創作怪談 『行列』

   久しぶりに会った友人との飲み会帰り、2人でぺちゃくちゃ喋りながらブラブラと、歩いて30分位だという友人宅へと向かっていた。
元々、終電が無くなる前には、お開きにするはずだったのだが、久しぶりなこともあって、かなり盛り上がってしまった。
  居酒屋を出てからも店前でぺちゃくちゃと喋っていたらかなり遅い時間になった。
街の灯りは、ほとんど消えている。
どこか24時間営業のファミレスかカラオケ店でもあればいいのだが、生憎とこの近所にはないことを知っている。
  大学生だろうか、同じように歩いている人がいたり、イチャイチャしているカップルらしき人達と時々すれ違うぐらいの静かな街中。
ダラダラと、2人で歩いているとコンビニがあった。友人宅から最寄りのコンビニだということで、飲み直すために色々買っていくかと、少し寄ることにした。
  酒やツマミを買い込んで、コンビニを出ると、人が歩いていた。
5、6人ぐらいが向かいの歩道で列になって歩いている。
連れなのだろうか?それにしては会話もなく、頭は少し下がり気味、無表情で黙々と歩いているのだ。      何だか不気味なので、特に気にもせず、友人と歩き出す。
例の団体も、同じ方向に向かって歩いている。
友人はそれについて、何も言っていない。
全く関係のない、仕事の愚痴を話している。
あんなのを見たら、確実に茶化して何か言うタイプの友人だ、これはもしかすると本当に関わらない方がいいやつなのかも知れない。
  そう思ったのには、ちゃんと理由がある。
私は時々、幽霊とかそう言った類のものが見えるのだ。
小さい頃は常にはっきりと見えていたのだが、成人して以降は、風邪ひいて具合の悪い時や、酒に酔った時など、何か異常がある時に見ることが多い。
それも毎回では無いから油断していた。
ここ二、三年は本当に全く見ていなかったのでもう見えなくなったのだろうと勝手に思い込んでいた。
でもまぁ、こちらに気がついてもいないようだし、ああいうのは関わらなければ大丈夫だと経験で知っている。
  友人の話に相槌を打ちながら、のんびり歩いている。
とはいえ、やっぱり気になってしまう。
時々、チラッと向かいの歩道を見る。
見る度に人が増えている。
気のせいではない、先程より確実に数人増えている。
増えた人達も、同じように少し頭を下げ、無表情で歩いているのだ。
その人達は、年齢も性別もバラバラのようだ。
よく見れば、もう春と言える季節ではあるが、少し肌寒い真夜中に半袖、半ズボンで出歩く人なんているだろうか?
  さらに他の人は、ダウンコートを着ている人、バブル期の様な服装の女性もいたりする。
段々と歩いて行くと、着物だったり、袴だったり、髷を結った人まで出てきた。
どこからから現れるのかは分からないが、チラッとそちらを見る度に、段々と増えている。
もうパッと見では数えられないぐらいの大行列になって歩いている。
一体、これはなんなんだろう?そうかんがえていると、友人宅へ到着した。
友人宅へと入り、友人が酒盛りの色々準備進めてくれている間、窓を覗いてみた、丁度その大行列が歩いている歩道が見える。
どこへ向かっているのかは分からないが、その行列は、ただただ歩いていた。

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