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「おんなのこきらい」を観たら「にんげんきらい」になった

Twitterで話題になってた、「おんなのこきらい」。タイトルからして魅力的やったもんで、見てみた。

ふわっとしたあらすじを書いておくと、主人公は「泉 キリコ」ちゃん。「一挙一動全てがとにかく可愛い」のが取り柄で、そこにいるだけで男にモテる。でも、実はそんな可愛い女の子にももちろん大きな悩みがあって……みたいな話。
まず、キリコがマジで可愛い。可愛いし、くっそ腹立つ。いわゆる「あざと女子」。女からはとことん嫌われる。でも、感情移入出来てしまう。なんでかって、でけえ悩みを抱えてるから。
キリコは過食症。「可愛い物は全部私の一部になればいい」っていう言葉から本編が始まるんだけど、その言葉通り可愛い物をめちゃくちゃ食いまくる。マカロン、ショートケーキ、チョコレート……食ってる姿も可愛い。けど、食い終わった後は全部吐いちゃう。しかも、食い終わった机がマジできったねえの。そこの対比が、なんかすげえ心に来る。
キリコが過食症になったであろう原因は、「ユウトくん」。キリコの好きな人で、バーの店主。もう私からしたら、「バーの店主」なんて胡散臭いんやから絶対やめとけって思うけど(偏見)、この男がまあカッコいいんだわ。男臭い感じの、男も惚れるような男ってやつでよ。カッコいいんだよ、これが。あー、しゃあねえなって思う。んで、カッコいい男って大概クズやん(偏見)。こいつもクズなわけよ、やっぱり。キリコに優しくするし、可愛いって言うのに、絶対彼女にはしようとしない。セフレ止まり。しかも、「好き」って言わない。これがクズの際たる部分よな。絶対「好き」って言わねえの、これ言ったら負けとでも思っとるんか知らんけど。
キリコがさ、ユウトくんに言うわけ。
「世界中の人に嫌われても、私はユウトくんが好きだよ」
って。もうこんなん告白やんか。「付き合ってください」の意やんか。それにユウトが答えるわけ。
「世界中の人に嫌われるなんて状況有り得ないだろ」
って。ごめん、少々台詞は違うかもしれんけど、大体こんなことを言いよんの。
は? と。お前、何言うてんの? と。
「付き合ってください」に対しての返事は、YESかNOかでせえ!
ちょっと心の中の千鳥・ノブが出てしもたけど。要するに、お前はこのぬーるい一番気持ちええ温度のお湯に一生浸かってたいってことなんやな? はいはい、分かった。お前は正真正銘のクズです。

まあこういった具合で、キリコは悩みを抱えながらも頑張って生きてるわけよ。そんで、ある時ある男性の職人さんに、「可愛い」グッズを作ってほしいっていう企画を出しに行く。そしたら、その職人さんには全然響かない。これは僕の色と違うって言って、断られそうになる。キリコは色んな手を尽くしてその人に企画を持ち込むけど、やっぱり響かない。
「なんで? 可愛いじゃないですか、これ」
ってごり押したら、職人さんが答えるのよ。
「可愛いっていうか、可哀想です」
って。
ここで、キリコの心にひびが入る。いうてキリコもぬるーいお湯に浸かり続けてたような人だから、初めてそんなこと言われてムキになる。そんで、その職人さんのところに通い始める……って感じ。

 何がって、登場人物全員に腹が立つし、登場人物全員に共感できるのが面白かった。正直、ラストの解釈は人によって分かれるだろうから万人受けするもんやないとは思うけど、私は好き。若干醜形恐怖症気味の私には、かなりキツイもんがあったけど、それも含めていい具合に心を抉ってきてくれる映画だった。キリコ、お前は可愛い。


▼▼▼以下、ネタバレ&見た人にしか分からないことを書くので注意▼▼▼








 まず一個言わせてくれ。おい、高山。てめえはなんで泣いてるんだ?
 マジでこれが分からん。ラスト、泣きたいのはどう考えてもキリコやろうが。キリコが泣いてるのは分かる、痛いほど分かる。けど高山、お前はそこでなぜ泣いた? 謎すぎる。高山、お前だけは信用しとったんや。それがこの展開。もう私の情緒もぐちゃぐちゃになってしもうたわ。
 映画観ながらスマホでメモを取る癖があんねんけど、そんときのメモこんなん。

ブチギレすぎん?
いや、でもね、ここではさすがにキレさせてよ。女やったら全員キレるでしょ、ここは。
一応、この時の高山にも感情移入してみようと思ったのよ。
高山、多分マジで優しいいい人なんだろうなって。キリコのことも、友達っていうか、妹っぽい感じで放っておけなかったのかなって。本当は好きな人いるけど、今この瞬間にキリコが頼れるのは自分だけだし、そんなこと言ったらまたキリコが情緒不安定になるかもって心配したのかなって。それでずっと言えないままずるずる引きずって、言い出すタイミングも逃しちゃったのかなって。

いや、それにしてもあのタイミングで泣く理由は謎。

謝れよ、もっと。なに泣いてちょっとええ雰囲気でなあなあにして終わらせようとしとんねん。しかも散々手を差し伸べてたくせに、最後は泣いてるキリコ放って手も振り払って帰るって、何? 何様?
二度と面見せんな。

ラストの解釈がめちゃくちゃ難しいな、あれ。最終、キリコには「何が残ったのか」。
「可愛いだけじゃ駄目みたい」っていう台詞から察するに、「可愛い」は残らなかったはず。やけど、ラストシーンで「君可愛いね」ってナンパされたときは笑顔で「はい!」って答えてる。でも、その「はい!」は、男全員に媚び売って生きてきたはずのキリコが唯一初対面の男に媚びを売らんかった瞬間にも見えたんよね。
馬鹿やから分からんけど、分からんなりに考えた結論としては、「可愛いだけが取り柄」じゃなくて、「可愛いっていう取り柄もある」っていう見方になったのかなと。「可愛い」にしがみついて、それしかない、それだけしかないって思うんやなくて、それを自分の魅力の一つとして見るようになった……みたいなこと? なんかな。ちょっと浅いかもしれんな。

けど、やっぱ「一つのことだけに囚われてたら損」っていうのが全体通しての教訓っていうか。もっと広い視野で見た方がいいよ、っていうのを感じれる映画やったんかな。馬鹿で理解が及んでないとこもありそうやけどね。

でも確かに面白い映画やった。「おんなのこ」の自覚がある人はマジで見た方がええよね。自分のことを「おんなのこっていう自覚がある人」って自称するのキモいけど、なんとなくキリコに通ずるものがあったからしゃあないやん。結局、クズい男って魅力的に映るよね。でもやっぱ、男も女もみんなクズだよね。

「おんなのこきらい」っていう映画やったのに、結局「にんげんぜんいんきらい」っていう感情になったから最高。いい映画でした。

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