漫画家が出版社に搾取される時代が始まっている

「搾取」この言葉を使うことに抵抗がなくはないですが
やはりそうとしか考えられない現状です…
もちろん現場の人は誰も悪くないのですが
悪しき慣習が漫画家の首を締めています。
普通の方々でも結構知ってる数字かとはと思いますが
漫画家が貰える印税率は10%です。
これは紙の漫画の印税率です。
まだ漫画がデジタルじゃなかった頃
漫画家は漫画を読者に届けるにあたって
写植も打てなければ、印刷もできない。
書店との交渉事や販売数も把握できないし
在庫管理もできなかった。
つまり、漫画が漫画本として世に出るために

漫画家
編集者
写植屋
印刷会社
書店取次業者
書店
倉庫管理業者

少なくともこれだけの業者が関わらんないと
本が出せなかったのです。
その、漫画家ができない仕事を
各業者に振り分けて仕事を依頼し
かつ、円滑に進め、さらに販売促進、売上の分配などを
一手に担っていたのが
出版社という存在です。
さらに作品のストーリー作りでも
編集部という部署を設けて
漫画家と一丸となって
ヒット作を出すべくサポートする…

「お前はただ漫画を描けばいい。
後のことは俺に任せろ!!」

そんな頼もしい存在でした。
だからこそ漫画家は10%という少ない取り分ですが
裏方として働いている人たちに
残りの90%の印税率を「必要経費」だと考えて
手放す契約でサインをしてきました。
さて、デジタルの時代になった今
電子書籍ではどうでしょう。

漫画家
編集者
配信取次会社
配信会社

これだけで読者の元に漫画が届けられます。
漫画家が原稿に直接写植を打てるようになり
印刷をすることもなく、データを送るだけ。
では、出版社の役割はどう変わったのか…

編集部と出版社の役割を分けるとすれば
配信会社に配信を許諾して、漫画家から貰ったデータを
配信会社に横流しするだけ

ザックリですが、やることほとんどなくなったわけです。
漫画取次会社的なこともやってるところはありますが…
紙にはしない、電子書籍のみの場合です。
この一見なにもしてない出版社の電子書籍での取り分はどうでしょう。
それは漫画家は知らされてません。
ただ、電子書籍での漫画家の印税率は15%〜20%という状況。
紙の印税率よりもちょっとだけ高いくらい。
むしろ20%貰えてる人は少ないんじゃないでしょうか。
こんだけ関わる人減ってるのに
漫画家のパーセンテージ、低くない?
そう疑問に思ったのは小学館から出ていく決意を固めた時。
時は電子書籍の黎明期でした。
ここからは、わたしの経験も踏まえて語っていきますが
すべての権利を引き上げるという段階でも揉めたのですが
電子書籍の権利だけは残してほしいと言われました。
ですが、お断りをして、当時出版社を通して
取引していた電子書籍の配信元に
これからは出版社を通さず、直接取り引きして
代わりに配信料を上げてほしいと交渉しました。
このことを知った小学館が配信元の会社に圧力をかけました。

「そうやって作家と直接取り引きするなら
うちからいっさい漫画を配信させないぞ」と…

その当時は出版社が流してくれる漫画作品がなければ配信ができず
配信元というのはとても弱い立場でした。
今や立場が逆転して、配信元が配信してくれなければ
売り上げに繋がらない状況で
出版社が頭を下げて「どうぞこの作品を電子書籍にしてください」
とお願いする状況です。
その時の配信元は参ってしまい
出版社から出た漫画家なんだから、特例ですという形で
直接取り引きができるように動いていただけました。
時が過ぎ、出版社が電子書籍での印税率を取りすぎてると
気がつく作家も増えましたが
どんなに交渉しても

「他の作家もこの率だから。この契約がひな形だから」

と印税率を変えません。
出版社が莫大に印税率を搾取してるという構図です。

こうなってくるともはや中間搾取企業です。

配信元は著作者じゃないので、そんなに取ってません。
著作隣接権を持ってる出版社がすごい率を貰っています。
でもそれだけの仕事はしてないわけです。
漫画家の現状は理解できてるはず。

