親切な人
親切…だったんだと思う。
20代前半の頃、なんか意味なく残業とかしていて 0時過ぎてから帰宅することが多かった。職場から家までは歩いて30分ほどの距離。
その日も 夜中の1時くらいだったかなぁ、てくてくと歩いて帰宅していた。
私の危機管理能力の低さよ…
でもタクシーはどうしても怖くて乗れなかった。男性の運転手さんしか いなかったし、車に知らない男性とふたり という状況が無理だったのだ。
そうして歩いていたら、車が近づいてきて 止まった。窓が開いて
「こんな時間に ひとりで歩いていたら危ないよ。家まで送ってあげる。」 と、運転していた男性が言う。30代くらいだろうか。
いやいやいやいや、それこそ危ないだろ。乗れるか そんなもん!
「ありがとうございます。でも近いので大丈夫です。」
にこやかに返して、歩を早める。
そしたら その男性、そのまま道端に車を停めて 走って追いかけてくる。
「いや、俺 怪しいもんじゃないから!ほら、これ!免許証!!」
いやいやいや、怪しいもんじゃないって言う人の怪しさ半端ないから!!
「いや、ほんと近いんで。大丈夫なので!」 強めに言っても ついてくる。どうしよう怖い。怖すぎる。
「じゃあ このまま歩いて送ってあげる。荷物持つよ!」 と、半ば強引に荷物を奪われる。ああああああ もう逃げられない…
緊張で覚えていないけれど、当たり障りのない話をしつつ歩いていたら家が見えてきた。一人暮らしではないけれど、家を特定されるのは マズくない?
「あの、もう家が見えてるのでここで。ありがとうございました。」 と、荷物を返していただく。
「いや、家に入るまで見届けるよ?」 なななな、なんで!?
言葉通り、男性は動こうとしない。どうしようかと 押し黙っていると
「最後に握手しよう!」 と手を握られた。なんで!?
諦めて私は玄関のドアを開けた。中に入るまで彼は、見守ってくれていた。
結果、彼は ただの親切な人だった。
握手以外の要求は されなかったし、家に何かされることもなかった。
でも親切を装った悪意というものは存在する。そういったものから どう身を護るのか。結局 この件でも私は、なんにも拒否できていないのだ。
今回は たまたま いい人だったっていうだけで、どういう結果になるのか最後までわからなかった。
夜、暗い道をミニスカートで ひとり歩くお嬢さんは意外に多い。見かけると心配になってしまう。かと言って声をかけるのも…。相手が女性なら安心ってわけでも ないし、余計なお世話だって思うよね。
でも、世の中 怖いことってあるんだよ。
無理やり車に乗せられて、連れ去られちゃったパターンもある。あれは本当に殺されるかもしれないと思った。リアルにあるんだよ。
脅かしたいわけではないけれど、せめて気を付けていてほしい。
(気を付けていてもどうにもできなかった私が言うのもアレだけれども。)
無印の はちみつねり梅を買い占めたいです。