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第8回舞台医学研究会

修学旅行ぶりの京都(経由)、奈良に行ってきた。
第8回舞台医学研究会というのを作年に千葉大の整形の医局見学に行った際に教えていただき、奈良で開催された。
吉田都さんも特別対談のためいらっしゃっていた。
(踊りで見るときよりもめちゃめちゃ近くで見れる!)

東京医大の関健先生の話では、ダンサーが怪我しやすい関節唇の位置、胸郭の形態が骨盤の使い方に影響が出ること、股関節の変形があると手術の治療成績が下がることなどをお話しされていた。

奈良医の辻本憲広先生は新国立のバレエダンサーにアンケートをとった結果を発表されていた。多くが痛みを抱えながら踊り続けいていて、医者ではなく整骨院などの治療場に通っている。一方で定期的な医者の健診等が必要であることを感じている。また、現在の時点でバレエの医療的なサポートとして、奈良医の新国立の関西公園のサポート、芸術家の薬箱、個人の活動であるとおっしゃっていた。健診に関してはPTの押本さんが片倉先生と行っている活動が当てはまるのではないかと思い聞いていた。

金塚先生はご自身のキャリアの歴史を話しつつ、フォーカルジストニア(よく知らない単語だった)、IELTSという英国の大学院に留学された際の英語の採用基準がなかなか満たされず、苦労したという話であった。英国のBAPAMという組織(?プロジェクト?)では、アーティストへの啓蒙と無料のクリニックの運営を行なっており、英国の医療制度においては画期的な仕組みであるということであった。このBAPAMでの診療項目などに加え金塚先生が生み出したSubjective Performance Scale(SPS)も加えて自己評価による受傷前と受傷後の違いを点数によって表現してもらっている。


経験者が有利であるかどうかの質問に対し、すでに自分が経験者であるからわからないということであった。これについて、私であればバレエ以外のスポーツを経験し14年のストイックなバレエ生活と比較できるくらいの対象を自分の中に持つことができたので、その視点から考えると、一番の違いはバレエなどの動きの名前という共通言語があるかどうかと、怪我した時の不安感や親との関係性などだと思う。共通言語があると、今練習している踊りや口頭での問診によって得られる情報も増えるし、「ではこの動きをしたときは?」などのクローズドクエスチョンを行うのも簡単だ。しかし、重要なことは目の前の患者の動きを正確に把握することであり、仮に共通言語を得たとしても、人によって各動きの完成度はピンキリの差がある。また、トウシューズひとつ取っても、同じトウシューズでも作り手が違ければ吐いた時の感覚の違いは生じるし、ダンサーが足の使い方を帰るだけで同じ靴でも合わなくなったりするのだ。よって、たとえ経験者であったとしても共通言語や自分の中にある感覚だけで患者の病態を把握することは不可能であり、PTさんにも協力を得ながら、患者の動きを医療用語(外転、外旋など)に変えていく作業が重要だと考える。

吉田都さんの対談では舞踊は舞踏を含む概念であるというお話しから始まり、イギリスと日本のダンサーを取り巻く医療の違いについて、英国ではオペラハウスだけで基本的なケアが解決するのに対し、日本は医者を探すところから始めなくではいけないというお話もされていた。ポワントを子供には履かせないことについて日本はお教室間の競争があるということや、中高年のバレエについては無理せず楽しくが基本であるとお話しされていた。しかし、以前押本さんから伺った話で、おばさまがたが無理してる自覚はなさそうだが男性ゲストと踊るようになったせいで男性ダンサーの肩の負傷が増えてきているとう話で、やはり教える側にも、教わる側にも一定の基準が必要だというのはわかるし、ガイドライン的なものはあっていいのかなと思った。

全体を通して、なぜPASMIやダンス医学研究会の人たちが協力しないのか不思議でたまらなかった。コロナのおかげでオンライン化が進んでいろんな人がとても有益な情報発信をしていると思う。それぞれが自分で主権を持って進めたいからなのかわからないけど、この分野は医学の分野だけの協力ではどうにもならないはず。
もっと個々の情報を大きな組織として共有していい時期になったと思う。

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