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創作怪談『SNSの怪異』

  夏希は購入した商品や素敵な風景、カフェでのひとときを撮影し、SNSに投稿するのが日課だった。撮影技術や画像編集を勉強したり、投稿時間を工夫したりして、フォロワーも少なくない数に増え、彼女の写真を楽しみにしている人も多かった。

  ある日の通勤前、お気に入りのカフェに寄りコーヒーを楽しみ、そのコーヒーとカフェの様子を撮影し、写真を軽く編集して「今日も一日頑張ろう!」そんなコメントを添えて投稿した。彼女はその投稿が問題なくアップロードされていることを確認した。

  会社へ到着すると、同僚の沙紀が夏希に声をかけてきた。「さっきの投稿も見たよ。あのカフェ、すごくいいね。どこなの?」二人で楽しく会話をしつつ、仕事を始める。

  その日の夜は、新しく購入した可愛らしい入浴剤に関して投稿しようと決めて、写真を撮りSNSを開くと、今朝投稿したはずのカフェの投稿がない。確かにあの時は投稿できていたはずだ。朝、沙紀に声を掛けられた時まではフォロワーからの反応があったのを確認している。夏希は首をひねった。再び投稿を試してみれば、アップロードされずにエラーメッセージが表示されるだけだった。新しく入浴剤の写真をアップロードしようとしても、エラーが表示される。
  一度、ログアウトしてみたり、SNSアプリをアンインストールしてみても駄目だった。パソコンを利用してみても同じだ。乗っ取りの可能性も考えたが、ログインはできているし、パスワードも変更したりしても変わらない。何より乗っ取りで投稿の制限なんてできないだろう。ネット環境も問題はない、他のアプリは正常に動作している。一時的な不具合だろうと、夏希はその日は諦める事にして早めに休むことにした。

  次の日の朝、夏希はまた新しい写真を撮り投稿をしようとしたが、同じ現象が続いた。会社に到着すると、沙紀が挨拶をしてきた。
「今日は投稿がなかったから事故にでも遭ったのかと思った」そう冗談めかして言ってくる。昨日のことを話してみると、沙紀はそのSNSを見せてくれた。夏希のアカウントは特に異常がないように見える。沙紀は問題なく投稿ができるので、SNS自体に何か不具合があるわけではないようだ。

  昼休みに沙紀と二人で、他のSNSで検索してみたりするが、不具合が出たというような投稿は見当たらない。夏希のアカウントだけに起きている不具合のようだ。細々とした設定を見直しても異常は見当たらない。

  問い合わせをしてみることにして、一旦、仕事に集中することにした。帰宅時にスマホを確認してみれば「特に問題は見つからない」との返答だ。どうして私のアカウントだけ……夏希は理不尽に思ったが言っていても仕方ないと諦めることにして、新たにアカウントを作成してみることにした。元のアカウントに問題があるなら、いっその事新しいアカウントを作れば問題がないのではないか?そう思ったのだ。夏希は新しいアカウントを作成し、これまでの写真をいくつかアップロードしてみる。すると難なく、新しいアカウントでは問題なく投稿ができた。

夏希は一安心で、事の顛末を沙紀にメッセージアプリで連絡をした。沙紀からは「よかったね」との返事と、その新しいアカウントのフォロー、投稿にも反応をしてくれた。フォロワーを一から集めることになってしまうが、これで一件落着と夏希はその夜ぐっすりと眠った。

しかし、次の朝夏希はそのSNSを見て愕然とした。新しいアカウントが消えている。ログインをしようとしても「このアカウントは存在しません」と表示される。
以前のアカウントも見てみる。こちらも消えている。

  沙紀も異変に気がつき連絡をくれた、出勤前カフェにより、再び二人で原因を調べていると、夏希のスマホに通知が来た。例のSNSからのポップアップ通知だ。そこには

「縺ゅ↑縺溘?隕九i繧後※縺?k」

と表示されている。

なんだか怖くなり、夏希はその場でアプリを消去した。そのSNSの使用をやめる事にしたのだが、沙紀はその後も使用しているようだが、何も起こっていないらしい。

 結局なにも分からないままだ。

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