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東京お散歩日記#4(清澄白河②)

お散歩日記 (清澄白河②ブルーボトルコーヒーなど)

・・・2月◎日 晴れ ・・・
❀前頁(清澄白河①東京都現代美術館 ミナペルホネン展覧会)からの続きです。

美術館を出たあとは清澄白河をすこし散策するため、駅の方へ向かい、深川資料館通りを歩いていく。

小さな商店が軒を連ねるこの通りには、豆腐屋や文房具店や呉服屋など、昔ながらのお店が並ぶ一方、おしゃれなレストランやカフェも見かける。そして、そのあいまに普通に住宅があったり、古本屋があったり、はちみつ屋さんがあったり、お寺があったりと、眺め歩くだけでもなかなかおもしろい。ガイドブックを手に携えた観光客のような人も歩いていて、自分も歩いているうち徐々に、観光気分になってくる。

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それにしても寺町というだけあって、清澄白河にはお寺が多い。
ということは当然、お墓も多い。通りすがり、塔婆をたくさん立てたお墓を目にする。それなのにふいに振り返ると、新しそうな高層マンションも建っていて、なんとなく不思議な感じがしてしまう。

町並みをのんびり眺めて歩き、深川資料館が見えたところで、その手前の四つ角を左に曲がる。資料館の前には深川めしの店もあって気になるけれど、お腹はすでに満たされているので早くも足休めも兼ねて、お茶をしにいこうという段取りである。

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道なりに歩いていくと、途中、壁の向こうからお線香の匂いがふわあっと漂ってきて、見るとそこはお寺のようだった。その先にもまた別のお寺の大きな墓地があって、墓参りをしたあとなのだろう、ちょうど出入口のところからでてくる、お線香とタオルを持った近所の方と思われるおじいさんを見かけた。この通りにもまたお寺が多い。けれど新しいお店もぽつぽつとある。そんな通りをすこし歩いていくと、右手に倉庫のような建物があらわれる。

ブルーボトルコーヒーだ。

五年前に日本に上陸したというこのカフェは、当時とても話題になっていたのでずっと気になってはいたのだけれど、なんとなく今まで素通りしたままだった。おしゃれで洗練されていて、いかにも外国っぽいという曖昧なイメージだけが自分のなかで先行してしまい、全体的にどこか涼しいような、どの店舗も混んでいて落ち着かないような、そんな思い込みがあったからかもしれない。

けれど清澄白河店は日本一号店で、しかも昨年、旗艦店(フラッグシップカフェ)としてリニューアルオープンしているらしく、それを聞いたらやはり気になり、観光気分に押されるように勢いまかせで入店する。

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扉を開けるとすぐに店員さんがやってきてくれて、さわやかな笑顔で感じ良く対応してくれた。なんだかとてもオープンな雰囲気がある。

天井の高い、びっくりするほど広い店内はすでに多くのお客さんたちで賑わっていて、けれどタイミングよく二人掛け卓のソファ席が空いたのでそちらに通してもらい、メニューを受け取る。

店内は見ると、他にも席がたくさんあって、とにかく広かった。
入口は全面ガラス張りで明るく、フロアも二段構えというのか、入って最初のフロアに大きなキッチンとそれに面したカウンター席、そして大テーブル席があって、その奥、段差をつけて上がったフロアにいま自分が座るソファ席や中テーブル席、それとコーヒー豆を量り売りしているスペース(C Bar)があるといった構造になっている。

なかは倉庫というよりも巨大なラボラトリーのように感じてしまうが、それはきっと、店員さんが着ているデニム生地の白衣のような制服のせいかもしれない。

店内にはスタッフオンリーとなっている剥き出しの鉄骨階段もあり、どうやら二階がオフィスになっているようだ。自分の座った席の真上はちょうど、そんな二階の床が強化ガラスになって透けている場所で、見上げると知らない誰かの足が見え隠れして、見るつもりはなくてもちょっと気になってしまった。

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注文したのはカフェラテで、二種類の豆から選べたのでマイルドな方を選ぶ。一息ついて、まわりを見渡してみると、訪れている客層はさまざまで、外国からの旅行客のような人もちらほら見かける。複数人で来ている人も、二人で来ている人も、一人で来ている人も―。

カウンター席の向こうのキッチンではたくさんの店員さんたちがてきぱきと作業していて、一列に並んでいるドリップコーヒーのビーカーを前に、白衣のような制服を着た店員さんが珈琲を淹れている姿は、なにかの実験をしている姿のようにも見えた。

