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タイムスリップコップ
「縦の棒はどこへ行ったの?」
と、母が笑った。僕が学校の体験学習で、小石原焼のコップに絵付けしたんだ。いつも夢中になっていた将棋の駒と、「王将」って書いたんだけど、まだ将の字はむつかしくて、間違えた。
でも、なかなか渋くていい感じに焼き上がったでしょ?
やがて僕に弟が生まれて、やっぱり小学校で小石原焼に行ったんだ。同じ様に、絵付体験をした。そうしたら、弟も将棋の駒を書いたんだ。そしてやっぱり
明日からはこれで頑張る。
ペンキが好きだ。ペンキがというか……壁やドアのペンキがはがれたところを、上からまた塗って綺麗にする事を繰り返す行為が好きだ。人がよく触れる部分がはがれているのも好きだ。ただただ好きだと言うだけで、今日は終わる。
小さい頃過ごしたお盆は賑やかな行事ではなかった。暗くなると、提灯の列がお寺に向かって伸びて、「まるでホタルがアリみたいに歩いてる」様に見えた。ぼおっとした提灯の灯で、自分達の方が幽霊なんじゃないかと思うくらいだった。
〈博多駅前〉
初めての鬼
「嫉妬が過ぎるといけないよ」
「頭から角が生えるんだよ」
「三本生えたらその時は……」
宿泊するホテルまで一緒なの?
疑われて当然じゃない。
一。
あの女が貴方の部屋へ。
それなら、電話を鳴らしてあげる。
二。
「今ひとり?」
そんなはずないでしょ?
三。
そうね、もうすぐ1人になるわ。
あとは生まれたての鬼が1匹。
初めて喰った女の欠片が1つ。
すぐ近くで300円弁当も売ってるのに強気な値段のカレー。いやむしろ、カレーだからこそ強気にした方がいいのかも知れない。普通のカレーはどこでも食べられるのだ。
〈大博通り〉
フシギドライバー【いないいないBar】
「スクリュードライバーのはずだけど?」
いつものオレンジ色ではなく、それは透明な液体だった。マスターは何も言わずに奥へ「いないいない」した。そしてごついドライバーが添えられていた。
「これで混ぜろって?」
スクリュードライバーの起源通りに、グラスの中をドライバーでかき混ぜてみた。
おっと。
ひと口飲んだだけで、おねしょで描いた下手な象の記憶、間違って食べた渋柿の味、ビールを浴びたら脱色す
エヴァみたい
一週間、たくさん座って、たくさん字を書いた。字は、すっかりわたしの字に戻っている。実は、左腕だけあがりきらないけど、あまり支障がないのでよし。本当はもっと運動をしなくちゃだった。でも面倒で、ついゴロゴロしてしまった。今になって運動の必要性を感じている。暗闇バイクやってみたい。
暑い。どうにかなりそう。もう、生きて健康でいればヨシの精神でいるのと、食べれるものを食べればヨシで夏を乗り切る。本当に、人類は滅びるかもしれない。ノストラダムスは予言の年を間違えたのかもしれない。今程、生命の危機を感じて生きた事ない。願わくば、ルネッサンスに出会えますように。
チャリンチャリン太郎
わたしが愛したのは諭吉だった。なのに振り向いてくれなかった。
「所詮は薄っぺらいやつだぜ」
この人は、わたしにまとわりつく男。いつもチャリンチャリン言っている。
「あの人は、あなたとは桁違いだわ。放っておいてよ」
昼も夜も、諭吉を想って泣いた。
泣きすぎて心が乾いた時、あいつがチャリンと自販機でポカリを買ってくれた。心があまりにも重たくなって荷物になると、あいつがチャリンとコインロッカー
なぜそうなったのか分からないが、会社からのメールを確認しようとしたらスーッと右に消えてしまった。探しても見つからない。ビルの名前を覚えていたので検索し辿り着く事が出来たが、本当に、「マジで勘弁してくれよスワイプだかスワップだか知らねえがデジタル音痴舐めんなよ」と、思った。