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「不同意性交」を防ぐメディア・リテラシー教育②対策編<互いの性を尊重する教育を>(新聞連載)

「18歳以下にも、ポルノ情報を出していいと思う」とA男(21)。中学1年からAV(アダルトビデオ)を見始めた。女優が玩具を使った愛撫を喜んでいたので、実際に交際相手にやってみたら嫌がられた経験がある。「子どもでも、現実にはAVを見ていることがあるわけじゃないですか。だから、ちゃんとしたエッチのやり方を教えるビデオもあった方がいい。ソフトなテクニックや避妊のハウツーとか。自分はいきなり過激なAVを見たから、それが理想みたいになってしまった」

メディアの性情報が現実のニーズに即していないと感じるのは、女子も同じだ。「男性誌の特集は『女を落とす方法』という内容ばかり。もっと『相手を思いやるように』とか、精神面を重視してほしい」とA子(21)。「恋人が出来ない男子はコミュニケーション下手。コミュニケーション格差を埋める情報を発信する方が先」とも。

B子(18)は、女性向けのメディアに偏りを感じる。「ドラマや漫画は、性行為を男性が主導するパターンが多いんです。何度も見ていると、それが普通なのかなと思って、自分も現実の場面で受け身になっちゃう」

一般メディアも性をタブー視せず、正しい性知識を提供すべきだと訴える。「新聞やテレビ、雑誌で、性行為に伴うリスクをもっと発信してほしい。性病や望まない妊娠とか、中絶について、常にそういうものと隣り合わせであることを知るべきだ」とB男(21)。高校時代、女友達が15歳で妊娠したのを目の当たりにした。「安全日、危険日の情報やピルについて、メディアでもっと教えてほしい。モーニング・アフター・ピル(緊急避妊ピル)の入手方法も」

一般メディアは不特定多数の目に触れる機会が多く、親が子どもと一緒に接することも可能な媒体だ。影響力の大きさを生かし、性教育に必要な情報を積極的に発信していくことが期待されよう。

メディアの性情報をうのみにしないリテラシー教育も求められる。子どもたちが実際に接しているアダルト雑誌や漫画・ネットを、授業の教材として活用してみてはどうか(もちろん、本物をそのまま見せるのではなく、口頭やイラスト等で説明)。「女性が家に来るのはOKサイン」「女性のノーはイエス」といった情報には誤解があることを教えねばならない。

「妊娠したら堕ろせばいい」と考えていたC男(20)は、中絶が女性の心身に与える負担を伝えると「知らなかった」と絶句していた。「膣外射精は避妊ではない」との点も強調する必要がある。

「ポルノを見ていても、誰がどうやってその情報を供給しているかなんて考えたことない」と言うのはD男(19)。「性的メディアは『売れる』ために、過激な表現や都合のいい情報を盛り込んでいる」などの「作り手の意図」を知らせ、情報を客観的に受け止められる目を養いたい。

家庭でも、E男(21)は「現実はAVとは違うのだからね」と母親から言われ、AVが演技だと初めて認識したという。息子の部屋に成人雑誌を発見して動揺した別の母親は、「こういう本と違って、生身の女性は性欲解消の道具じゃないよ。コミュニケーションが大事なんだよ、と思いきって息子に話しました」と語る。日頃から親子間で「女性と男性の、性についての考え方の違い」を話題にしたり、下ネタをジョークにしたりと、「性」をオープンに語れる雰囲気作りが重要だ。

「青少年の性とメディア」をめぐる取材結果は、拙著『性情報リテラシー』にまとめた。現状に照らせば、性教育にメディア・リテラシーを導入することは急務といえよう。「お互いの性を尊重しあうコミュニケーション」を育むため、子どもの性の問題に、正面から向き合ってみてほしい。

(熊本日日新聞『論壇』寄稿、2013.12.15)に加筆修正


<参照>「不同意性交」を防ぐメディア・リテラシー教育①現状編<メディアの性情報 うのみ>(新聞連載)


【参考文献】
『性情報リテラシー』渡辺真由子著

https://www.amazon.co.jp/dp/B00GUCH44C


「性情報リテラシー教育」を詳しく知る

https://www.asmle.com/







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