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【919/1096】知識は理解ではない

数年前に呼吸・整体で学び始めたとき、自分が日常生活で、いかに息を止めていたかに気づいた。
それはもう絶望的なくらい、明らかに息を止めていた。
うっすらとか、苦しくなるほどではないが、というレベルではなくて、よく苦しくなかったね?というレベルで止めていた。
そりゃ過呼吸にもなるわ、と思った。

呼吸・整体で学んだことは、ものすごくシンプルで、
息を止めていた日常から、息を止めない日常へ切り替える。
ということである。

誰でも理解できると思う。
言っていることはわかる、という意味で。

しかしこれができない。
古いパターンが邪魔して、すぐに元に戻る。
古いパターンを脱却して新しいパターンを学習するしかない。
コーチによく言われたのが「古い癖をなんとかしようとしないで、新しい癖をつけていく」というものだった。
言われていることは100%理解している。
が、しかし、私はこれが想像を絶するほどできない。
え?ほんとに??まじか!というレベルで出来なかった。

ディスティン・サンドリンというエンジニアがいる。
Smart Everydayというサイトで、科学の力を使って世界を探求して新しい視点を提供してくれている人だ。

この人が面白い実験をしている。

通常の自転車に乗れる人が、「The Backwards Brain Bicycle(後進脳自転車)」に乗るとどうなるか?という実験である。

「自転車に乗る」という行為は、一度乗れるようになると身体が覚えていて、何も考えなくても乗れるようになる。
自転車に乗っているときに考え事をしても、その間、乗れなくなるみたいなことは起きない。これを脳の「手続き記憶」という。人には一度覚えた手続きは、自動でそのようにできる仕組みがある。

後進脳自転車は、「ハンドルの向きと逆に前輪が動く仕組み」で、右にハンドルを切ると左へ進み、左にハンドルを切ると右へ進むというものである。

この自転車のしくみは、誰でもすぐに「理解」できる。知識としては。

しかし、すでに普通の自転車に乗れる人が、この自転車に乗ることはできない

ディスティンは、なんと、この自転車に乗れるようになるまで、毎日練習し、8ヶ月かかって乗れるようになった。
毎日毎日、なんども転び、諦めずに練習し、失敗しても、人に笑われても、それを乗り越えて、熱心に取り組み、乗れるようになったのである。

彼は、この体験で「知識は理解ではない」と言い切った。
自転車の乗り方を知識で知っていても、自転車に乗れるようにはならない。
そして、自転車に乗れたとしても、仕組みを変えたら、それを乗りこなせるようになるまで(つまり神経回路が開くまで)は、乗れるようにならない。
乗れるようになって初めて、ああ、そうか!と理解できるのである。

できると思っていてもできない。
これを理解するには、やり続けるのみである。

そして、実際にできるようになってからしか理解できないのである。事前に「わかる」というのは不可能なのだ。人間の脳のしくみ上。

変化する必要に気づく。
気づいただけではまったくなにも変わらないが、気づくことは非常に重要である。
気づいていないことは、100%変わらないからである。
そして、自分の無意識下に深く根付いたパターンが別の方向に誘導している中で(つまり普通の自転車に乗れる状態で)、それでも行きたい方向に行くためには(後進脳自転車に乗るためには)、
「毎日、努力を継続すること」
「自分を成長させるために、今までの自分に抗うこと」

なしに、その変化を身につけることは不可能である。

この抗うというのは、目的、目標が大事で、自分で自分を傷つけるような抗い方をする(自分にダメ出しをし続けるようなこと)と神経系が切り替わらないので、いつまでたってもできない。
自分を成長させるために努力する、というのが肝である。

そして、たくさんたくさん失敗して、諦めずにできるまでやるということだ。

この失敗を肯定的に捉えることが変化への第一歩である。
失敗なしに変わることはない。失敗するたびに、自分を否定し、叱責し、ダメだ、とするといつまでもうまくやれない。
侮辱され否定されると、人間は遮断するようにできているからである。それがたとえ自分であっても。

失敗を繰り返すことでしか、神経システムは変化しない。
そして、神経システムは心の肯定的な応援が必要なのである。そうすることで、学習する。
行動のすべてが学習である

だから、呼吸・整体では、「一挙手一投足」「日常の所作」を変えていく。
ここが一番の肝なのである。

私はそれまで「失敗することを恐れて何もしない」という状態だったが、それでは何も変わらない。
知識は増えていくが、「理解したつもり」が増えていくのみである。

本当に理解するためには失敗するしかないのだ!と腹を決めてから、一挙手一投足で失敗して、失敗を肯定的に捉えることにした。
自分の「パターンを変える」のである。
失敗をダメ出ししていたら、いままでのパターンが変わらない上に、神経回路が切り替わることがない。
もちろんいまだに行ったり来たりを繰り返しているが、それでも前進をやめることはない。

ディスティンは、8ヶ月毎日練習して継続したから、後進脳自転車に乗れるようになったのである。途中で「こんなにやっても出来ないのだから、自分には無理」「これは乗れるようにならないやつ」「この自転車に乗れるようになるやつはいない」などと言ってやめてしまったら、乗れるようにならない。
乗れるようになっても、そのあと、逆戻りはしばらく起きる。新しい神経システムが確立されるまでは、時間がかかるのである。
元に戻った時、すぐにまた自転車の練習をし続けるからこそ定着する。
そこで「また元に戻った」「自分はダメなんだ」「こんな目標は達成することはない」などと言い始めると、深い穴に落ちて、這いあがってくるのに時間がかかってしまう。もしくは、這いあがれなくなってしまう。すると変化は永遠におきない。

そして、驚くべきことに、新しい変化が定着しても、元に戻すことができるのである。
古いパターンに戻るのは、新しいパターンを学習するよりはるかに短い時間で戻る。
だから、常に自分を更新し続けることが重要である。

つまり、息が止まらない日常は、自分が死ぬまで更新し続けるということだ。
でもそれは、かなり面白いことで、今までの人生で体験しなかったことの連続が積み重なっていく。物の見方が広がり、いままでにない現実を生きることができる。

では、また。

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