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【社会人/博士/体験記】第5回「知ってるもなにも、大のお気に入りだよ」

こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!

このマガジンは、
働きながら、「博士後期課程="社会人"博士」
を目指す体験談です。

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博士……後期課程?

さて、賢明なる読者のみなさまは既にお気づきかもしれませんが、
このnoteに何度か、
「博士後期課程」
という単語が出てきています。


指導教員となっていただく予定のX先生から、
「修士号を取ったら、博士後期課程に進むこともできますよ
と、お誘いを受けたとき、

いかなる時も冷静な鳩の瞳が
この時ばかりは爛と輝いた

というのは、既に書いた通りです。


しかしそのとき、場の空気に圧されて、

そもそも博士”後期”課程って……なんだ?

と思ったものの、尋ねる機会を逸してしまいました。


自宅に帰った鳩はそのとき、wikipediaで確認したと言います。

教育内容
日本では、一般的には、修士の学位や専門職学位を授与された後に、後期3年の博士課程に進学できるようになっている形態が多い。

wikipedia「大学院」より(2022年4月17日閲覧)


論文博士と課程博士

博士号にも、論文博士課程博士と呼ばれるものがあるそうです。

厚生労働省の官僚から大学教授へと転職された中野雅至さんの著書では、次のような解説がありました。

一つは論文博士。
自分が書いた学術書なり論文を大学に提出して博士号が授与されるというものだ。
この場合、大学院に全く通うことなく博士号を取れるが、大学院がこんなものを簡単に認めるとは思えない
何人か事例を聞いたことがあるが、
博士号をたまたま取らなかった偉い学者が何かの必要に迫られてとか、
超メジャーな学術出版社からのものすごいハードカバーの由緒正しい学術書を出しているとか、
どうもそんな人しか該当しないようだった。

(中略)

僕はあっさりと論文博士を諦めた。
そして、もう一つの「課程博士」という方法で博士号を取ろうと思った。

もう一つの、というよりも、これが世間一般で言う博士のことである。
要するに、大学院の入学試験を受けて博士課程に入学し、
修了(卒業)に必要な単位を取得して、
自分を指導してくれる教授の下で博士論文を書き上げて
これが教授会で博士論文として認められれば博士号を取得できる。
これに要する期間は標準的には3年である。

中野雅至(2011)『1勝100敗! あるキャリア官僚の転職記』(光文社)より


専攻分野について研究者としてうんたらかんたら

ふむふむ。
いわゆる修士号を取った後の、「博士号」取得の期間が、「博士後期課程」というわけですね。


もう少し調べてみましょう。
文部科学省のホームページを見てみれば、
さらなる違いがわかるかもしれません。


ふむふむ……


修士課程・博士前期課程
「広い視野に立って精深な学識を授け、
 専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門性が求められる
 職業を担うための卓越した能力を培うこと」
を目的としている。

博士後期課程・後期3年博士課程
「専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、
 又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及び
 その基礎となる豊かな学識を養うこと」
を目的としている。

文部科学省「大学院の審査の観点について」より(2022年4月17日閲覧)


なるほど、わからん。


わかんねえなあ


いや、違い、わかんないでしょ!

ほとんど見分けのつかない説明文は、まるでクローンヤクザのごとしです。


ワッザ!? クローンヤクザ? 鳩はロウバイしました


ここまで似ている説明文なら、
「修士課程」と「博士後期課程」の説明文を入れ替えてホームページに掲載しても、ほとんどの人は気づかないのではないでしょうか。


強いて言えば、
「研究者として自立して研究活動」
というところが目新しいでしょうか。


研究者として生きていくことを意識した一文が入っていることが、
シンプルですが、ゆえに重たい、のかもしれません。


単位取得満期退学

いろいろ調べるついでに、X先生がおっしゃっていた、

単位取得満期退学となって、学位が授与されないことが多かったんです」

という話についても見てみました。
とはいえ、例によってwikipediaですが……。


第二次世界大戦後、新制大学と共に成立した課程制大学院においては、博士号は研究者としての出発点に立ちうる能力を有する学位と位置付けられていたが、
理科系の大学院では早くから課程博士号を付与していたのに対し、
文科系、特に人文科学系の大学院では、博士号は、その分野の碩学泰斗の学者に、そのライフワークたる業績に対し、論文博士号として付与されるべきものとの共通理解が長く存続し、課程博士号はほとんど付与されなかった。例えば、東京大学人文科学研究科では、1990年(平成2年)までは課程博士号の授与件数が毎年0 - 2件であった

(中略)

しかし、課程博士の学位を受けることなく単位を取得して退学した者に対して、「単位取得満期退学」等の表記を求める慣行は、
研究者の海外交流にあたり、正式な博士号がないために、支障となった一方、
日本の大学の大学院が海外からの留学生を幅広く受け入れようとするに際し、博士号が取得しづらいという点で障壁となるとして、批判を浴びることとなり、1991年(平成3年)の設置基準大綱化以降は人文科学系の大学院においても課程博士号を付与するようになってきた。

wikipedia「単位取得満期退学」より(2022年4月17日閲覧)


ひどい慣行ですね……。

「とはいえ、現在は随分と博士号が出やすくなったので、狙い目だ」

というX先生の言葉も、より重たく感じられるというものです。

大学や学部によっては、いまでも状況の変わっていないかもしれませんが……。



さて、ここまで調べれば、もう安心。
鳩もすっかり、「博士”後期”課程」の専門家と言えます。

これから、大学院に関する話題を大学関係者とかわすときでも、

「博士後期課程」はごぞんじ?
「知ってるもなにも、大のお気に入りだよ」

と、優雅に返せること、間違いありません。

サラ・クーパー、ビジネスあるある研究会訳(2016)
『会議でスマートに見せる100の方法』(早川書房)
より


さて、次回は、

「入試までのざっくりとしたスケジュール」
「入試までは時間が空いた方がいいのか?」

という話に関して、つらつら書いてみました。↓↓↓

to be continued…


参考文献

・挿入マンガ①:南條範夫(原作)山口貴由(作画)『シグルイ』(秋田書店)
・挿入マンガ②:ブラッドレー・ボンド他(原作)余湖裕輝(作画)『ニンジャスレイヤー』(KADOKAWA)


サラ・クーパー、ビジネスあるある研究会訳(2016)『会議でスマートに見せる100の方法』(早川書房)

中野雅至(2011)『1勝100敗! あるキャリア官僚の転職記』(光文社)

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