と言ってくれること。

「あなたの名前は?」と聞かれて「片山です。」と答えたら「今こうして教えてもらっても明日には忘れてしまうの!!!!あーーーーーーーーーー!!!!」と泣き叫ばれて、切なくなってしまったこと。

家に帰る話ばかりをしてた入居者に「私はここにずっと居てもいいと思ったんです。」と言ってもらえたこと。

「私のこの先の人生は長くないんです。だから好きな人たちと過ごしたいんです。あなたは死ぬときどんな人と一緒にいたいですか?」と問い詰められたこと。

初めてのエンゼルケア(死後のケア、身体を拭いたり穴に綿をつめたりお化粧したり)をした方のご家族様から「最後まで丁寧なケアありがとうございました。」と言っていただけたこと。

あげればキリがないけど、怒られたり泣かれたり叩かれたり噛まれたり、でもどの入居者とも一緒に紡いできた毎日は大切でいろんなことを教えてくれます。

キラキラしたことばっかりじゃないです。

施設見学に来ていた人たちがリビングで入居者と楽しく話している裏で、廊下で放尿してしまった入居者の対応をしている時、ああどっちも私たちの仕事なんだよなあ、とぼんやり思ったり。

そうやって紡いでいく毎日を、自分の人生を少しでも大切に思ってくれたらいいなあって。

好きな人を最後まで大切にできるような、私は私の人生を大切に思えるような、大それたことを言うと、そんな社会をつくりたいと思うのです。

とにかく、私は今、介護の仕事楽しいですって話です。

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