少ないお金で、スタッフのお給料や仕事場の家賃を払っています。

それだけ搾取してるなら
せめてスタッフのお給料はこれから出版社が支払いますとか
必要経費は出版社が持ちますと持ちかけてしかるべきだと思います。

これだけ取ってるんだから、作家に還元しようと思わないのかなと…
決まりだから、昔からそうだからという理由で
一番大事な作家のことを何も考えてない。
わたしにとってもはや出版社と契約する利点というのが

「編集部があること」のみになっていました。

そこへ、今現在一緒にお仕事をしてる
ナンバーナインという配信取次会社に「編集部がある」ことを
知りました。

配信取次会社というのは、何百という漫画アプリに
データを流してくれて、宣伝を打ってくれたり
交渉をしたりして、漫画家の代わりに面倒なデータの受け渡しや
管理などのいっさいを代行してくれる会社です。
そこに「編集部」が存在し
漫画を読んで感想を伝えてもらえたり
会社ごとにデータを作ってくれたり、様々なアドバイスを
してくれるわけです。

ここと直接取り引きすればいいんじゃないかと…
さらに今どきな会社で、契約の内容も自由自在。
原稿料を貰う代わりに、配信料の率を下げてもらったり
逆に原稿料はいらないから、配信料の率をあげてほしいというのも
交渉次第です。
その時、思いました。


「ああ、これからはこういう会社が伸びる。
漫画家を大事にする会社と仕事するべきだ。
一番頑張ってる人が一番お金を貰えなくて
誰が漫画家と寄り添ってるって言えるだろうか」と…


漫画家の皆さん、もう一度契約書を見直してください。
自分の働きに見合った契約になっているかと…
今の流れなら、もしかしたら
大きな出版社でも印税率(電子書籍の)を変えてくれるかも
しれません。
もしくは印税率の内訳を教えてもらってください。
めちゃくちゃ嫌がるでしょうけど
後ろめたいからだと思います。
交渉してください。スタッフのお給料も払うべきだとか
画材、デジタル機器は支給すべきだとか…
いやホントに持って行き過ぎなんですよ。
「だったらせめて…」みたいなことです。
わがままじゃないです。
当然の交渉です。
生きるための知恵をつけてください。
もう、出版社におんぶに抱っこは限界が来てます。


わたしは仲良くさせて貰ってる出版社も多いですが
こういうこと書くともう出版社ではお仕事できませんね😅


でも「そういう時代」です。


漫画家という職業を守るためには
こういうことも発信しなきゃと思ってます。
出版社を通さなくても、漫画は描けますし
発表できます。
搾取されないでください。
よきパートナーというのは、搾取しません。
臨機応変動いてくれるものです。


漫画家に出版社はいらないと言ってしまうと
暴力的ですが
実際に出版社が金銭面での足かせになってるのが
現状です。
著作隣接権というのも時代錯誤な権利です。



その他のエンタメ企業の皆様
是非漫画家に直接お仕事の交渉をしてください。
漫画家は総合プロデュースする能力もあります。
漫画だけの仕事じゃなくて
キャラとストーリーが必要な仕事であれば
どんなことでもできると思います。
著作権者として全ての利益を自分のものに
したいって漫画家も実際は少ないと思ってます。
仕事量に見合った報酬か権利料をもらえば
製作委員会に名を連ねて
チームの一員として
キャラとストーリーを作るというのもいいでしょう。
漫画制作は大変ですからね。
アイデアで仕事をするのもありです。



優秀な編集の皆様、
この一件で
出版社に対する想いも変わったかもしれません。
フリーの編集者になって
収入が倍になった人も多いです。
漫画家もいろんな人がいますので
それに合わせて疲弊することも多いでしょう。
お互い人間です。いろいろあると思うのです。
信頼できる漫画家と独立するのもありです。


大企業の変わらない体制を変えようとしても
無理なことがこの10年でわかりました。
もう個人の時代です。
実際にわたしに来る案件で「出版社を通したくない」という
企業はたくさんいます。
個人が自由に仕事をして羽ばたく時代。
自分が変わりましょう!
そしたら企業も変わる。
業界も変わる。
世の中も変わると思います!


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