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もっと笑わせる。

ずっと、息子は豆腐が苦手なんだと思っていた。

友人に、離乳食に苦戦している話をしたら、お豆腐は良く食べるよ、と教えてもらったので、割と素材に気をつかい、国産大豆、天然にがりの絹ごし豆腐を購入した。しかし、一口含んだ途端、ぶーっと唇を震わせて吐き出す始末。
かえり血ならぬ、かえり豆腐を浴びて、惨敗である。
半泣きで、ダメだった〜と教えてくれた友人に報告すると、
「うちの子は、ケンちゃん豆腐が好きだったよ。小さくても、味の違いがわかるんだよ。あまいお豆腐で試してみたら?」と励ましてくれた。

涙を拭いて、スーパーに走り、息巻いてケンちゃん豆腐プレミアムを購入。
さっそく試しにあげてみると、夢か幻か、もっとくれ〜もっとくれ〜と覚えたての伝い歩きでにじり寄ってくるではないか!

味見してみると、確かに豆の甘みが強く、口当たりも滑らかだ。
そうか、同じ豆腐といえども、繊細に選り好みしているんだな、と理解した。
さらに、同じケンちゃん豆腐でも、さっと茹でたものは食べるけれど、不精して電子レンジでチンした時は、全く食べなかった。
人間の舌は、生まれたては、こんなに繊細だったのかと、気づかされた出来事だった。

つまり、赤ちゃんにも(赤ちゃんだからこそ)、質の違いがわかる、ということを知ったのだった。

同じことを、笑い方でも感じた。

私の愛読書、池谷裕二先生の「パパは脳研究者」のなかでも、3ヶ月頃までの笑いは反射で、5ヶ月以降になると、笑いのレパートリーが増えてくるとあった。確かにそのくらいの頃から、本当に稀に、ふとした拍子に、声を出してきゃっきゃと笑うようになったのだ。

初めて遭遇した時には、あまりに急にきゃっきゃと笑いだしたので、何かに憑依されたのかと、正直怯えた。
今日、急に声を出して笑い出したんだよ!と家族に伝えても、証拠もないし、再現もできず、やっぱりあれは、何かに取り憑かれていたんじゃないかと確信したほどだ。

それからしばらくして、ぱ行に反応して笑うことが判明した。
「ぱちん!」「ポン!」「ぷちん!」と連呼するたびに、きゃっきゃと笑い、ツボに入りすぎると、嗚咽を交えるほどだ(今回は、証拠動画も記録できた)。

ツボがあるということは、笑いにも質があるということになる。
ただ、にこにこ微笑んでいる時よりも、声を出して笑っている時の方が「楽しい!」(あるいは、うれしい、面白いなど)と感じる度合いが大きいということなのではないか。
だとすれば、私は、息子にもっと心から笑ってほしい。
きゃっきゃと声を出すほど笑う、息子のツボをたくさん見つけたい。
そして、よろこんでほしい。

今現在、発見した息子のツボは、以下の通りだ。

・空き缶コロコロ
息子の体を操って、足や手で、空き缶をコロコロ転がして、キャッチボールする。
・新聞紙ビリビリ
新聞紙の端を少し割いて息子に握らせ、「ビリビリビリ〜!」といって見開きいっぱい切り裂く。破りぬく。
・お風呂でブクブク
湯船に浸かり、「くらげさ〜ん、一緒にあそびましょ〜!」と呼んでから、ガーゼに空気を集めて、てるてる坊主状にし、湯に沈めて、ブクブクブク〜と息子につぶさせる。ぶくぶくと空気の泡が吹き出して面白い。

適当におもちゃを与え、静かにしていれば、楽しんでいる、と思いたくなるが、やはり、楽しいにも度合いがある。
もっと、より深く、より楽しい、より面白いと感じる瞬間を、できるだけ増やしてあげたい。

それには、大人の想像力と観察力が必要だ。
まるで、お笑い芸人に弟子入りした気分だ。
もっと、もっと、もっと息子を笑わせてやる!
そんな執念を燃やす毎日。

麻佑子
#日記 #エッセイ #子育て #育児

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