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1か月前のあの日のこと~     「不都合な真実」をさらすことで、県政記者クラブが守ろうとしたもの

「ウォッチドッグ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

権力者が不当な行為をしていないか、取材報道を通じてチェックする。民主的な社会を守るための「ウォッチドッグ(番犬)」の役割を担うのが報道ということだ。

記者らが守るべきは「国民の知る権利」で、吠える先は権力者ということになる。

さて、鹿児島県に新知事(塩田康一氏)が誕生し、7月28日に県庁で就任記者会見が開かれた。

就任記者会見以前に行われた知事の初登庁、知事室入室、就任式、初庁議などは県の主催だった。県はフリーランス記者にも開放し、支障が生じることは一切なかった。

しかし、鹿児島県政記者クラブ(青潮会)の主催する就任記者会見は、様相が一転した。

県庁舎内会見場の入口付近にマスク姿の「ウォッチドッグ」記者が集合。入口ドア前は青潮会記者により、フリーランス記者の会見場入室を阻止するための「記者バリケード」が張られた。

記者が記者の会見室への入室を身体を張り阻止し続ける。ほとんど奇怪と言ってもいいような場面だ。

記者クラブが記者バリケードを張る「不都合な真実」は、寺澤有氏のユーチューブ、畠山理仁氏のツイキャスで撮影・生中継された。おそらく全国の記者クラブからすると、人さまには見られたくないような、ふつうに考えると目を覆いたくなるような光景だったと思う。

いや、わからない。私がそう思うだけで、全国の記者クラブは「鹿児島の青潮会、よく守り切ったぞ、偉い!チェスト~」とか言っちゃうのかもしれない。

とにかく、事実はこうだ。青潮会記者はライブカメラが回っているのを知りながら、フリーランス記者に強硬姿勢を貫き続けた。

青潮会記者らは最初に、庁舎管理権者である県広報課が行っていた「受付係」を取って代わる。

「青潮会の定めた『規約』の手続きに従わなかったから、取材者であるあなたに報道実績があり誰か分かっているけど、会見室には入れない」宣言を巨漢の記者が汗だくになりながらフリーランスらにする。

ここでいう『規約』とは「青潮会主催の記者会見に関する規約」をいう。青潮会内部で作られた、県庁舎内で行われる知事の会見に関する規約だ。規約作成に県や第三者の関与はなく、情報公開請求をしても規約作成過程の議事録は出てこない。民主的な過程を全く経ていない、県からの具体的な授権も法的根拠もない規約だ。

別の記者は両手を前に腕組みをして胸を張り「規約」を理由に「ルールに従わないからだ」「マナーだ」を繰り返す。会見室に入口ドア付近では、複数人で会見開始後も「記者バリケード」を張り続けた。「ウォッチドッグ」らは、フリーランス記者に吠え続けたのだ。

青潮会幹事社・共同通信の久納宏之氏をはじめ、記者が多数で知事記者会見室の入口前の廊下で身体を張り「通せんぼ」をし続けた。そうすることで「不都合な真実」をあえてカメラの前でフィーチャーしたかのようだった。

会見室内で始まっている「いま」の取材機会の場に戻ろうともせず「記者」らが身体を張り、他の記者の取材を阻止し続ける。

記者クラブ記者によって繰り広げられるフリーランス記者への取材制限の様子は、延々とカメラの前で披露された。カメラが回っているのを知りながらバリケードを張り、排除し続けた。記者クラブだけの密室で作った「規約」を絶対のものかのような盾にして。

記者クラブに無関心な人であっても「目が離せない」ような強烈な訴求力を持つ光景だった。

会見室へのフリーランス記者の入室を拒否し、何かを死守しようとする青潮会記者たち。回り続けるカメラの前で、あえてその姿を白日の下にさらしているようだった。彼らは何を守ろうとしていたのだろうか。

ひとつだけ分かることがある。彼らが吠えたのは「県民の知る権利」のためではなかったということだ。知事は同日夕刻に、会見に参加できなかったフリーランス記者のために別途、囲み取材の機会を設けたのだから。(了)

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写真は、鹿児島県の指宿市山川の鰻地区にある西郷隆盛像。西郷さんはこの地で湯治したそうだ。像は、山川石という、その地でしかとれない石で作られている。島津家の歴代の墓石に用いられている石だそうだ。黄色が美しい石だった。西郷像は中学生の作品らしい。目がくるくると丸くビー玉?のようで、印象的だった。犬ちゃんをお連れです。ゆっくり訪れたい秘湯。ご案内に感謝。


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