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自炊論

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自分で自分の料理をつくることについて、思い出を交えて
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冷蔵庫。必要か否か

自炊の経歴はながいのだけれど、そのながい期間のかなりの部分、冷蔵庫をつかっていなかった。自炊をするならなにはさておいてもキッチンに冷蔵庫と電子レンジはなければならない。それが現代の常識だろう。けれど、私はながい自炊歴のなかで、ついに一度も電子レンジはもたなかった。冷蔵庫はそうではない。いまもつかっているし、それ以前にも何度かつかったことがあった。つかわない時期もあった。なかった時期もあった。
ひと

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玄米。くうべきか、くわざるべきか

玄米。くうべきか、くわざるべきか

これまでの人生のなかで、何度か玄米をくう生活をしたことがある。たべたことがある、ではない。すくなくとも数ヶ月以上、白米ではなく玄米をたべつづけた経験、という意味である。
最初は、東京でひとりぐらしをしていた時代だ。そのころの私の自炊には、「安くあげる」以外の動機はなかった。金がないから、自炊する。言葉をかえれば、金があるなら自炊はしたくない。だから、ふけばとぶようなちいさな会社の安い給料ではあって

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パンを焼く その4 - 手ぬきこそが継続のコツ

パンを焼く その4 - 手ぬきこそが継続のコツ

フライパンでパンを焼くようになってから、しばらくつづけるうちに、だんだんと手をぬくようになっていった。断続的ではあったけれど、そうやって焼きつづけるなかで、いまのスタイルができあがった。
まずひとつめのおおきな変化は、フライパンではなく、オーブントースターをつかうようになったことだ。パンはオーブンでなければ焼けないというおもいこみは、最初は鍋で、つぎにフライパンでパンを焼くようになって、私のなかか

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パンを焼く その3 - わりとまじめな鍋焼きパンづくり

パンを焼く その3 - わりとまじめな鍋焼きパンづくり

東京で、いまでいえば在宅ワークの自営業、当時の感覚なら無職の遊び人かプータロー的な生活を5年ほどつづけたあと、私は流浪の身になった。さすがに住所不定というわけではなく地方都市にアパートをかり、のちには田舎家をかりたりもしたが、あちらこちらと、であるいていることのほうがおおかった。旅さきではいろんなものを手づくりしているひとにであうこともあった。そんなときにパンづくりの経験は、話をもりあげるのにやく

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パンを焼く その2 - ふるいおもいで

パンを焼く その2 - ふるいおもいで

わかいころの私がパンを焼きはじめるきっかけになったのは、友だちのさりげないひとことだ。「で、パンは焼くの?」もちろん、その言葉が出るまでには伏線がある。
その夏、私は会社をやめたばかりだった。なにをするともきめていなかったけれど、5年間、まじめにはたらいたつもりだったので、もっと自由なことをしてみたいとおもっていた。たとえば冒険家だ。ただ、その夢はあっさりと骨折というかたちでくだけちった。2週間ほ

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パンを焼く その1 - 食費に注目したらこうなった

パンを焼く その1 - 食費に注目したらこうなった

パンはちょっと贅沢だという感覚が、昭和の日本人である私にはある。実際、1食あたりの価格でいったら、パンのほうが米よりも割高だろう。だが、原料の価格までおとしこんだら、米と小麦粉では小麦粉のほうがやすい。昭和30年代、ある大臣が「貧乏人は麦をくえ」といって炎上したのはふるいはなしだが、実際、米と麦の政府売渡価格は、6倍以上のひらきがある。ちなみに政府買入価格のひらきは2倍程度だから、この逆ざやは輸入

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自炊をする理由

自炊をする理由

自炊をしようというひとは、おおくの場合、目的をもってはじめる。その目的は十人十色、百人百様、それぞれだ。けれど、おおまかにわけたら「安価」「美味」「健康」のどれかをもとめているようにおもえる。そして、ここははっきり切りわけておかないと、ツッコまれることになる。
たとえば、「近所のひとに野菜をたくさんわけてもらったんで、今日のおかずはタダ!」みたいに経済性を強調すると、「そんなこといったって昨日の買

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