私にはおっぱいが、あなたにはギターが。
もしも私の母乳が出なくなったら、
完全に負けると思った。
胎教のためとか意図的にではないが、夫の気まぐれに、
膨らんだお腹に向かってギターの音色を聴かせていたことはある。
お腹の中でよく聴いていたからなのか、
息子はギターの音色が大好きだ。
私が入浴中、
泣き声がして、急いで風呂から上がると、
夫が奏でるギターの音色に耳をすましながら、
ご機嫌でベットに寝転ぶ姿に拍子抜けした。
先日に至っては、
夫が留守中、弾けとばかりに、
おぼえたてのずり這いで、ギターににじり寄ってきた。
しかし、目下、ムーン・リバーを練習中の私の奏でる、
6つのコードしかない世界で、息子は不服そうな様子だった。
同じく、友人のご子息は、
絵本を与えると、嘘のように泣きやんで静かになる。
「本がとにかく大好きで…」と噂には聞いていたものの、
実際に目の当たりにしたときは、ひどく驚いた。
聞けば、産後1週間後から、欠かさず毎日読み聞かせをしていたそうだ。
わずか生後半年足らずで、
そのような個性が現れたとも考えられるし、
お腹のなかや、生後間もなくの早い時期から慣れ親しんできたものに対する
安心感、親近感も作用しているのかもしれない。
「俺にもおっぱいがあればなぁ…」という嘆きの声を、
積極的に育児に関わろうとしている男性からよく聴くことがある。
しかし、子どもの個性をよく観察し、
あるいは、
「俺はこれで行く!」というものに、
早い段階から慣れさせておくことによって、
おっぱいにさえ劣らない
最終兵器を獲得することができるのではないだろうか。
そして、我々女性もまた、
天から備わったおっぱいに甘んじることなく、
子どもの個性を見抜き、惹きつけるものを
獲得する努力を怠ってはならないという
強烈な戒めを胸にとめた。
いつか卒乳するその日までに、
ムーン・リバーを弾き語りできるようになる!
これまで幾度となく挑み、挫折してきた
ギターの練習も、
我が子のご機嫌をとるためならばと、
今のところ、順調な歩みをみせている。
子どもを持つことによって得られた、
このチャンスに感謝したい。
母にはおっぱいが、そして父には何がある?
麻佑子
#日記 #エッセイ #育児 #子育て
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