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玉置妙憂著「死にゆく人の身体と心に起こる事」/延命至上主義は戦後日本の医学会が創り上げてきた刷り込みである。

何年も前になりますが、この方の前著「まずは、あなたのコップを満たしましょう」を読み、「死」に対する考え方が大きく変わりました。

玉置さんはこんな方↓

現役看護師であり、僧侶、スピリチュアルケア師、ケアマネージャー、大慈学苑代表。

夫をガンで亡くしておられるが、夫の、「がんを積極的に治療しない」方針に寄り添い自宅で最期を看取った。夫の“自然死”という死にざまがあまりに美しかったことから開眼し出家。高野山にて修行をつみ高野山真言宗僧侶となる
Wikipediaより抜粋

前著「まずはあなたのコップを満たしましょう」は図書館で借りて読んだので現在手元になく、振り返る事が出来ないのですが、こちらの本は手元にあるので、軽く再読してみました。

この本では、玉置さんの、延命治療に対する強い反発が感じられた前著からさらに思考を深め、
「死」の在り方に良い悪いはない、それぞれの決断はそれでいいのだと
温かく見守る姿勢に柔らかく変化されているように感じました。

以下、簡単にまとめてみました。

前著にて、高齢になり食欲がなくなる事は自然な流れであり、無理に点滴などで栄養を補給する事で身体はむくみ、死を迎える時に大変苦しむ事を学びました。
いわゆる老衰死は、不必要な延命治療をしない事で、だんだん水も食べ物も受け付けなくなり、枯れるように眠るように亡くなる。本人は、モヤがかかったような気分で眠っている時間が段々長くなり、苦しまずに最期を迎えられると。

終末期に食べられなくなるという事は、既に身体がエネルギーを欲していないというサイン。消化も吸収もできないようになり、いよいよ身体を終う段階に来ているという事。
そんな状態を見た家族は、せめて点滴をしてほしいと言う。

食べられなくなった人に栄養を補給する選択をしないという事は、餓死を選んだという重荷を背負う事になるからなかなか選べないという辛い現実があるが、妙憂さん曰く、餓死というよりこれは「自然死」であると。

こんな動画もありました。↓

1970年頃まで胃ろうが行われていたというスウェーデンでも、現在胃ろうは「虐待」と位置付けられ行われていないといいます。
翻って日本はというと、本人がその決断が出来ず家族がそれを決断するしかない場合、胃ろうを拒否したら死ぬ事がわかっているから、なかなか決断出来ず胃ろうを選択する、そうやって生かされている寝たきりの人が沢山おられるのが日本の現状という事でした。

そう、これが、長寿国の実態。

延命治療の選択を迫られた時、家族がより良い選択をするためには、本人の意思を事前に家族が知っておく必要があるそうです。
と言うのは、例えば一度つけた人工呼吸器を取り外す事が難しかったりするから。

ちなみに台湾では、健康保険証に、終末期に蘇生措置や延命治療をどこまでするかという意思を、保険証に埋め込まれたチップに記録できるようになったそうです。これは良い!と思いました。
また、台湾には「臨床宗教師」の存在もあり、死を穏やかに迎える心の準備をして、実際穏やかに眠るように静かに息を引きとる方が多いそうです。

酸素や薬や点滴でむやみに死を遠ざける事で、本人が苦しみの果てに死んでいく。ただ死にたくないから、見殺しにしたくないからと行う延命治療に、光があるでしょうか?

◆死を語れない大人たち
「諦めない」「頑張ろう」「一生懸命」ばかりがもてはやされ、「死」はいつも見えないところに押し込められる。
本当は、「死」はもっと身近にあるものとして、子供たちに見せないといけない。日本が、死を隠し忌避してしまった原因は、大人が死をタブー視し真剣に考えて来なかったからなのでは?(何で死ぬのに生まれてきたの?という子供の問いに答えられない大人がほとんど。)
死は、確実に訪れるものであり、それをどう受け入れるかを本当は各自しっかり向き合わないといけないことなのに。

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玉置妙憂さんは、2019年、非営利一般社団法人「大慈学苑」を設立されました。
講演活動の中で1番伝えたい事は、「邪魔をするな」という事。
終末期の患者さんからの質問に対して、相手が考える隙を与えないような、こちらが気持ちよくなるだけの自己満足的な答えや提案をするな、という事だそうです。

どんな風に死を迎えるか、これはあくまでも本人自らが整理して答えを探していく事。だから、その邪魔をするなという事だと。

ああしたらどう、こうしてみたら?を一切言わない。言いたくなるけどグッと飲み込み、相手の言葉にただ耳を傾ける。その方が、相手のベストな方向へ向かうと。
これは、育児にも通じる事だと感じました。

死なないように生かされているだけの人生、その選択に迫られた時あなたはどうしますか?


本日も、お読み頂き
ありがとうございました❤︎

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