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覗いてみよう!生物の不思議 #09

 皆さんは砂漠に生息する植物で「異端児」と呼ばれる植物をご存じでしょうか?その植物は「ウェルウィッチア」と言います。

 この植物は巨大な葉っぱがつるのように巻かれていて、サボテンなどの砂漠に生息する他の植物と比べると葉の表面積が広く、砂漠の暑い環境には適していないように思えます。
 
 この植物をよく見ると生えているのはたったの2枚で、この葉っぱは年に13〜18cmずつ円を描きながら伸びていきます。しかし、成長の途中で、砂漠の砂風によって破れたり草食動物に食べられたりしていくつかに枝分かれしていきます。
 
 ほとんどの植物は子葉が落ちて茎と新しい葉が成長し続けますが、ウェルウィッチアは初めに生えた本葉2枚でおしまいです。
 
 ウェルウィッチアを研究している植物学者のクリス・ボーンマンは、ウェルウィッチアの寿命が1000年〜最大で2000年近くあると明らかにしました。つまり、これほど大きな個体だと、古代ローマ時代に生まれた葉が現在まで生存して成長し続けているというわけです。
 
 これだけ長寿だと葉の長さは想像もつかない長さになると思われますが、さすがに葉が無限に成長するわけではなく、成長過程で葉の先が枯れるため葉の長さは最大で4m程度に維持され、ウェルウィッチア全体の幅は8m近くまで育ちます。
 
 また、茎の長さは50cmで大きいものだと1m以上になることもあります。中国の植物学者であるワン博士はウェルウィッチアの遺伝子を分析した結果、ウェルウィッチアの葉の中にある分裂組織では高温から細胞を守る熱ショックタンパク質がたくさん作られているということを発見しました。この物質が作られるおかげで、ウェルウィッチアは砂漠の中でも成長し続けることができます。
 
 しかし、どれだけ熱から身を守る物質があったとしても、あれだけ巨大な葉を維持するには大量の水分が必要になると思いますが、一体、どのようにして水分を摂っているのでしょうか?
 
 
 
 
 この理由として、雨によって水分を溜め込むと思われるかもしれませんが、実は「霧」を通じて水分を吸収することが明らかとなっています。

 ウェルウィッチアが生息するナミブ砂漠は、霧が頻繁に発生する砂漠で、ナミブ砂漠のすぐ隣の海にはベンゲラ寒流という冷たい海流が流れています。アフリカ大陸から砂漠の方に移動した熱い水蒸気が寒流によって形成された冷たい空気と交わって冷却され、砂漠では朝と夜に霧が出るのです。

 ウェルウィッチアの長い長い葉は、周辺の土壌を覆って土壌から水分が蒸発するのを防ぎ、乾燥した環境でも生存することを可能にしました。さらには、ウェルウィッチアの根の長さは約1.4mで、周辺の地下水に沿って分布し地下水からも水分を得ることで生存に宅立てています。
 
 ウェルウィッチアは、生命の痕跡が全く見られないといってもいいほどに砂で埋め尽くされた砂漠で、1000年を超える長い間、たった2枚の葉で生きています。
 
 私たち人間も植物を見習って厳しい環境の中でもたくましく生きていきたいですね。