【シール】前編
「今日からここで働く工梨君だ。」
工場長?が紹介してくれた。
「工梨崇です。よろしくお願いします。」
「よろしくな!」
同じ年くらいの若い青年が気さくな挨拶を繰り出す。
「…」
こっちも同じ年くらいだが俺に興味がなさそうだ。
俺は今年20歳でフリーターをしている。
前働いてた所は力仕事でついていけなくなって辞めた。
たまっていた貯金を切り崩していたが無くなり始めたので、いいバイトを探して見つけた楽そうなバイトがここ。
「君にはこの壁にこれ貼ってもらうから。」
「本当にこれだけでいいんですか?」
「え?あぁ、うん。頼むね。」
「貼りかたとかは…。」
「え?あぁ、別にそんな気にしなくていいよ。段ボール別にシールの色が違うんだけど、色を分けて貼るだけでいいよ。」
これで時給1050円。こんなに楽な仕事無いだろう。
「君!」
「は、はい。」
「どうしてここを選んだの?」
さっきの元気な若い青年だ。
「ま、えーと…時給がいいので…。」
バイト風情が「楽そうだからここにした」とは言うのは気が引ける。
「確かにねー。俺も半年前に入ったばかりで分かんないこと多いけど初歩的なことなら分かるから聞いてな。」
「あのー。」
「ん?どうした?」
「これって本当にこのシールを壁に貼るだけでいいんですか?」
「え?まあ、貼るだけでいいよ。」
やっぱりどうしても気になった。
「これで時給1050円って凄い給料良くないですか?」
「あぁ、俺も最初はそう思ってたけどちょっとキツい部分があるからね…。」
「は、はぁ。」
「あ、自己紹介忘れてた。福谷です。」
「あ、工梨です。よろしくお願いします。」
自分は作業場に戻り段ボールを開封して中に入ってるシールの裏面を剥がして綺麗に貼る。
「え?ピーマン?なんだこれ。」
シールの表面にはピーマンと書いてあった。
「あ。」
他のシールも良く見たら全部に単語が書いてあった。
「あ、福谷さん…どこ行っ…」
「福谷なら休憩行ったよ。」
さっきの無愛想な人がこっちに気づく。
「あ…」
「どうした。」
「あ、あの、この単語って気にせずに貼っていけばいいんですか?」
「あぁ。別に順番とか無いから普通に貼ればいい。」
「ありがとうございます…」
「…島田。よろしくな。」
「あ、工梨です。」
再び作業に戻りシールを貼っていく。
「ゲーム…タケノコ…」
なんの脈絡も無さそうだ。
無心で貼っていく。
「犬…牛肉…」
半分くらい貼り終えた。
「工梨君。休憩の時間だよ。」
工場長?がやってくる。
「あ、はい!」
「休憩は1時間。その間ならどこ行ってもいいから。」
「え、はい。」
言われた通り、イヤホンとスマホと財布をもって外へ行く。
美味しそうな中華の店があったので入る。
「イラッシャイマシー」
「あ、一人で…」
俺は店の端に座った。
「オニイサン、チュウモンキマテアル?」
「え?あぁ…何にしようかな。」
「オススメワチンジャオロースセットネ」
「あー、じゃあそれで。」
女の人は厨房へと入っていった。
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