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記事一覧

1111⑤

これはあくまで「小説」です。全部うそ。全部うそということも含めて、全部うそだよ。私の闘争です。
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両親が宿泊予定のホテルに着いた。
「やっぱりあれね、まゆちゃんみたいな派手派手な服を着て歩いてる人なんて、京都駅付近でもやっぱり見ないわよねえ」
ふと母親が軽口のようなニュアンスで話しかけてきた。そのまなざしがあの子をどれだけ傷つ

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1111④

あ、""小説""ですよ!「小説」!!

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警察署の最寄り駅に着いた。その日、すでに病院での処置は終わり、あの子は警察署へと移送されていた。検死。胃の中にある大量の錠剤の成分を一つずつ検査して死因の確定要件を探るらしい。状況的には一酸化炭素中毒で間違いないのだが、変死扱いになるためこの行程が必須となるそうだ。錠剤の種類が豊富で、葬儀

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1111③

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深夜25時の住宅街に、私と共に取り残された友人がどんな顔をしていたか、もう思い出せない。きっと友人も、私も、見たことのない顔をしていただろう。
二人とも、マジか…、やりやがった…、マジか…、あいつ…、え、ほんまに…?、マジか…などあまり会話にならないような単語を並べて、朝を迎えるための場所を探し住宅街を歩き回った。
友人は泣

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1111②

第一話はこちら

23:30ごろ、宗田の自宅に着いた。消防隊と救急隊はもう帰っていて、警察が現場検証を行っていた。いろいろな質問に答える。警察はまだ、実家のほうに連絡はしていないと言った。
「貴女から電話しておいてください」
「え・・・無理です。絶対絶対無理です。警察から電話していただいて、それを私に連絡してください。そのあとで私から電話をします。第一報を私がするのは・・・本当に絶対、無理です」

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1111①

宗田が死んだ。金曜日だった。
「お世話かけるかもしれません。」
あ、これはやったな、とツイートを見た瞬間に思った。

 火曜日の晩に、宗田は私の家に泊まった。泊まる予定を事前に聞いていなかったから、私は慌てて簡単な食事の用意をする。まずはすぐに炊けるからタイ米をフライパンで炊き、昼に食して余っていたベトナム料理を温める。きゅうりのぬか漬けと、それから温かいルイボスティーを淹れ、少し遅めの夕食を摂っ

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