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色彩の闇18

その時、直也の指先が未知の感覚を捉えていた。
触れられただけで美沙の身体はビクッと跳ね上がり、その指先から反射的に逃げようとした。
しかし直也にとっては想定内だったようで、もう片方の手で美沙の腰をがっしりとベッドに押し付け、諸刃の意思を容易く封じた。
細く長くしなやかな指先が、その部位を宥めるようになぞった。
1本1本の皺を丁寧に撫でるように、その中心の蕾に狙いを定めていた。
指滑りが悪くなると、その真下にある秘壺からぬめぬめとしたものを手繰り寄せ、再びそれを繰り返した。
美沙は本来なら愛し合う男と女には無用の部位に興味を持っている直也に、恐怖さえ感じていた。
まさか…。

「あっ…!……そこは…!」

電流が走ったような激しい衝撃が身体の中心を貫いた。
初めての感覚で全身を鳥肌が覆った。
両手が、なにかを掴むような型を作って硬直した。
声にならない声が喉を通り過ぎ、無言の威圧を感じながら、直也の指は強引に蕾を裂いていった。
背中にじっとりとした汗が吹き出ているのを感じる…。
そして、さっき以上に興奮している直也の息遣いも…。

「思った通りだね!やはりおまえのここは素質がある…。ほら、粘膜が俺の指に吸い付いてくるようだよ…。」

素質…?
なんのことだろう…。
美沙は喩え難い痛みのような感覚と猛烈な排泄感に苛まれ、それどころではなかった。
こんなところで粗相するわけにはいかない!
必死に耐えれば耐えるほど、背中に汗が噴き出る。
声を押し殺すことが儘ならなくなる…。
美沙は全身を硬直させながら、直也の興味を2本、3本と受け容れていた。
直也が美沙の中で指を交差させたり、こすったり、肉壁を揉みほぐしたりしている。
そのたびに、真下の壺から淫らな水音が聞こえる…。
それは、どんどん大きな音に姿を変えていった。

なぜ…どういうこと…。
私は感じてなんかいない。
むしろ苦痛に耐えているだけだというのに、なぜ私の身体はこんなにも濡れていくの…?
自分の意思と身体が相反することを理解できないでいた。
ところが直也はその行程を心から楽しんでいるようだった。

「あぁ…もう我慢できない。挿れるよ…。」

え…?!
それは、一瞬の出来事に思えた。
先ほどまで縦横無尽にかき回していた指が、直也自身にすり替わったのだ。

これまでとは比べものにならない衝動に、美沙は思わず目を剥き声をあげた。
それは美沙自身も驚くほどに、高く、甘い声だった。

「ふふ…。気持ちいいんだ?すごいね。前にもやったことあるのかな?」

「なっ…!」

美沙は貫かれた体制のまま、精一杯の抵抗で振返り、キッと直也を睨んだ。
まるで相当に遊んでいる女のように思われている言葉に思えた。
ショックだった…。
しかし直也はそんなことは全く眼中にない様子で興奮に悶え、目を閉じて自分の世界に浸っていた。
頬は朱く染まり、呼吸は荒く、額には汗の粒がいくつもでき、乱れた長めの前髪から滴を落としていた。
もうこんなことしたくない、私はちっとも気持ちよくない。
これじゃあ大人の玩具と同じじゃないか…。
いくら大好きな直也が興奮し、自分の身体で楽しんでくれているとはいえ、こんな独りよがりの行為はSEXではない。
だいいち私は圧迫感と排泄感でどうにかなりそうだ!
もうやめて!もうやめて!
だんだんそれらが美沙の脳内で整理され、怒りにシフトした頃、直也が美沙の中で果てた。
驚くほどに大きな声をあげ、何度もなんども美沙の名前を呼びながら…。

背中に覆いかぶさった直也の身体から熱と汗を感じた。
心音が、背骨を通して自分の心音とリズムを作っているようにも感じた。
直也の身体の重さは感じなかった。
重さ以上に、美沙は先ほどとは相反する歓びを感じていた。
終わってみれば、自分の身体でこんなにも感じてもらえたことに感動していた。
あんな直也は初めて見た。
何度も名前を呼んでくれた。
私とひとつになろうとしてくれた。
それがとてつもなく、嬉しかった。
あぁ、処女を喪失した時って、本当はこんな感じなのかもしれない。
もしかしたら私はたった今、本当の意味でSEXを知ったのかもしれない…。
美沙は直也の重みを感じながら、ひしひしと満たされていた。

しばらく女の上で余韻に浸っていた直也が、ごろんと横に仰向けになったのは、まもなくだった。
美沙も直也のほうに体の向きを変え、その顔を覗き込んだ。
こんなとき、なんて言葉をかけたらいいのか解らなかった。
ありがとうございました、ではおかしい。
気持ちよかったです、は嘘になる。
脳内でいくつもの言葉を思い浮かべるも、どれもいまの状況にピッタリはまるものはなかった。
そうしてもじもじとしているうち、すっかり正常に戻った直也がベッドから立ち上がり、足早にバスルームへ向かっていった。
美沙はそのあまりの行動の早さに追いつけないでいた。
行為のさなかに無意識に力んでいたせいで、全身が気怠かった。
腕も脚もうまく筋肉を使えないせいで、起き上がることもうまく出来なかった。
そしてなにより…


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