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最強の湯【勝手にリレーエッセイ2023春"無意味"】#1

この記事はイトーダーキさんの企画「勝手にリレーエッセイ2023春"無意味"」の参加記事です。私はグループBの第一走者。

※なんだその楽しそうなやつはという方は以下リンクからどうぞ。でも企画知らないまま本編だけ読んでも全く問題ないです。

▼リレーエッセイの企画概要はこちら

▼スタート記事はこちら

企画概要の記事で「有意義で無意味」というテーマが発表された時、頭にハテナがたくさん浮かんできた。

意義はあるのに意味はないってあれか?ウエストランドのM-1決勝のネタか?よくわからずに思わずgoogle検索で「意味 意味」という謎の検索までしてしまった。意味を知ってたらそんな使い方しないだろ。

などと混乱していたところに、スタートのイトーダーキの親分が肩透かしのような記事を書いてくれた。

友達の好きな子の家を探しに行ったって?なーんだこういう無意味さでいいわけだね。ならば私の人生は無意味さで溢れているぞ。

真の無意味というのを見せてやるぜ……(以下本編)。



大学時代のある冬の日、私は暇を持て余していた。

取らなければいけない単位は大量に残っており、レポート課題も期末試験の勉強も手つかずで放置している。

でもそんなものは元からやる気がなく、友人にお酒を奢ってノートを見せてもらえばなんとかなる。持つべきは真面目な同級生である。そんな海外のお菓子よりも甘い考えでだらだらと毎日を過ごしていた。

思えば私の大学時代こそまるまる無意味だったのではないかと思うが(後の妻に出会ったこと以外ね!)、とにかくその日も暇を持て余していたんである。

当時の私は、長崎の山の上にある静かな田舎町で両親と暮らしていた。世界旅行中の豪華客船が停泊する港から冷たい潮風がびゅんびゅんと坂を登って吹いてくる。特に夜は外より寒いんじゃないかと思うくらいに家の中が冷えた。

その日、父は珍しく東京出張、母はそれについていき観光するとウキウキで出かけていった。つまり、私は家に一人。

誰もいない家は余計に寒い。寒すぎて悪寒がしてきた。あー温泉にでも入りてえなあと思い歯をガチガチ震わせながらふと、これは「最強の湯」をつくればいいのでは?と思い立った。


みなさんは日本の名湯シリーズという入浴剤をご存じだろうか。

箱根温泉とか登別温泉とか、ご当地の温泉気分を手軽に味わえる入浴剤だ。

もし、全ての入浴剤を混ぜたら。箱根、熱海、登別、道後など日本の有名な温泉地の数々。その全てが融合した湯が心身に染み渡ったとしたら最強の効能を持つのではないか?

よくある美人の湯などもはや眼下。

それはもう温泉?

ノン。神泉である。

神の領域と知れ。

入った者の体を芯から温め、全ての病気を治し、不老不死の体にしてしまうのではないか。こわいわーひらめく自分の才能がこわいわー。

まあ、いっちょ不死身になってみるとしますか。

れっつ、最強の湯!(イトーダーキ風)


全ての種類から少量ずつ入浴剤を取り、一袋分にしてシェイク。

シャカシャカチキン感覚。

それを風呂に流し込む。

色?

ユーはカラーのことを聞いているのかい?

そう。白、青、緑、紫…様々な美しい色が溶け合って……



灰色。

いわゆる象さんの皮膚色だよね。

うん。すっげえ入りたくない色だよね。

匂いは…まあ普通だけどさ…。


入りましたよ…

うん。普通に、ノン不死身。

すぐに風邪ひくし、結局ズルズルの体調で試験もボロボロだしね。

人は決して神の領域には触れることなど許されないと知ったのだった。

不老不死になったらどうしようかなんてわくわくしながら考えていたあの時間、全く意味がなかったなあ。でもいいのさ、楽しかったから有意義さ。


大人と子供のないまぜになった年代の人に暇を与えるというのは「なんかやらないとヤバい」なんて考えだすのだけど、結局ろくなことをやってこなかったなあと思う。

北の大地でイトーダーキ氏が友達の好きな子の家を探していた数年後、私は九州で最強の湯をつくって風邪をひいていた。

まあ、ああいう無意味な暇さもまた広い意味で勉強なのかもしれない。

おしまい

▼あとがき
後に続く方々が(というかこのリレーエッセイの参加メンバー全員が)偏差値高そうだ……と思ってあえてくだらない方向にフルスイングしてみました。これをどうリレーしてくれるのか、楽しみにしています!

▼次の走者はこの人!

BenBenさんのリレー記事は4月17日(月)に公開予定です。ぜひ読んでね!

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