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「営業しない」という営業戦略

フリーになって、今日でちょうど1年です。
毎日のようにいろんな気づきがあって、折に触れて「フリーって……」とつぶやき続けてきた気がしますが、
そろそろ、もうそんなに言う必要もないのかなーと思い始めています。
まだまだ駆け出しってことはもちろん自覚しているんですが、まぁ、少し馴染んできました。
ながーく続けたサラリーマン生活で板についた習慣も、
ようやく抜けた感じ。
もう、深夜2時を回って仕事してても
昼前に起きても、そんなにドキドキしません。
ルーティンワークが激減し、
その代わりに毎回が「初めて案件」で、四苦八苦しています。
経験値の少ない仕事は、クライアントからの要望もスタッフの意見も予想外のことばかりで、最後まで緊張の連続ですが、
その分時間の尊さが増し、1日1日がキラキラ光っている気さえしてきます。

ところで、フリーランス同士で集まるとよく話題になるのが、

営業ってどうしてる?

という話。
独立してたった1年ですが、
私は、自分に合うのは「営業しない」というスタイルかなと結論しています。

これは、私がまだサラリーマン編集者として働いていた時から感じていたのですが、

フリーランスにとって「営業」は意味ナシ

であることも多いかなと思っています。
最も大きい理由は、まだよく知らない相手に対して「私を使ってください」と言ったところで、
ぴったりの案件(仕事)が発生するのはいつのことやら、という場合が多いからです。

あ、もちろん、
いつか使ってくださいよー
くらいのノリで「営業」することはあります。
が、あまりにも本気モードで過去の仕事例を相手にお見せしたところで、

タイミング的にまと外れ

であることも多々あります。
もちろん、営業してくださったフォトグラファーやスタイリストの方々とお仕事することはありましたが、
即座に、というのは皆無だった記憶。
何ヶ月も何年も経ってから、ふとした案件が発生し、
「おぉ、そういえばこんな方がいたよ!」とご連絡するのが常でした。

今、これが逆の立場で起きているんだな。
つまり、私のことを必要としてくれている人はどこかにいるのかもしれませんが、
目の前の人が私を欲している可能性は低い。
なんの心の交流も、目配せや気を持たせる瞬間も経ずに、突然相手にコクり、びっくりされておしまい、という恋愛のあれによく似ています(私調べですが)。

そうそう、恋愛に似ていると思うんです。フリーランスの営業活動。
これまた経験値の少ないジャンルを例に出すのは気が引けますが、
両思い(この場合は仕事発注と受注)になるまでには、
たくさんのときめく瞬間を共にし、感謝し合うことがあり、意外な一面なんかも目にして、
挙げ句の果てに食事やデートを重ね
ようやく

好き。

と口にするわけです。
こんなに用意周到に進めても、やっぱり口に出すときはドキドキ。
そんなディテールに至るまで、
恋愛とはなんと
フリーランサーに対する発注受注の関係に似ていることか……。

営業しない人がどうやって仕事を獲得するのかというと、
私は、これまでたくさんご一緒してきた人気レストランや素敵なシェフたちの手法を参考にしています。
彼らは、雑誌やテレビに大きな広告を打つようなことはしません。
請われて頼まれて、メディアに出たりもしますが
基本的には真面目なビジネスマンであり、コミュニケーション好き。
ただ、世の中の動きにはとても敏感で、業界内外の友人が多く、常に情報交換をしているように思えます。

「僕、今、新しくECを始めようとしているんです」
「今度、海外のシェフ達と組んで発酵食のシンポジウムを開催しようかと」
「note始めました」
などと教えてくれるシェフ達は、
料理の鍛錬にも一生懸命ですが、
さらに、その味をどうやって人に伝えられるかを平行して考えている人が多いかも。

店に来てくれた客が、周りに話したくてたまらなくなるような感動とワクワク感をどうやって仕込むか、とか、
1年に1回訪れる客が、2回3回と来てくれるようにするにはどうすればいいか、とか、

「伝える工夫」について腐心し続ける

のが人気店の条件であるように思います。

「また来てくれるお客さんを大切にすべき」と教えてくれたシェフがいましたが、納得です。
これをフリーランスに置き換えてみると、

営業して仕事を獲るのではなく
たくさんの情報を発信して、どこかにいる誰かに自分のプレゼンスを示すことと

今の仕事が次の仕事への営業活動だ

という意識を持つことなんだろうなぁと思います。

……というわけで、ひよっこのくせに大それた戦略を語ってしまいました。
営業はしませんが、創意工夫をお届けしたいと思っています。
引き続き、よろしくお願いします。

#食の仕事 #フリーランス #COMEMO

フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。