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あの頃のキミへ

世界が色を失ったのは、12歳の頃だった。
だんだん色を失って、気がついたら灰色になり、真っ黒になった。
そして、また、だんだん色づいて、世界は美しく、色とりどりになった。
今、あの頃のキミに、もしも、言葉をかけるとしたら、なんと言えるだろう?と考える。

12歳のある日、突然、透明人間になった。
教室に入っても、誰も話しかけない。話しかけても、無視された。
私はまるでそこにいない人になった。
あからさまに侮蔑の視線を投げつけてくる子もいたし、ヒソヒソと視線を送りながら話す子達もいたし、廊下を歩いていると、「おーい、きたぞー」と中で大きな声で呼びかけている子がいて、自分がバイキンのように扱われた。
机の上の油性マジックで書かれた消えない落書きを消すために、ずっとこすっていた。

「あなたに原因がある」と言った。
そうされるにはそうされる理由がこちらにあるからだ、と。
その理由は、聞いてもよくわからなかった。
「なんか、ムカつくから」と言った子がいて、それが一番よくわかった。
なんかムカつくらしいのはわかったけど、それをどうすると変えられるのかはわからなかった。
誰かが面白いことを言って、みんなが笑っているときに、つられて笑うと「気持ちわるい」と言われた。
笑ってはいけなかったのか、と思った。

17歳の時、初めてリストカットした。
薄くにじむ血がキレイだった。
うっすら切っただけなのに、すごく痛くて、そこに心臓があるように、ドクッドクッと脈打った。
生きてる感じがした。
死んだほうがいいと思いながら、死ぬのは怖かった。

初めて男の人に殴られた時、口の内側が切れて、血の味がした。耳がキーンとなって、よく聞こえなかった。
おまえが、さからったからだと言った。
何が逆鱗に触れるのかはよくわからなかった。
でも、彼が怒るのは「おまえのせい」で、「こんな不具合の多い女と付き合ってやれるのは、自分だけだよ。他にはいないよ」という言葉を鵜呑みにした。
一人になるのが嫌だったのだと思う。
でも、一緒にいても怖くて嫌だった。

とてもありきたりのようだけれど、
「それはあなたの責任じゃない」
「あなたのせいではない」
「あなたがなんとかしなくていい」
そう言いたい。
あの頃、誰かたった一人でも、そう言って欲しかったから。

「自分を大事にしてね」と言ってくれた人がいた。
自分を大事にする、がわからなかった。
いつもいつも、自分が嫌いだった。
誰からも愛されないから。
でも、誰からも愛されないなら、自分で自分を愛せばよかった。
誰かからしてもらいたいと思っていたことを、
自分で自分にしてあげればよかった。
そんな価値はないなんて、思う必要はなかった。

だって、生きているもの。
心臓が動いて、息をしているもの。
それだけでよかったのだ。


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