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物理、数学、カフェのおじさん。

日本ではこんなニュースが話題に上がっているみたいですね。

小学4年生で数学検定1級に合格。そのレベルは理数系大卒程度……

中高時代、絶えず数学にコテンパンにされてきたド文系大学生からすると、もう、ただひたすらすごいな、信じられないなと、そういう気持ちでニュースサイトを眺めていました。

その彼、参考書などは使わずに、YouTubeの講義動画を見続けて数学や物理、はたまた化学の知識を深めてきたんだそう。すごい時代ですね……!

そしてこのnoteを書いた「ヨビノリたくみ」さんこそが、まさにその動画の主であるYouTuberさん。今回たくみさんは「画面の向こうの優秀すぎる生徒」を実際に訪ねたそうで、そのレポート記事がこのnoteなのです。

すごく面白い記事だったので是非読んでいただきたいのですが、2人のやり取りが興味深いのはもちろん、安藤くんの知識欲や天才っぷりに改めて驚いてしまいました。

そして一番強く感じたのは、「『知りたい』と願い、学び続けている人って、年齢を問わず輝いているなあ」ということ。

さらにそんなことを思いながら、ある一つの思い出が蘇ってきました。

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6年前、中学3年生の時のことでした。

はじめに書いた通りに数学、はたまたその他理系科目、そのまた他の科目たち……にコテンパンにされていた中学生の私は、定期試験の期間になると、最寄り駅近くのカフェで勉強をする習慣がありました。

カフェ勉に勤しむ意識高い中学生……だった訳では全くなくて。

テスト期間に入るまでほとんど勉強せず(先生ごめんなさい)、入ったところで、帰宅したら絶対ダラダラしてしまう確信があったので、「とりあえずカフェに寄ってテスト勉強しよう」作戦を採用していただけのことでした。

その日もいつものように、お気に入りの大きな円卓の一箇所を陣取り、マイペースに勉強していました。多分2学期の中間試験か、そのくらいの時期のことでした。

すると不意に、円卓の隣の席のおじさまに声をかけられたんです。

今となっては何を言われたかも全く覚えていないのですが、どうやら私がその時勉強していた物理の内容が気になったようでした。

その方はそのカフェの常連さんだったのですが、話を聞くと、いつもそこで数学や物理の勉強をしている、とのことで。

私の母校は中高一貫校だったので、カリキュラムの進度が通常より速いという事情がありました。なので、「見るからに中学生」の私が高校物理を勉強していたことに興味を持ち、思わず話しかけてしまったらしいのです。

熱心に私に話しかけてくださるおじさま。「物理の好きな中学生がいる、感心だ」なんて思ってくださっていたのでしょうか。

一方の私はと言うと。「知らないおじさん」に声をかけられて単純に戸惑う気持ちと、「今眺めてるこの内容、全然理解していないし、だからテスト前日になってカフェにこもっているわけだし、わたし、全然物理好きじゃありません……」と言えない後ろめたさが混じって、ただぽかーんとしていたのでした。

それでも私はいっちょ前に猫をかぶり続けます。

しばらくお話して分かったのは、その方は大学を卒業してかなり経ってから、とあるきっかけで学び直しを始めたこと、そしてそんな勉強や読書に関するブログを続けていらっしゃる、ということでした。

帰宅してそのブログを覗いてみた私。しかしあまりにも専門的な話題が羅列されていて、ただ気圧され、静かに画面を閉じたのでした。

その後も時々その方にお会いすることはありました。しかし、出先で知り合いに会う気まずさや、「『理系科目の好きな学生さん』として話しかけられてしまうかも知れない」小さなおそれのせいでカフェに行く回数は減り、そしてとある出来事がきっかけで、その方との交友関係を終えることになったんです。

その出来事というのが、「専門書どっさりプレゼント事件」。名前そのまま。

何かの流れで「過去に読んだ本を是非譲らせてください」と申し出られ、断り切れずに(「学校の勉強の役に立つ本も入ってるかも?」という気持ちも多少あって)いざ受け取ってみたところ、

あまりにも大量&専門的&年季入りすぎ

のトリプルコンボで、率直に言って圧倒されてしまった……という事件です。

その時遂に「諸々温度差がありすぎるし、それを上手にお伝えできるほど私は大人ではない」と判断した私は、その方と距離を置くことを決めたのでした。ちなみに、本の一部は友だちにあげて、残りは処分した気がします。

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そして昨日ひっっさしぶりに、その方のブログを覗いてみたんです。

そしたら、今も相変わらずコンスタントに更新されているし、もちろんバリバリ勉強されているようだし、「400冊ほどの専門書を読破して学んできました」みたいなことまで書いてあって……たぶん、あの頃は「200冊」とかだった気がする。

すかさずページを閉じたあの日と全く変わらず、数学や物理への純粋な愛に溢れていて。例の事件以来久々に、そのおじさんに、圧倒されてしまったのでした。

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教育現場でのインターンを始めてから、日本人フィリピン人を問わず、自らの専門に情熱を注ぐ方にたくさん出会ってきました。特に事業内容的に、奇しくも、数学や物理を愛していらっしゃる方が多くて。

そうやって「学問」に人生を捧げていると言っても過言ではない方々の姿勢には、ひたすら尊敬の念が湧くし、かっこいいなと、心から思います。

もし今あのおじさまに会ったとして、依然として数字に弱い私に、大した会話ができるとは思えません。でもあの頃とは違う姿勢で、心持ちで、お話を聞かせていただけるような気がしたりもします。

天才少年のニュースから蘇った、奇妙な交友関係のお話でした。



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