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【読書感想文】森からの伝言

こんばんは。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

今日は、田渕義雄さんの森からの伝言ー退行的進化論と森の生活ーについて書いていきたいと思います。


この本との出会い

図書館をぶらぶらしながら、村づくりや畑、自然栽培、有機農法などのコーナーを散策している時に出会った。

写真が多く差し込まれており、文章もとても読みやすく『面白そう!』と即決だった。ゆっくり読みたいと思ったので、この一冊だけを借りた。

田渕義雄さんについて

東京の国立で暮らしていた家を離れ、夫婦で森の中に移り住んだ。
田渕さんは少年のまま大人になった人で、ヘンリー・デイヴィッド・ソローの『ウォールデン 森の生活』を読み、森の生活に憧れ、薪ストーブに魅了されれば薪ストーブのある家を作ったり、ソローの椅子よりもいい椅子が俺には作れると素敵な椅子をたくさんつくったりする。
元々は雑誌の編集者だったようで、文章を書いたり、詩を書いたり、野菜を作ったり、椅子を作ったり、養蜂を始めてみたりと人生を楽しんでいる人だと思う。

今回この読書感想文を書くにあたり、田渕さんのことを調べてみたら2020年にお亡くなりになっていた。本を読んでいる間、わたしの中には田渕さんが生きていて、薪ストーブの家に遊びに行って楽しいお話をたくさん聞いてみたいなぁ~なんてと思っていたのに、すごく残念だ。

森からの伝言 退化的進化論と森の生活

すこし癖のある独特な文章というイメージだが、わたしにとってはすごく面白く、興味のある内容ばかりだった。

気に入ったところはたくさんあるが、その中からいくつがご紹介したい。

人生はこっそり楽しむべし

みなさん、何か面白いことを考えて、楽しいことをしましょう。”娯楽”ということの意味を、メタフィジカル(哲学的)なものとして考えてみよう。
娯楽は大切なものだ。それは、憂しとみしこの世の気晴らしであり、人生の歓びでもある。低俗な娯楽は、低俗な人生を約束する。気の利いた娯楽は、人生をスマートな道へと導く。
誰もが生活の向上を願っている。より快適でより安楽な暮らしを誰もが望んでいる。お金があればね。しかし、収入は向上しない。だったら、”生活に対する態度や意識を向上させるしかない”のではなかろうか。
余分なお金は、余計なモノしか買うことができない。さりとて、貧乏をこじらせてしまうのは面白くない。自分にとって必要なだけの金を稼ぐことを考えよう。余計な金を稼がない分、人生を楽しむんだよ。

森からの伝言 P.24

蟻とキリギリス

キリギリスはバイオリンを携えて夏を歌い暮らした。秋になって草が枯れて、お腹が空いた。蟻さんの家のドアを叩いて、事情を説明した。
「食べ物ならいくらでもあるから、分けてあげないでもない。でも、その代わりに、きみは我々に何をしてくれるんだい。」蟻はそう言った。
そこでキリギリスはこう応えた。
「ぼくは、楽しかった美しい夏をきみたちに歌ってあげることができる。」
「そうなんだ!それはいいねー!ぼくたちは夏を働き通したから、楽しかった思い出はなにもないんだ。で、一日中食べては口論ばっかりしていたんだよ。さあー、入って入って。美しい夏の歌を聴かせてくれよ。」
蟻はそう言って、キリギリスを歓迎した。
キリギリスと蟻は、仲良く冬を一緒に暮らした。

森からの伝言 p.151

足元にある宇宙

数グラムの野菜の種は、ひとシーズンで数十キロ数百キロの作物になる。
土と光合成のなせる奇跡だ。
茶さじ山盛り一杯の肥沃な土には数百万の生命が宿っている。
バクテリヤと微生物と菌類の菌糸体と藻類とウイルスが宿る。
1エーカー(1200坪)の肥沃な土には、5トンから10トンのミミズやムカデや昆虫が潜んでいる。
シャベル一杯の土は、科学者が未だ踏み入ったことのない神秘的な宇宙としてある。
我々は自分の足元の宇宙を先ずもって探査するべきである。
この地球に知的生命体がはたしてあるのかを、先ずもってNASAは探査しなければならない。戦争に明け暮れてしている人類は、知的生命体とは言えないからである。

森からの伝言 P.170

冬の教え

人は、自分の居場所を探そうとする。自分を必要とする場所が何処にあるのかを知りたがる。しかし、自分の居場所は見つからない。なぜなら、そんな場所は何処にもないからである。自分の場所を探す・・・という考え方に誤りがある。
人は、自分の意志で生まれてこない。そうなら、人が生きることには、目的も意味もない。実存哲学とは、どうしたら自分が実際に存在するのだろうか?と自分に尋ねてみることである。
諸行無常。にしても、時代は今、あまりにも目まぐるしく変化しつづけている。世界は今、混沌として無秩序であてどない。今は、個々人の実存が問われている時代だ。そこを通り抜けなければ、時代の全体主義に染まって自分を見失うだろう。
自分の居場所は探すものではない。自分の居場所は、自分で創造するものだ。自分のシェルターを自分で造れ。誰にも侵されない堅牢な砦築け。
それが、冬という季節の教えだ。

森からの伝言 P.177

最後に

とても面白い、読んでいてわくわくする本だった。
時折暴走するところも、人間味があっていい。
お茶目で可愛い所もたくさんある。
年齢的には父親ぐらいの方だが、こんなおじいちゃんがいたら、孫は毎週でも遊びに行くだろう。

真面目にコツコツ働いている人からすると、もしかすると響かない本かもしれないが、人生の岐路に立って、これから自分はどう生きて行けばいいのか迷っている人がいたら、ぜひ手に取って読んで欲しい。

こんな楽しい生き方をしてもいいんだ。きっとそう思うはず。

世の中にはいろんな人がいて、いろんな価値観がある。

生活に必要なだけのお金を稼ぎ、残りの時間で自分の好きなことをする。好きなことに熱中しているうちに、好きなことが本業になっているかもしれない。

田渕さんも言っていた。
未来は誰にも分からない。
そんなことを不安に思って眠れぬ夜を過ごすなら、今日という日を思いっきり生きて、遊んで、楽しめばいい。
そうすれば夜は疲れてぐっすり眠れると(笑)

興味が沸きましたら、ぜひこの本を手に取って読んでみてください。
写真も多く、とても楽しい本です。



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