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エッセイ『暮らしを彩る小さなもの』①

暮らしを彩る小さなものがある。

生きていくうえで必要不可欠なものではないけれど、あると気持ちがすこし豊かになるような、そうしたものだ。

ステイホームの状況がつづき、家にいる時間がふえるほどに、そうしたものが日々の暮らしにささやかな心地よさを与えてくれていることをしみじみ感じる。

たとえば自分にとってのそれは、イイノナホさんのペーパーウェイトだ。

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heartと名のついたそのペーパーウェイトは、卵型のガラスの中央に、ゴールドをあしらったハートがひとつ浮かんでいる。ハートのまわりには気泡もたくさん浮かんでいて、水のなかに落ちたハートを拾いあげたようで、とてもきれい。

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パソコンデスクに飾り物として置いているのだけれど、それがあるだけで部屋のなかがちょっと明るくなるような気がする。作品(アート)の持つ力ってすごいんだなあと認識できたのは、自分にとってはこの作品が初めてだったかもしれない。

眺めていると心地よく、意識せずとも気がつくとぼんやり眺めているときもある。ガラスの透明度が美しく、照明のもとで眺めるそれもきれいだけれど、美しさをもっとも感じるのはやはり自然の光を通したときかもしれない。日中(あるいは陽が傾きかけたとき)、窓から入る光を透かしたそれは本当にきれいでうっとりとする。

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このペーパーウェイト。購入したのは今からだいぶ前、吉祥寺にあるgallery feveで展覧会をしていたときだった。当初、買うつもりでいたのはクローバーの入ったペーパーウェイトだったのだけれど、これを見た途端、すっかり気持ちを持っていかれてしまった。

けれどもそのときは持ち合わせが足りず、翌日、急いで買いに行ったのだけれど、作品はひとつひとつ手作りゆえにどれも微妙に異なるので、自分の気に入っていた子がまだ残っていたときには本当に嬉しかった。やはり物にも相性があるから、これ!と思ったものを手に入れられるとしっくりくるし、逆に自分に合わないものだと持ち帰ったところでなんだかそわそわして落ち着かない。

このイイノナホさんのペーパーウェイト。あるとないとでは部屋の心地よさがだいぶ違うだろうなあと思うほどに、小さいけれども自分にとってはとても存在感のある大事なものになっている。

部屋の心地よさは暮らしの心地よさにも通じるところがあると思うので、自分にとって心地よいと感じるものを選ぶことは多分、たとえそれが小さなものであっても、とても大切なことのような気がしている。

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本エッセイでは5つの暮らしを彩る小さなものについて綴ります。
以下もよかったらご覧ください。
『暮らしを彩る小さなもの』②→ 真鍮の小さな家のオブジェ
『暮らしを彩る小さなもの』③→ 富士山の張子
『暮らしを彩る小さなもの』④→ 小さな紙箱
『暮らしを彩る小さなもの』⑤→ 果物クリップ

お読みいただきありがとうございます。