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神経の各駅停車と特急

運動神経や感覚神経などの神経は軸索と呼ばれる電気ケーブルのような神経線維を通して情報が伝達されています。神経線維はその種類により、伝達速度が変わります。たとえば筋肉の長さを感知してその情報を脊髄から脳へと送る神経線維は伝導速度が早く、また触覚の中でも柔らかく絵筆でなでられるような心地の良い刺激は伝導速度が遅い神経を通って脊髄から脳へと情報が送られるとされています。

電線が太い方が電気信号がたくさん伝わるように、神経線維が太い方が神経の伝導速度も速くなります。電気ケーブルの絶縁体のような役割をする髄鞘というものも、伝導速度に関係します。髄鞘はミエリン鞘とも呼ばれ、リン脂質が神経線維に巻きつくような形になっています。この髄鞘がある神経線維は有髄線維、髄鞘がない神経線維は無髄線維と呼ばれています。先の例では筋肉の長さを感知する神経線維は有髄線維であり、心地の良い触覚は無髄線維です。

無髄線維は軸索の細胞膜がむき出しのままとなっています。有髄線維ではすべてが髄鞘に覆われているわけではなく、数十μmから数mmおきに隙間があり、この隙間の部分では無髄線維のように細胞膜がむき出しとなっている部分があります。この隙間はランヴィエの絞輪と呼ばれています。有髄線維での神経伝達はこのランヴィエの絞輪から次のランヴィエの絞輪へと飛び飛びに伝達されていきます。つまり、有髄線維は特急のように何駅か飛んだ部分に伝導されていくのに対し、無髄線維では各駅停車のように隣接した部分に伝導されていきます。

こちらのTED-Edの動画では、運動やダンスなどの物事が上達することに髄鞘(ミエリン)が関わっていることが紹介されています。脳の中で神経線維が集まっている白質では有髄線維と無髄線維が走っています。練習を繰り返し行うことで、神経線維に髄鞘が形成(ミエリン化)され、神経の信号がより効率よく伝達できるようになるとされています。感覚神経からの情報が脳へ伝達され、脳から筋肉へと運動神経を通って指令が伝達されるわけですから、それぞれの伝達が速くなることにより運動がより上達していく、ということです。

参考・イラスト:
How to practice effectively...for just about anything - Annie Bosler and Don Greene

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