しばらくして運ばれてきたカフェラテは、湯呑みのようなカップに入れられていた。ごく薄いブルーをしていて、石のようにぽってりしている。

かわいいなあ、と思ってまじまじ眺めてから手にしたら、思いのほかカップが熱くなっていたので驚いてしまい、手元がぐらつき、ちょっと焦る。
そうか、持ち手がない場合は熱さに注意だな、と思ったけれど、そんな醜態をさらしていたのは自分だけのようだったので、たんに自分の指の皮膚が熱さに弱かった(?)のかもしれない。カフェラテはマイルドで、かつ濃厚でおいしかった。

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本を読むでもなく、何をするでもなく、ただぼんやりと店の様子を眺めて過ごす。それにしても店員さんの多いカフェだなあと思った。ざっと数えただけでも、十二、三人いる。片耳に黒いイヤホンをさし(何か指示が聞こえるのだろうか)、上着についた大きなポケットにはタブレットを入れている。
洗練された店の雰囲気に違わず、働いている人たちも皆、洗練された雰囲気にみえる。でも当初、勝手にイメージとして抱いていた涼しいような感じではなくて、みなさんとてもフレンドリーで明るい感じがする。気さくで親切というか。

開放感のある空間でゆったり過ごしていると、どこか遠いところでお茶をしているような気分になってくる。混んできても空間自体が大きいので、早く出なくちゃいけない、といったプレッシャーをさほど感じずに済むから、長く居座る人も結構いるのかもしれない。

カフェラテはもちろん、ブルーボトルコーヒーの雰囲気もたっぷり味わったところで、テーブルで会計を済ませて店を出た。来た道を戻るようにして深川資料館通りへ向かおうとすると、遠く向こうに、スカイツリーのあたまが見えた。そうか、押上はたしか清澄白河の少し先にあるんだっけ。

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静かな道をのんびり歩きながら思うのは、古くからある町並みに新しいお店がぽつりぽつりと点在しているけれど、不思議と混沌とせずに、どれも溶け込んでいるなあということだ。町そのものが新しいものを優しく受け入れているような。たとえるならば、おじいちゃんおばあちゃんと孫が同居しているような町。そんな感じがする。そしてそれはちょっと、微笑ましい光景でもある。

帰り際、深川資料館通りで素敵な店をみつけたので入ってみた。
TEAPOND(ティーポンド)という紅茶専門店だ。ロンドンにでもありそうなクラシックな黒い外観の店構えで、入るとカラフルなティーポットや山積みの紅茶缶、かわいらしいパッケージに入った茶葉等がたくさん売られていた。

店の奥の方にはさまざまなブレンドやフレイバーの小さな紅茶(ティーバッグ二個入り)を並べた棚があり、迷ったすえ、ミルクティーブレンドなどを自分へのお土産にいくつか買ってみた。種類によって違う絵柄がどれも素敵なうえに、二個入りとお試し感覚なので、色んな種類を選んで誰かへのちょっとしたお土産や贈り物としても喜ばれそうだ。

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TEAPONDで買い物を済ませたあとは、地下鉄の駅に向かう。
向かいながら、なんだかとてもたのしくて満足な気持ちになっている。
どんな気持ちかというと、軽く日帰り旅行をしてきたような気分なのだ。
実際、今日行ったのは美術館とカフェと紅茶屋さんくらいなのに、不思議とそんな気分になっているのはきっと、深川の下町情緒ある町並みを眺めたおかげなのかもしれない。

電車に乗るころには、今日は良い観光してきたなあ、お土産も買えたし、といっぱしの観光客気分になっていた。普段あまり行かない町や、知らない場所にときどき行ってみるのは、やっぱりたのしい。

◇◇◇ 今日のお散歩写真② ◇◇◇

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清澄白河は高層マンションが結構多い

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街歩きをしたあと、足休めにブルーボトルコーヒーへ

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倉庫のように大きい、と思ったら元倉庫でした

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ガラス張りの入り口 外のストーブの前でお茶する人も

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カフェラテは湯呑みのような薄いブルーのカップで

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濃厚でまろやかでおいしい

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お店を出て空を見あげたら、雲があわあわしていました

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遠く向こうにはスカイツリーがぼんやりと

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紅茶専門店TEAPONDにはおいしそうな紅茶がたくさん

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TEAPONDのふくろうの看板 となりが仏具店なのが寺町らしい

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かわいらしいパッケージ(ティーバッグ二個入り)
茶葉たっぷりで香りもよくて、おいしいミルクティーになりました

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お読みいただきありがとうございます。