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その世界観を商品が語れば

リモートワークが日常になってくると、
昼間、仕事をしている時でもテレビつけっぱなし……になりません?
私はなっています。
朝からずっと、夏目さん→羽鳥さん(と玉川さん)→一瞬志らくさん→大下さん→恵さんとか宮根さんとか坂上さん→ホランさんが写り、
音量はほぼゼロなのに、画像流しっぱなし。
その結果、最近ものすごく

スキャンダルニュースに詳しくなった

気がします。

グルメで知られるお笑い芸人が凄まじい不倫遊びを繰り返していたとか。
そんなニュースは、私の日常に何の関係もないし影響もないのですが
一つ、残念だなぁと思ったことがあります。
芸人さんがCMキャラクターを務めていたブランドの商品が
大好きだったことです。……いや、この言い方は違いますね。
彼がCMキャラクターを務めていることを今まであまり気に留めず、
単純にこの商品が好きで今も自宅で愛用しているんですが
今回の件で、「そうか、この人がキャラクターだったんだ」と
逆に、意識をするようになってしまった……。
美味しいリラックスタイムを提供してくれる大事な生活道具なのに
使うたび、B春砲に撃ち抜かれてげっそりしている芸人さんの顔が思い浮かぶのです。やめてくれ〜。

こんないい商品、いっそキャラクター不在でもいいのにな

と、個人的には思っています。
環境にも配慮された、100年前から存在する外資系企業の逸品。
企業の志は高く、今キャラクターの起用をやめても、
十分にその世界観やストーリーを伝えるブランド戦略は打てると、一ファンとして思います。

キャラクターによるPR戦略というのは
凄まじい効力を発揮するのだということは理解できますが、
一方、商品もキャラクターも
そのイメージが想像を超える方向に向かった場合、
脱却するのが非常に難しく、いつまでも囚われてしまうわけです。
ハリウッドスターは、そうなることを恐れるあまり、
極東日本のCMであれば自国内ではさほど話題にならないと考え、結果
「何でこんな大物が?!」という人が突如、ドメブランドの広告塔を務めたりするんだと聞いたことがあります。
サントリー「BOSS」のトミー・リー・ジョーンズ氏とか。
あれ、しんみりしたいいCMだと思う反面、

昔のサントリーCMって、アニメのペンギンに切なくさせられたり
異国の、名も無い羊飼いの少年とコピーが映るだけのシーンにじーんとしたり
もっとなんか、クリエイティブだったのになぁと思うのです。

(アニメのペンギンはその後キャラクター化しましたが)

ブランドの世界観は、商品が語ればいいのに

と思うのは、何も知らない外野が言う理想論なんでしょうか?

でも、例えばApple社のiPhoneなどはまさしくそうです。
駅貼りのポスターでもCMでも、
映っているのは、商品とカッコいい無名モデルさんたち。
見終わった瞬間、彼らの顔は忘れてしまうのに
BGMや、軽やかで美しい映像の印象だけが残ります。
Starbucksも、似ていませんか?
スタバのコーヒーは、正直言って高い。
ドトールでいいのに。セブンイレブンでも十分美味しいのに。
そう思いながらも店に立ち寄ってしまうのは
スタバのストーリー戦略にまんまとハマっているからでしょう。
iPhoneに至っては、今や他社機種に乗り換えようなんて考えられません。
3に始まって現在11。いったい幾ら費やしたことか。
電話番号やデータが引き継がれるとかそういうことももちろんありますが
いちばんの理由は、

変わらない世界観にどハマりしてるから。しかも無意識のうちに

ということなのでしょう。
キャラクターは不在で、カリスマ創業者が亡くなった後も買い続けているというのは、よく考えてみればすごいことです。
変容しまくっているようで、世界観は健在ということですから。

誰もキャラクターを務めないのに
ブランドの世界観を説明するすごい商品たち。

これって、プロダクトだけに言えることではないと思います。
例えば村上春樹作品。ご本人は滅多にメディアに出ないし、その割にはいろんな作風で書いていらっしゃるけど、世界観は見事にビシッと統一されています。
尊敬する「しいたけ。」さんも考えてみれば。あのかわいいイラストがなく、シンプルな文字データだけでも、彼の作品であることはわかると思います。それってまさに、世界観。

料理、料理はどうだろう?

白金高輪のフレンチレストラン「コート ドール」

ここの料理は、多分相当クラシックに見えて、iPhoneである気がします。
プロの料理人たちまでもが、記念日や自分を励ましたい日に訪れる店。
とんがったフーディーからも保守的なグルマンからも支持される店。
変わらないのに行きたくなるのは、キャラクターとか名物シェフとかの影響ではなく
完璧な統一感と美意識で貫かれたブランドの力によるものだと思います。

書いててだんだん、自分の紡ぐものはどうなのよと怖くなってきました。
私は、掲載していただくメディアや、お付き合いくださる企業名によって
自分を表現しようとしていないだろうか?
こなした仕事の内容よりも、組んだ人々の名前を大きく言っていないか?

「ブランディング」の必要性が、個人レベルに降りてきていることを
最近、いろんなシーンで感じます。
「おいコラ山口!」と思われたら、どうぞご指摘くださいね。どきどき。

#世界観 #料理 #COMEMO



フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。