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映画のはなし:真実は見方によって歪む『トラスト・ノー・ワン: 消えた巨額仮想通貨を追え!』

映画、というか仮想通貨界隈で起きた、ある大事件を追ったドキュメンタリー。

仮想通貨にちょっとは興味があったけど、結局「よく理解できないからリスクの方が大きい気がする」と思って未だに手を出していないタイプです。そして個人的には、今まで仕事で何度もデータ消えたんだけど!トラップに陥ったことがあるので、根本的に実態のないものはあまり信用していないところもあります。
データ、便利だけどね。めちゃくちゃ便利なのは200%同意なんですけどね。
なので仮想通貨関連にアンテナは張っていなかったので、本作を観るまでこの事件やニュースについて知りませんでした。

で、『トラスト・ノー・ワン: 消えた巨額仮想通貨を追え!』。

カナダ最大の仮想通貨取引所「クアドリガCX」。創設者は当時まだ20代だったジェラルド・コッテンともう一人のパートナー。ビットコインの高騰で会社は急成長、コッテンも巨億の資産を手に入れた。そして2018年。コッテンは妻と訪れていたインドで急死する。
しかし顧客から預かっていた約180億円の資産にアクセスするパスワードはコッテンただ一人しか知らなかったため、返金を求められても支払う金にアクセスができず、事実上顧客の資産が消滅したこととイコールになってしまう。コッテンは死の直前に遺書を残していたが、会社やパスワードについては触れられておらず、自らの資産は妻と飼い犬に託す、という記載しかなかった。
コッテンは本当に死亡したのか?全財産を相続した妻は彼の死と関係があるのか?
コッテンの死に何か裏があるのではないかと疑った顧客たちはチャットルーム上で結託し、真実を確かめようと情報交換をはじめる。

「ほらほら、だからデータは信じないって言ったじゃないの~」と、若干のドヤ顔で観はじめたのですが、観終わる頃には、自分の全財産が一瞬にして消失する恐怖と一緒に、もう一つの怖さや戒めを感じさせる作品だな、と思いました。

いわゆるミスリードにも繋がることだけど「どんな事実も一方だけの目線から見てはいけない」ということを、ロジカルに映像で解説されたような印象を受けた。というか、最後まで観たらこっちの印象の方が強い。

基本的な構成は、資産を失った顧客へのインタビューやチャットルームでのやり取りを主軸に、ジャーナリストの証言が加わる。資産を失った顧客のインタビューもあるので、観ているこちらも無意識のうちに「かわいそうに、資産全部失っちゃって」と思って被害者=顧客側に立つし、「え?マジでこの死って偽装の可能性ある??どうなの!?」と一緒に真実を見つけたいとのめり込む。

でも途中から顧客側の「行き過ぎ」に違和感を覚えてくる。
確かに失ってしまった財産を取り返したい気持ちは理解できるし、真実を白日の下にさらすべき!という正義感も理解できる。
でもやっぱり、行き過ぎた正義は人道的に正しいことばかりではない。
最後にコッテンの死の真相も明かされますが、「なんなんでしょうね……」と、虚無感が残りました。

ビットコインで資産を作り上げた人はもちろんめちゃくちゃ羨ましいけど(そら当然よ!)、目に見えるものしか信じられない保守派な私はこの先も手を出さないだろうな、と思う。

「仮想」通貨資産は、どこまでいっても「仮想」なのではないかと思えてならない。


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