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【289/1096】丸を描く少年

289日目。今日は月一の「存在のコミュニケーション」クラスの日。終わった後はぐったり。自分が鏡で映している世界を見ていると思っていたが、鏡ではなく万華鏡だったかもしれない・・・という感覚。また1ヶ月、実践あるのみ。


「丸を描く少年」

いつも、紙に丸だけを描いている少年がいた。

言葉を発することはほとんどできず、
文字を書くことはできなかった。
それゆえ言葉で人と意思を疎通することは難しかった。

人と意思の疎通ができずに
イラつき、傷つき、
時々癇癪を起こした。

それでもまた、丸を描いた。

丸、丸、丸。
ぐちゃぐちゃに丸だけを描いている。

毎日毎日、丸を描いていた。
彼が描けるのは丸だけ。

丸を描いていれば、静かにしていてくれると
周りの人は丸を描かせてくれた。
彼の近くにいる人は、ただそれだけだった。

何を描いているのか、
尋ねても答えられず、
彼が何を描いているのかは誰も気にしなかった。
ただ、丸を描くのが好きなのだろうと思われていた。

あるとき、彼のもとに、知らない男の人がやってきた。
彼を訪ねてきたわけではなく、
彼のいるところに用事があった人だ。

「何を描いているの?」
彼は、いつものとおり、ただ丸を描いている。

いつもいる人が
「彼はいつも丸を描いているんですよ」
と説明した。

しばらく、男の人は彼の描く丸の絵を見ていた。

そして、男の人は言った。
「きみ、あの柄を描いているんだね?」
壁にある模様をさして言った。

壁にある模様は、
丸とは全く関係のない図柄で、
とても同じものを描いているようには見えなかった。

彼は、何も言わなかった。

男の人は、
「きみはすごいなあ。丸であの模様が描けるのか」
と言った。

彼はまた丸を描いた。

男の人は
「丸が描けるなら、きみは人の顔が描けるよ」
と言って、顔を丸で描いたものを彼にくれた。

目と鼻と口。そして輪郭。

彼はそれを見ていた。
男の人は、その紙をプレゼントすると、
仕事をしにいった。

2時間ほどして、彼は仕事をしている男の人のところに
紙を持ってきた。

彼が描いた丸だった。

顔を描いた丸。

誰にも理解されたことのない丸が
意味を持った日。
彼は、人の顔を描いた。

男の人は
「ほら!やっぱり描けたじゃないか!」
と言った。

彼は、笑いもせず、言葉も発しなかったけれど、
たしかに男の人と通じていた。


私は、こういうコミュニケーションができる人間でありたいと心から願っている。
(ちなみに、この話は実話ベースのお話です。)

では、またね。


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