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2泊3日モイモイ旅行

3月まで住んでいたマンションが売れたので、もろもろの手続きのために関東へ。せっかくなのであちらの友達にも会う予定を入れて2泊3日で家族で行くことにした。

1日目

ピーチ航空福岡発成田便。よく胃腸が弱いとnoteに書いている私だが、そういえば三半規管も弱い。乱気流の中ぐわんぐわんと上下左右に揺られ機内で完全に酔ってしまった。

視界がチカチカしてきて、ヤバい…吐き気が…とエチケット袋に手を伸ばしたその時、通路向かいの席から「助けて!」と小さく叫ぶ声が聞こえる。見ると妻が両手で長女のゲロを受け止めていた。すまん長女。嫌なところを私から遺伝させてしまったようだ。旅行は序盤から非常事態となったがまだ始まったばかり。ここからだ、ここから取り戻すんだ…!

ホテルで『クリームイエローの海と春キャベツのある家』を読んだ。昨年のnote創作大賞から書籍化された本。家事代行サービスで働きだした主人公が子供5人のシングルファザーの家庭へ派遣されるという話だった。

妻に病気で先立たれ、シングルファザーになった家庭。父親が1人で働いて、保育園の送迎に行って、ご飯を作って食べさせ、お風呂に入れ、宿題を見て、小学校と保育園の連絡帳を確認して、寝かしつけをして、掃除洗濯をして。それだけじゃない名前のない家事だって無数にある。私もなまじ経験があるだけに想像すると震える。これを毎日、子供5人分だと?いや無理無理無理。

そんなに頑張りまくる父ちゃんなのに、洗濯物の海になっている家の状況に「俺ってまだまだ家事が足りてないんじゃないかって思って……」と主人公へ打ち明けるシーンがあった。いやいやこんな大変な状況でなにを言ってんだよ。この父親はもっと頼れるところに頼ってサボるべきだし、飛行機に酔って1人でホテルで休んでいる私はもっと家族から頼られるようにちゃんとすべき。ギャップに泣けてくるぜ。

2日目

とにかく会える人に会おうと予定を詰めた結果、朝から友達に会い、昼にまた別の友達に会い、夕方にまたまた別の友達に会う日だった。行く先々で飲み食い荒らして去っていく我々家族は山賊のようであった。

昼に少しだけ3月まですごしていたマンションに立ち寄った。ここに5年くらい住んでいたが、住みやすくていい家だったなと思う。在宅勤務や自宅隔離ができる空間もあったし、徒歩圏内だけで生活できる便利さもあった。

キッチンカウンターの下の壁を見ると、長女がボールペンで書いた落書きがある。その隣のところは猫が爪を研いでささくれ立っているし、寝室には次女が夜な夜な壁紙をちぎって妻に地獄の業火のごとく叱られた箇所もある。家具はないがそういう我々の痕跡がいくつか残っていて、住んでる間にいろいろあったなあとしみじみする。最後に家族で記念写真を撮ってマンションにさよならを言った。

柱の角にご注目

夕方からは私の大学時代からの友人たちともんじゃ焼き屋に集まった。先日フィンランド転勤が決まった友人と、新婚の友人。私も含めそれぞれが人生の転機だというのに、集まってもだいたいどうでもいい話しかしない我々。お互いに切磋琢磨する立派な友情というのもいいが、ライバル意識など皆無で高め合おうとすらしないくらいの清々しさ。社会人になってこういう関係の人を作るのは難しいのでそういう時間もまたいいよなーなんて思う。

教えてもらったが、フィンランド語で「やあ」は「モイ」で、「バイバイ」は「モイモイ」と言うらしい。響きがかわいい。友よ、しばらくの間モイモイ!

3日目

マンション売却の手続き。買主から代金が支払われ、そして私から鍵を渡した。次に住む人は穏やかな老夫婦だった。東京の家を売り、老後を娘家族の近くですごすために私の住んでいたマンションを購入したのだという。賑やかだったわが家よりは落ち着いていて近所の方も安心だろう。

うん千万円という金額が私の口座に入り、そしてそのお金はローンの一括返済をするために一瞬で引き落とされた。短く儚いお金持ちの時間だった。一括返済が終わった私の口座には僅かばかりの金額しか残っていない。これからまた新居のために35年ローンという新たな長い闘いがはじまるのだ。

手続きの間、妻とこどもたちはお世話になった保育園に挨拶に行っていた。一度福岡に行ってお別れというものがどういうものかわかったからか、担任だった先生を見つけると次女が抱きついて号泣していたらしい。

妻に「あなたはこういうところを見てないでしょ。罪だと思うわ」と言われた。罪だなと思った。移住とはいろいろなものと別れるということでもある。福岡で楽しい生活、つくっていこう。

帰りの飛行機はピカチュウに励ましてもらった

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