手塚治虫著「ガラスの地球を救え」/鋭い視点で書かれた未完のエッセイ
平成元年2月、手塚治虫さんは執筆中の本作が完成しないまま急逝されました。
病に倒れた前年3月以降も、創作への意欲、情熱は凄まじく、手術し入院中も連載漫画を描き続け
亡くなる10日前までアニメーションのお仕事をされていたそうです。
私は、手塚治虫さんに、お亡くなりになる数年前に書店のサイン会でサインを頂いています。
その時の事はまた別の機会に。(ただのサイン会ではなく、手塚さんのお人柄を象徴するようなサイン会でした。)
この本は、noteのどなたかの記事で見かけて存在を知りました。夢中で読みました。
うーん、やっぱり手塚さんは凄い方でした。
初版は1996年。今から26年前に、こんな鋭い指摘をされていたこと、もっと遡って、戦争前後の混乱のあの時代に現代のあり用を作品を通じて予言されていた訳ですからとんでもない想像力です。
うちには、昔中古で入手した「火の鳥」が数巻あります。
壮大な物語で圧倒されましたが、特に「未来編」で、永遠の命を持った人が、どんなに死のうとしても、アメーバみたいになっても死ねない という主題が強烈に記憶に残っており、死んだら魂も何も綺麗に消えたいという、私の死生観の原点はここにあるのかもしれないと考えています。
以下、「ガラスの地球を救え」を少しまとめてみました。
◆現在の地球を予言◆
著者は、「火の鳥(未来編)」で、西暦3400年、地球は死にかかっていて、荒れ果てた地面の下に林立する未来都市を描いたけれど、35世紀どころか21世紀も危うい。
地球は、大宇宙の暗黒の中に浮かぶ、青く輝く水の惑星。誕生から46億年。最初の人類が誕生してからまだ三百万年。
恐竜は1億数千万年も地球上で繁栄した王者であったにもかかわらず何故か六千五百年前に絶滅してしまった。
人類など、まだ生まれたばかりなのに、このままでは、人類史など儚い一瞬の夢でも終わるかもしれない。
地球はいま息も絶え絶えの星になってしまった。
人類は、進化の方向を間違えてしまったのではないか。もとのままの、下等な動物でいたほうが、もっと楽に生きられ楽に死ねたかもしれない。
残忍で嘘つきで嫉妬深く、他人を信用せず浮気物で派手好きで、同じ仲間なのに虐殺し合う、醜い動物だと言い切っています。
しかし、罪のない子供たちの未来を諦めては絶対にいけないとも。
◆母親の教え◆
母親は、いじめられっ子だった治虫に、漫画を読ませた。声色を変えて面白おかしく読んでくれた。家には漫画が200冊。やがて、いじめっ子も家に来て漫画を読むようになり、母親は歓待した。
手塚治虫の漫画を誉め、漫画家になれると背中を押してくれた教師の存在も、彼の人生に多大な影響を与えた。
◆戦争体験◆
学徒動員で行っていた軍需工場で監視役をしていた時、焼夷弾がすぐ脇を落ちて行った。
街は空襲で焼け、郊外へ逃げて行く大人の跡を付いて行き辿り着いた淀川大橋、そこを狙って爆弾が落とされ、胴体や手足がバラバラと飛び散った。
戦争で負った心の傷は肉体の傷以上に深く、到底癒やされるものではない。
◆情報過多、科学技術の進歩への懸念◆
情報過多により頭が混乱し全てが未消化。中途半端。これは怖いことである。本当に必要な情報を取捨選択する事の難しさ。何が正しいかは誰にも分からない。
それを統制しようと政治が介入する事が大変危険である。
科学技術の発達は、テクノロジー・アセスメントが重要。受け入れ側(子供や若者)への政治的な介入なしに、自主的に、生命の尊厳、生きることの価値を子供達に伝える事が大切である。
◆日本人の国民性◆
日本人は、どこの国の文化も柔軟に受け入れ独自に発展させる力がある。その反面、取り込まれやすい、流されやすい国民性がある。
皆同じような服を着、同じような家具、同じような家に住み、同じようなテレビを見て流行のものに飛びつく日本人。(付和雷同)
◆遺伝子操作への警鐘◆
バイオテクノロジーは、よほど慎重でなければ悪魔に魂を売ったと同じ事になる。生命の本質とは何か。
生命を重んじるあまり、生命そのものを滅亡させるのでは本末転倒。
<まとめ>
地球温暖化による気象の変化、コロナ、戦争、先日の元首相暗殺と、手塚治虫さんが危惧していた現実がいま起きている。
しかし、ここからどうするか、それを考え実行するのかしないのか。1人1人がしっかり考えないといけないよ、ということと受け止めました。
私は、鉄腕アトム、ジャングル大帝、不思議なメルモのアニメを良く観ていました。
唯一無二の努力の方。
まだまだご活躍して欲しかったです。
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今まさに日本各地で集中豪雨が起きているようですが、皆様の地域はいかがでしょうか。
大きな被害が出ない事を祈るばかりです。
それではまた。
最後までお読みくださり
ありがとうございました❤︎