優しさと、結婚式
結婚式の朝、バタバタとシルビアが準備に走り回る
わたしは、空いている時間にシルビアの甥っ子と散歩をした
午前中なのに、もう暑い
今日は41°まで暑くなるらしいと聞いたが、どうなるのだろう
ホテルの周りには、古くて壊れた家や、小さなスーパー、大きな木に囲まれたカフェのようなお店、アパートや銀行などがある
ふと現れた広場のマーケットに、魚が売っていた
この暑いなか、氷を集めるのは大変でないだろうか
知らない土地に来たときに、異国の日常を垣間見るのがわたしは好きだ
シルビアのひとりめの甥っ子は、とても物静かで、思慮深くて優しい目をしている
何かに怒ることはないの、と聞いてみると
お母さんのことをばかにされる以外、たいてい怒らないと答えが返ってきた
物静かなひとは、人や周りのことをよく見ていて、
必要なときに必要なものや言葉をさっと差し出してくれるから、優しいと思う
優しさは、気づきにくい
ドタバタドタバタで、花嫁のお姉さんもシャンパンをかけ込みながら急いでドレスを着る
急ぐ姿も手伝う姿も
家族や大事なひとのために、こんなにバタバタできるのはすごいなぁとわたしは思った
離婚をする方がお金がかかるから結婚はしない、という若者がいるなか
結婚するには、それだけの理由が必要な気がしてくる
愛とは難しいことなのだろうか
そんなことを考えるよりも、
わたしを家族の一員のように招待してくれる当たり前でない優しさが、愛なのかもしれないと思った
暑さに負けず、猿滑の木が咲いていた
あなたはあなたらしく、わたしはわたしらしく。