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イタリアからの伝言

夫の仕事の関係でお世話になった、
イタリアから来日されたご家族と、
会食をした時のこと。

私たちは、5ヶ月、
あちらは、3歳になる息子さんをつれての、にぎやかな時間だった。

基本は英語を使って、
時折、息子さんが話すイタリア語が混ざり合う会話で、
話題は自然と、子育ての話になる。

各国共通の話題といえば、
「夜は寝るのか?」という質問で、
どこの国で生まれても、
苦労する点は同じなんだなぁと驚いたり、
「離乳食は、日本では何を食べさせるの?」と聞かれれば、あちらはりんごからはじまるのだといい、違いにへぇ〜と興味深く聞き入ったりした。

そんな会話の中で、
やんちゃ盛りの息子さんを見つめながら、「人生が変わるんだ。」
と、何度も繰り返し口にしていた。

空港まで彼らを迎えに行き、
仕事を終えて帰宅した夫から、
「子どもが生まれてから、
人生が変わったって、何度も言ってたよ。」と事前に聞いてはいたが、
本当に何度も繰り返し口にして、
そして、その後にこう続けた。

「生きる理由、
生きる意味になるんだ。」

彼らと別れて帰路につきながら、
私も、そしてたぶん夫も、
その言葉にすっかり胸を打たれていた。

たしかに、
私たちの生活は変わった。
そのことに、なかなか慣れず、
焦ったり、戸惑ったり、
時には苛立ち、嘆いたりもする。

生きる意味や理由なんて、
悩んでも考えても仕方のないことだし、答えなんて、わかりっこない。
生きることの意味は、
生きること!と公言してきたけれど、
今、夫の胸につる下がっている
小さな命が、
私たちの生きる理由なのだ、
と思うと、なんだか急に、
誇らしいような、
畏れ多いような、
でも不思議な安心感のような形容しがたい気持ちに包まれた。

「俺たちも次のステージに上がったんだな。」

ぽつりと呟いた夫の言葉に、
歩き地面を蹴る足の裏に、
たしかな力が入った。

生きる意味なんて、
説明できなかったけれど、
今はもう、目の前にちゃんとある。

ものすごく久しぶりに、
一瞬、手をぎゅっと繋いだ。

言葉にするのは難しいけれど、
私たちの中で、
少し、何かが変わった気がした土曜日。


それにしても、
どうして海外の方は、何気ない会話の中に、さらりと名言を残すのでしょうか!

映画や本の世界の中の話だけではありませんでした。
自分なりの人生哲学を言葉にする力に、脱帽です。

他にも、

テレビやスマホ、漫画ばかりを見せすぎちゃだめだ。
とにかく自分の声でたくさん読みきかせをしてあげるんだ。
とか、
手や身体をいっぱい動かすように!
など、
たくさんのアドバイスをいただきました。

国が違えば、考え方や文化もちがうけれど、同じように困ったり、大切にしたい部分があったりと、視野を広げてもらったような、新鮮な体験でした。

麻佑子

#日記 #エッセイ #子育て #育児


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