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東京寫眞帖 : 御会式

私の住んでいるあたりでは日蓮宗のお寺をよく見かけます。
日蓮宗のお寺には、秋に「御会式おえしき」というお祭りがあることを、ここで暮らすようになってはじめて知りました。
お祭りというのは少し正確ではないですね。
というのも、御会式は日蓮上人の命日である10月13日の前後に行われる、法要の行事だからです。


10月に入ると、近所のお寺からは夕方に時々、鉦や太鼓の音が聞こえてきます。
御会式の時に繰り出す、万灯行列の練習をしているのです。

万灯というのは、大きな五重塔を乗せた山車のようなもの、とでも言えばいいでしょうか。

こんなかんじ。

お寺や講はそれぞれの万灯を持っていて、御会式の日にはその万灯を曳いてお互いのお寺を訪問しあうようです。


近所のお寺の御会式は、今年は10月16日。
月曜早々なので少しためらったものの、ここ数年御会式に行っていなかったこともあり、仕事を早じまいして出かけてきました。

日もとっぷり暮れた夜7時ごろ、勇壮な纏を先頭に、近隣のお寺から次々と万灯の行列がやってきます。
宵闇の中にぼんやりと浮かび上がる五重塔の灯り。
枝垂れ桜のように五重塔を覆う、白い花飾り。
お寺ごとに万灯の形や纏の振りかたが少し違っていて、それを見るのも楽しみです。

お寺の名前の入った提灯、纏、
そして万灯と続きます。
纏を振る人。かっこいい。
纏が3人もいるお寺もありました。
万灯を曳いてきた人たちが本堂にお参り
台車が車椅子?!
(そういうのもアリなのか…)
五重塔はお墓を、
白い紙の花は、日蓮上人が亡くなったときに咲いた
季節はずれの桜を模しているのだそうです。

お寺に隣り合った神社の例大祭が9月半ばに終わると日中の気温もしだいに下がりはじめ、日の暮れるのも少しずつはやくなっていくのですが、10月になって、夜の訪れが本当にはやくなったことを実感するころに聞こえてくる御会式の練習の音は、その賑やかな音色とはうらはらに、どことなく淋しさを感じるものです。
そして御会式が終われば一気に秋。
万灯ごしに見上げる夜空に、残りわずかになった今年のこれまでのことを思います。


うちからは少し離れていますが、大本山・池上本本門寺の御会式は三日間にわたる盛大なものだとか。
万灯も100基近くも出るとかで、深夜まで賑やかに池上の街を練り歩くのだそうです。
いつか池上本門寺の御会式にも行ってみようと思っています。

(2023.10.16)

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